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俺の番には大切な人がいる㉜
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行きよりも長く感じた帰りの車内は重苦しい空気に包まれ家の側まで着いた頃にはお互い無言になっていた。
マンションの駐車場でドアを開けようとした時晃の手が俺の腕を強く掴み驚いて振り返る。
「なんでそんな辛そうな顔すんの?」
そう言う晃こそ顔を歪ませ見た事ないような表情をしていた。
「なんでもないよ」
それしか言えない。
混乱していたとは言え直人の事で死のうとまでした俺が今更晃を好きだなんて言えない。
・・好き?
そうか。
俺はとっくに晃を好きだったんだ。
だからこんなにつらいのか。
自覚した途端に涙が溢れた。
「匠?!」
「晃・・今までありがとう。子供はちゃんと一人で育てるから心配しないで。
産まれたらたまにでいいから顔見にきてくれると嬉しい。あ、でも他に好きな人がいたらその人に悪いから来なくても・・」
話している途中で晃に強い力で抱きしめられ言葉を奪われる。
「晃?」
「何言ってんだよ!他に好きな人なんかいるわけないだろ!どんだけ匠を好きかまだ分かんないのかよ」
「・・だって番にはならないって・・」
「匠は直人さんを忘れられないだろ。水族館でプロポーズするはずだったけど匠の顔を見て無理だって思い知らされたんだよ。運命や子供を盾にとって無理やり番にする気はない。でも俺の気持ちは変わってないから。」
そう言うと晃は身体を離して俺の両肩を強く掴み自分の方を向かせた。
「番になれなくてもいい。でも俺は諦めないよ。ずっとそばにいるつもりだ。もし結局一生匠が俺を見てくれなくても後悔なんかしない。」
「晃・・」
「それなのになんでそんな顔するんだよ。少しくらいは俺の事好きでいてくれてんじゃないかって勘違いするだろ!」
悔しそうなつらそうな顔を見て更に涙が溢れた。
そしてこの一途で不器用で優し過ぎる人と一生共に生きていきたいと思った。
「晃・・今までごめん。ずっと好きでいてくれてありがとう。おれも好きだよ」
晃の目が驚愕に見開かれる。
それから瞼を閉じ深く息を吐いて俺の言葉を咀嚼するように考え込んでから恐る恐る目を開けた。
「・・本当に?」
「本当だよ」
「じゃあ番になってくれる?」
「晃さえ良ければ」
「運命とか子供とかじゃなくて?」
「うん」
怖がって何度も確認する晃の頬を両手で挟み額を付けてもう一度愛の言葉を囁くと抱きしめられた耳元で同じ言葉を返してくれた。
「俺もう死んでもいい」
「それは困る。俺と子供のために長生きして貰わないと」
クスッとわらった後、真剣な目で俺を見て晃が囁く。
「結婚して下さい」
俺も晃の目をみてはいと答えた。
ゆっくりと唇に柔らかいものが押し当てられそっと離れていった。
味覚が無くなったはずの舌に甘い感覚が蘇る。
聖なる誓いのようなそのキスはとても厳かで俺は晃の背中にそっと腕を回しこれから始まる二人の生活に思いを馳せた。
マンションの駐車場でドアを開けようとした時晃の手が俺の腕を強く掴み驚いて振り返る。
「なんでそんな辛そうな顔すんの?」
そう言う晃こそ顔を歪ませ見た事ないような表情をしていた。
「なんでもないよ」
それしか言えない。
混乱していたとは言え直人の事で死のうとまでした俺が今更晃を好きだなんて言えない。
・・好き?
そうか。
俺はとっくに晃を好きだったんだ。
だからこんなにつらいのか。
自覚した途端に涙が溢れた。
「匠?!」
「晃・・今までありがとう。子供はちゃんと一人で育てるから心配しないで。
産まれたらたまにでいいから顔見にきてくれると嬉しい。あ、でも他に好きな人がいたらその人に悪いから来なくても・・」
話している途中で晃に強い力で抱きしめられ言葉を奪われる。
「晃?」
「何言ってんだよ!他に好きな人なんかいるわけないだろ!どんだけ匠を好きかまだ分かんないのかよ」
「・・だって番にはならないって・・」
「匠は直人さんを忘れられないだろ。水族館でプロポーズするはずだったけど匠の顔を見て無理だって思い知らされたんだよ。運命や子供を盾にとって無理やり番にする気はない。でも俺の気持ちは変わってないから。」
そう言うと晃は身体を離して俺の両肩を強く掴み自分の方を向かせた。
「番になれなくてもいい。でも俺は諦めないよ。ずっとそばにいるつもりだ。もし結局一生匠が俺を見てくれなくても後悔なんかしない。」
「晃・・」
「それなのになんでそんな顔するんだよ。少しくらいは俺の事好きでいてくれてんじゃないかって勘違いするだろ!」
悔しそうなつらそうな顔を見て更に涙が溢れた。
そしてこの一途で不器用で優し過ぎる人と一生共に生きていきたいと思った。
「晃・・今までごめん。ずっと好きでいてくれてありがとう。おれも好きだよ」
晃の目が驚愕に見開かれる。
それから瞼を閉じ深く息を吐いて俺の言葉を咀嚼するように考え込んでから恐る恐る目を開けた。
「・・本当に?」
「本当だよ」
「じゃあ番になってくれる?」
「晃さえ良ければ」
「運命とか子供とかじゃなくて?」
「うん」
怖がって何度も確認する晃の頬を両手で挟み額を付けてもう一度愛の言葉を囁くと抱きしめられた耳元で同じ言葉を返してくれた。
「俺もう死んでもいい」
「それは困る。俺と子供のために長生きして貰わないと」
クスッとわらった後、真剣な目で俺を見て晃が囁く。
「結婚して下さい」
俺も晃の目をみてはいと答えた。
ゆっくりと唇に柔らかいものが押し当てられそっと離れていった。
味覚が無くなったはずの舌に甘い感覚が蘇る。
聖なる誓いのようなそのキスはとても厳かで俺は晃の背中にそっと腕を回しこれから始まる二人の生活に思いを馳せた。
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