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スウの思い
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「朝食をテオドア王とご一緒したいんですが」
次の日の朝
早起きしたスウは女官長にそうお願いした。
女官長は喜んで王の館まで確認に行ってくれたが返事は芳しい物ではなかったようでとても申し訳無さそうに戻ってくる。
やっぱり避けられてるのか・・。
スウは女官長のその様子にそれ以上のわがままも言えず精一杯の作り笑顔でお礼を伝え、もう少し眠るからと下がって貰った。
気晴らしに散歩にでも行こう。
楽な服に着替え、素足に柔らかい布の履き物を履いて廊下の先の庭に続くドアを開ける。
一歩踏み出すと目の前に色とりどりの様々な種類の花が咲き乱れていた。
想像以上の素晴らしい庭にスウの気持ちも少し落ち着き、広大な敷地をゆっくりと散歩する。
こんなに見事な花壇があるって事はテオドアは花が好きなのかな。
そうだったら嬉しいな。
スウはニア国にいる時、庭師と一緒に新種のバラを育てる事を趣味としていた。
思った通りの花が咲いた時は庭師と手を取り合って喜んだものだ。
パールの輝きの白薔薇をテオドアに送ったら喜んでくれるかな。
彼の美しい淡いグレーの毛並みにあのバラはとてもよく合うだろう。
胸元に飾ってダンスをする彼の姿が脳裏に浮かび口元が少し綻ぶ。
しばらく歩いていると東屋のような建物が見え、そこに今まさに頭の中に描いていた人の姿が見えた。
「テオドア王!」
思わず口に出してしまいその背中がびくりと波打つ。
ゆっくり振り向いたその人はこれ以上ないくらい不機嫌な顔をしていた。
しまった!
会いたく無いから朝食も断られたのにこんな所で・・。
人影が王だと分かった時点でそっと来た道を引き返せばこんな不愉快にさせてしまう事もなかったのに。
スウはお辞儀をして元来た道をしょんぼりと自室に戻った。
テオドアは勿論呼び止めたりしない。
それどころか背中越しに何かが割れる音が聞こえる。
怒りの余り近くの植木鉢でも叩き割ってしまったのだろうか。
花の好きなスウにとってそれはとても辛かった。
「王様!大きな音がしましたが大丈夫ですか?!」
テオドアの元にお付きの男が走ってくる。
「ああ、カップを落としてしまった」
テオドアは表情の出にくい顔で、それでも少し悲しそうに足元の割れたカップと飛び散った紅茶を見つめた。
まさか会えるとは思わなかった。
思いがけない朝食の誘いは何を話せばいいのか分からず咄嗟に断ってしまったから。
それなのに驚き過ぎて何も言えずあんな悲しい顔をさせてしまうなんて。
本当は嬉しかった。
偶然会えたのも、食事を共にと歩み寄ってくれた事も。
だが、こんな姿では何を言っても怖がられてしまう。
せめてラウラのように人の姿に変化する事が出来たなら・・。
テオドアは黙ってスウが去った方向をいつまでも見ていた。
「スウ」
優しい声で眠りの淵から引き戻される。
目を開けるとベッドに腰掛けていたラウラがスウの顔を覗き込んでいた。
散歩から戻ってベッドに横になったらいつの間にか眠ってしまったらしい。
「夢を・・見てた」
盗賊に捕まって馬から投げ出された時見た黒髪で褐色の肌の男の夢。
あれはとても目の前のラウラに似ていた。
「僕たちは昔会った事がある?」
スウの言葉にラウラはとても驚いた顔をした。
「思い出したのか?」
「え?」
思いがけない言葉にスウも驚く。
「その時のことをおしえて」
スウがそう言うとラウラは悲しそうに首を振った。
「実は俺もあまり覚えてないんだ。怪我をして記憶が曖昧になってる。スウのご両親なら知ってると思うから落ち着いたら里帰りした時にでも聞いてごらん」
「分かった・・・」
何があったのかは覚えてないが自分にとってあの人がとても大切だった事だけは記憶にある。
スウは目の前の男の真っ黒な瞳を見つめた。
「そんなに見られたら照れるな。そろそろ食事だけど食べられそう?」
「うん」
スウが返事をするなりラウラがスウを抱き上げる。
「ラウラ!」
驚いて大きな声を出すスウにラウラはニコリと笑い部屋の中だけ許してと笑う
「王妃を抱くなんて流石に王の兄と言えど許されないからね」
「だったらもう下ろして!」
そんなスウの抗議にラウラは名残惜しそうにスウを床に下ろす。
そしてそのままスウを抱きしめて耳元で苦しげに囁いた。
「スウが俺の花嫁なら良かったのに」
次の日の朝
早起きしたスウは女官長にそうお願いした。
女官長は喜んで王の館まで確認に行ってくれたが返事は芳しい物ではなかったようでとても申し訳無さそうに戻ってくる。
やっぱり避けられてるのか・・。
スウは女官長のその様子にそれ以上のわがままも言えず精一杯の作り笑顔でお礼を伝え、もう少し眠るからと下がって貰った。
気晴らしに散歩にでも行こう。
楽な服に着替え、素足に柔らかい布の履き物を履いて廊下の先の庭に続くドアを開ける。
一歩踏み出すと目の前に色とりどりの様々な種類の花が咲き乱れていた。
想像以上の素晴らしい庭にスウの気持ちも少し落ち着き、広大な敷地をゆっくりと散歩する。
こんなに見事な花壇があるって事はテオドアは花が好きなのかな。
そうだったら嬉しいな。
スウはニア国にいる時、庭師と一緒に新種のバラを育てる事を趣味としていた。
思った通りの花が咲いた時は庭師と手を取り合って喜んだものだ。
パールの輝きの白薔薇をテオドアに送ったら喜んでくれるかな。
彼の美しい淡いグレーの毛並みにあのバラはとてもよく合うだろう。
胸元に飾ってダンスをする彼の姿が脳裏に浮かび口元が少し綻ぶ。
しばらく歩いていると東屋のような建物が見え、そこに今まさに頭の中に描いていた人の姿が見えた。
「テオドア王!」
思わず口に出してしまいその背中がびくりと波打つ。
ゆっくり振り向いたその人はこれ以上ないくらい不機嫌な顔をしていた。
しまった!
会いたく無いから朝食も断られたのにこんな所で・・。
人影が王だと分かった時点でそっと来た道を引き返せばこんな不愉快にさせてしまう事もなかったのに。
スウはお辞儀をして元来た道をしょんぼりと自室に戻った。
テオドアは勿論呼び止めたりしない。
それどころか背中越しに何かが割れる音が聞こえる。
怒りの余り近くの植木鉢でも叩き割ってしまったのだろうか。
花の好きなスウにとってそれはとても辛かった。
「王様!大きな音がしましたが大丈夫ですか?!」
テオドアの元にお付きの男が走ってくる。
「ああ、カップを落としてしまった」
テオドアは表情の出にくい顔で、それでも少し悲しそうに足元の割れたカップと飛び散った紅茶を見つめた。
まさか会えるとは思わなかった。
思いがけない朝食の誘いは何を話せばいいのか分からず咄嗟に断ってしまったから。
それなのに驚き過ぎて何も言えずあんな悲しい顔をさせてしまうなんて。
本当は嬉しかった。
偶然会えたのも、食事を共にと歩み寄ってくれた事も。
だが、こんな姿では何を言っても怖がられてしまう。
せめてラウラのように人の姿に変化する事が出来たなら・・。
テオドアは黙ってスウが去った方向をいつまでも見ていた。
「スウ」
優しい声で眠りの淵から引き戻される。
目を開けるとベッドに腰掛けていたラウラがスウの顔を覗き込んでいた。
散歩から戻ってベッドに横になったらいつの間にか眠ってしまったらしい。
「夢を・・見てた」
盗賊に捕まって馬から投げ出された時見た黒髪で褐色の肌の男の夢。
あれはとても目の前のラウラに似ていた。
「僕たちは昔会った事がある?」
スウの言葉にラウラはとても驚いた顔をした。
「思い出したのか?」
「え?」
思いがけない言葉にスウも驚く。
「その時のことをおしえて」
スウがそう言うとラウラは悲しそうに首を振った。
「実は俺もあまり覚えてないんだ。怪我をして記憶が曖昧になってる。スウのご両親なら知ってると思うから落ち着いたら里帰りした時にでも聞いてごらん」
「分かった・・・」
何があったのかは覚えてないが自分にとってあの人がとても大切だった事だけは記憶にある。
スウは目の前の男の真っ黒な瞳を見つめた。
「そんなに見られたら照れるな。そろそろ食事だけど食べられそう?」
「うん」
スウが返事をするなりラウラがスウを抱き上げる。
「ラウラ!」
驚いて大きな声を出すスウにラウラはニコリと笑い部屋の中だけ許してと笑う
「王妃を抱くなんて流石に王の兄と言えど許されないからね」
「だったらもう下ろして!」
そんなスウの抗議にラウラは名残惜しそうにスウを床に下ろす。
そしてそのままスウを抱きしめて耳元で苦しげに囁いた。
「スウが俺の花嫁なら良かったのに」
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