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13話
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「これどうですか?」
キッチンに立ち鍋の中から小さな鶏肉を箸で掴んだ三葉は隣に立つ桜宮の口にそれをそっと運んだ。
「美味い。甘辛くて好きな味だ」
肉を咀嚼しながら笑顔になる桜宮に三葉はまたしても胸がぎゅうぎゅうする感覚を味わう。
何故言葉一つでこんなに心が乱されるのか。
ふとした時に触れたくなるのはどうしてか。
この気持ちの本当の名前をまだ三葉は知らない。
「狭山さんが来週本家に帰るからそれまでに彼女の作る浅漬けのレシピを聞いておいて欲しい」
「分かりました」
三葉も狭山の浅漬けは大好きだ。
それを自分が桜宮の為に作ることが出来ると思うとまたしても胸がきゅうと音を立てるのだった。
三葉が桜宮の家に来て三ヶ月。
すっかり身体も癒えたのでそろそろ出ていかなくてはと話を切り出した三葉に桜宮はこの家での住み込みハウスキーパーの仕事を提案した。
狭山は本宅でも重宝されているベテランの家政婦だ。いつまでもここにいられるわけではない。大学を休学の間だけでも、と請われ三葉はそのままここで暮らす事になった。
結局優しさに甘える事になったなあ・・。
三葉は申し訳ない気持ちでいっぱいになるが行く所が無いという理由だけでなく何故か桜宮の側にいたいと思う感情を抑えられない。
それほど彼の隣にいるのは心が安らいだ。
「そろそろ着くんじゃ無いか?」
そう言って桜宮が立ち上がる。
「俺が迎えに行きますから桜宮さんはここで待ってて下さい」
三葉はそう言ってコンロの火を止めエプロンを外した。
分かったと頷く彼に見送られ三葉は玄関に向かう。
閉じこもる事が多い三葉を慮りいつでも友達を呼んでいいと桜宮が許可してくれたので今日は海と健斗が遊びに来るのだ。
二人とは電話でよく話してはいるがやはり実際に会うのとは違う。
三葉はワクワクしながらエレベータに乗った。
「会いたかった!!」
丁度ガラス張りのエントランスから入ってくるところだった二人と目があった途端、健斗が飛びつくように走り寄り三葉を抱きしめた。
「元気だった?」
抱き返しながら隣にいる海にも視線を投げる。
「変わりない。俺も健斗も」
「そのようだね」
「三葉は?本当に桜宮さんに襲われたりいじめられたりしてない?」
電話でも何度も大丈夫だと言っているのにやはり心配だったらしい。
三葉は笑顔で頷き歩きながら桜宮さんとの生活の様子を話した。
「それにしてもすごいマンションだね。しかも最上階。怖くない?」
「あんまり外見ないからなあ」
「エレベータにも暗証番号入れるの?セキュリティばっちりだね。こんなとこに住んでる人に会った事ないから凄く楽しみー!」
「・・健斗、お前三葉に会いに来たんだろ」
「そうだよ。でもいいじゃん」
苦笑する海にそう言って健斗は楽しそうに三葉と同じ色の艶やかな薄いグレーの髪を揺らして笑った。
「桜宮さん、こちらが海堂海と柴崎健斗です」
玄関で出迎えた桜宮に、三葉が二人を紹介する。桜宮は「よく来たね、さあ入って」と二人を部屋に誘った。
三葉も二人を先に行かせようと一歩引いて待つ。
だが健斗は微動だにせず桜宮を見つめていた。
「健斗?」
海の声も届がないのかそれにも返事をしない。
何かあったのかと振り向いた桜宮が健斗を見て目を見開く。
「仁さん!!」
その瞬間、健斗は三葉の横を駆け抜けて桜宮を抱きしめ会いたかったと泣き出した。
「驚かせてごめんなさい。つい嬉しくて」
健斗は皆に向かって深々とこうべを垂れる。
「いや、知り合いだったとは驚きだよ」
海の言葉に三葉も頷く。
「月に一度オメガ園の視察で健斗くんに意見を聞いてたんだ」
そう言う桜宮に同意するように隣に座った健斗はニコッと笑った。それに応えるように桜宮も微笑み返す。
その様子に三葉はジクジクと胸に嫌なものが広がるのを感じた。
「でもずっと会いたかったから嬉しい偶然です」
「急に海外の支社を任されてね。視察を再開した時にはもう健斗くんはオメガ園を巣立ってたからな」
「こんな事言うと失礼ですけどずっと勝手に兄さんのように思ってました」
「私も弟のように思ってたよ」
「じゃあそろそろご飯にしようか」
唐突に三葉がソファから立ち上がる。
これ以上笑い合う二人を見たくなかった。
「僕手伝うよ」
健斗も椅子から立ち上がりキッチンに向かう三葉を追いかけた。
「良かったね」
「なに?」
三葉は鍋をかき混ぜながら健斗の問いかけに応える。久しぶりに会えて嬉しいのにどうしても桜宮との親密な様子が気にかかって仕方ない。
「篤志家の一人としか聞いてなかったから仁さんが桜宮の御曹司だなんてびっくりしたけど本当にいい人だと思うよ。それにね・・」
「はい、これ持って行って」
三葉は健斗の胸にサラダを押し付けた。
彼は頷いて一杯に盛られたレタスを落とさないようにリビングへ向かう。
桜宮がいい人だなんてそんなこと言われなくても知ってる。ずっとここで一緒に暮らして来たんだから。
健斗の事は家族だと思ってる。
大好きで大事な相手だ。
なのにどうして彼相手にこんなにイライラするのか。
健斗が桜宮を仁と親しげに呼ぶたびに頭の中で何かが暴れ回り抑えようもなく思考が乱される。
桜宮は健斗が好きだから見た目がどことなく似ている自分に声をかけて親切にしてくれたんじゃないだろうか。
自分を見て照れたり嬉しそうにするのは自分に健斗の面影を見てるだけかもしれない。
そんな疑念さえ湧いて来た。
羨ましい。
仁さんと呼べることも
番がいないから拒絶反応もなく桜宮に触れられることも。
健斗は何も悪くない。
悪いのは全部自分だ。
それなのに・・。
そう考えてハッとした。
誰にも取られたくない。
別の人に笑いかける桜宮を見たくない。
これを恋と呼ぶんじゃないのか
気付いたところで番持ちの自分にそんな資格はないし二人はもう再会してしまった。
三葉は考える事を放棄して気持ちを切り替え皆が待つリビングに料理を運んだ。
【健斗side】
海と別れて自宅に向かう道を健斗はのんびりと歩いていた。
久しぶりに会えた三葉は以前より健康的な顔色になっていたし、ずっと会いたいと思っていた仁さんとも会えた。
まさか二人が一緒にいるとは思わなかったけど。
健斗が桜宮に初めて会ったのは15歳になったばかりの春だった。
「健斗、視察に来られる篤志家の方に園の事をお話して貰える?」
園長はニコニコしながら突然健斗にそう聞いた。
「いいよ。僕の番になる人?」
この答えに園長はまだ早いわよと笑った。
「実を言うとね、あなたがいいと指名されたの。以前遊園地に行った時に見かけたらしいのよ。だから番を申し込まれる可能性もあるわ。もし嫌なら先に断るけどどうしたい?」
優しく微笑みながらそう言う園長に健斗はわくわくした顔で会いたい!と即答した。
「健斗、よく考えて?先の話とはいえそれなりの覚悟が・・」
「いいんだ!だって僕の運命の番かもしれないでしょ?」
興奮に頬を上気させた夢見がちな健斗の可愛さに園長は思わず笑う。そして段取りをつけるわねと言って柔らかな頬にキスをした。
その日から相手に会える日まで健斗は毎日胸を高鳴らせ、まだ会ったこともない相手に既に恋をしているかのような様子で過ごした。誰にも内緒でと言われていたので周りの子供達はそんな健斗を不思議なものを見るような目で見ていたけど。
そしていよいよ当日。
精一杯のオシャレをして園長室に行った健斗を出迎えたのが桜宮だったのだ。
健斗は王子様のような美しい彼に一目で恋に落ちた。
けれど桜宮は健斗を見るなり困った顔をして「他に同じ髪色の子は園にいる?」と聞いたのだ。
健斗が正直に四人いますと答えるとそうかと笑ってそれからはずっと園の施設や食事や要望について聞かれた。
桜宮は優しかった。
一緒に遊んでくれて美味しいお菓子をくれた。
けれど聡い健斗は彼が会いたかったのは自分ではなかったとすぐ理解してとてもがっかりした。
けれどそれからも桜宮は視察のたびに毎回健斗を呼んで沢山のお土産や楽しい話をしてくれた。
同じ髪色の他の子と交代しようかと提案した事もあるが必要ないと言われ結局最後まで桜宮が気に入ったのは誰なのか分からなかったのだ。
三葉だったとはね。
確かに彼も同じ髪色の一人だ。
仁さん凄いな。自分で見つけたんだ。良かったね。
今の三葉を救えるのはお金や社会的地位もある桜宮だけ。
初恋の相手である桜宮を思うと甘酸っぱいようなちょっと悔しいような思いはあるが三葉が幸せになれるならそれでいいやと思った。
「僕も頑張って素敵な人を探すぞ」
周りに誰もいないのをいい事に声に出してそう言うと健斗は家路に着いた。
キッチンに立ち鍋の中から小さな鶏肉を箸で掴んだ三葉は隣に立つ桜宮の口にそれをそっと運んだ。
「美味い。甘辛くて好きな味だ」
肉を咀嚼しながら笑顔になる桜宮に三葉はまたしても胸がぎゅうぎゅうする感覚を味わう。
何故言葉一つでこんなに心が乱されるのか。
ふとした時に触れたくなるのはどうしてか。
この気持ちの本当の名前をまだ三葉は知らない。
「狭山さんが来週本家に帰るからそれまでに彼女の作る浅漬けのレシピを聞いておいて欲しい」
「分かりました」
三葉も狭山の浅漬けは大好きだ。
それを自分が桜宮の為に作ることが出来ると思うとまたしても胸がきゅうと音を立てるのだった。
三葉が桜宮の家に来て三ヶ月。
すっかり身体も癒えたのでそろそろ出ていかなくてはと話を切り出した三葉に桜宮はこの家での住み込みハウスキーパーの仕事を提案した。
狭山は本宅でも重宝されているベテランの家政婦だ。いつまでもここにいられるわけではない。大学を休学の間だけでも、と請われ三葉はそのままここで暮らす事になった。
結局優しさに甘える事になったなあ・・。
三葉は申し訳ない気持ちでいっぱいになるが行く所が無いという理由だけでなく何故か桜宮の側にいたいと思う感情を抑えられない。
それほど彼の隣にいるのは心が安らいだ。
「そろそろ着くんじゃ無いか?」
そう言って桜宮が立ち上がる。
「俺が迎えに行きますから桜宮さんはここで待ってて下さい」
三葉はそう言ってコンロの火を止めエプロンを外した。
分かったと頷く彼に見送られ三葉は玄関に向かう。
閉じこもる事が多い三葉を慮りいつでも友達を呼んでいいと桜宮が許可してくれたので今日は海と健斗が遊びに来るのだ。
二人とは電話でよく話してはいるがやはり実際に会うのとは違う。
三葉はワクワクしながらエレベータに乗った。
「会いたかった!!」
丁度ガラス張りのエントランスから入ってくるところだった二人と目があった途端、健斗が飛びつくように走り寄り三葉を抱きしめた。
「元気だった?」
抱き返しながら隣にいる海にも視線を投げる。
「変わりない。俺も健斗も」
「そのようだね」
「三葉は?本当に桜宮さんに襲われたりいじめられたりしてない?」
電話でも何度も大丈夫だと言っているのにやはり心配だったらしい。
三葉は笑顔で頷き歩きながら桜宮さんとの生活の様子を話した。
「それにしてもすごいマンションだね。しかも最上階。怖くない?」
「あんまり外見ないからなあ」
「エレベータにも暗証番号入れるの?セキュリティばっちりだね。こんなとこに住んでる人に会った事ないから凄く楽しみー!」
「・・健斗、お前三葉に会いに来たんだろ」
「そうだよ。でもいいじゃん」
苦笑する海にそう言って健斗は楽しそうに三葉と同じ色の艶やかな薄いグレーの髪を揺らして笑った。
「桜宮さん、こちらが海堂海と柴崎健斗です」
玄関で出迎えた桜宮に、三葉が二人を紹介する。桜宮は「よく来たね、さあ入って」と二人を部屋に誘った。
三葉も二人を先に行かせようと一歩引いて待つ。
だが健斗は微動だにせず桜宮を見つめていた。
「健斗?」
海の声も届がないのかそれにも返事をしない。
何かあったのかと振り向いた桜宮が健斗を見て目を見開く。
「仁さん!!」
その瞬間、健斗は三葉の横を駆け抜けて桜宮を抱きしめ会いたかったと泣き出した。
「驚かせてごめんなさい。つい嬉しくて」
健斗は皆に向かって深々とこうべを垂れる。
「いや、知り合いだったとは驚きだよ」
海の言葉に三葉も頷く。
「月に一度オメガ園の視察で健斗くんに意見を聞いてたんだ」
そう言う桜宮に同意するように隣に座った健斗はニコッと笑った。それに応えるように桜宮も微笑み返す。
その様子に三葉はジクジクと胸に嫌なものが広がるのを感じた。
「でもずっと会いたかったから嬉しい偶然です」
「急に海外の支社を任されてね。視察を再開した時にはもう健斗くんはオメガ園を巣立ってたからな」
「こんな事言うと失礼ですけどずっと勝手に兄さんのように思ってました」
「私も弟のように思ってたよ」
「じゃあそろそろご飯にしようか」
唐突に三葉がソファから立ち上がる。
これ以上笑い合う二人を見たくなかった。
「僕手伝うよ」
健斗も椅子から立ち上がりキッチンに向かう三葉を追いかけた。
「良かったね」
「なに?」
三葉は鍋をかき混ぜながら健斗の問いかけに応える。久しぶりに会えて嬉しいのにどうしても桜宮との親密な様子が気にかかって仕方ない。
「篤志家の一人としか聞いてなかったから仁さんが桜宮の御曹司だなんてびっくりしたけど本当にいい人だと思うよ。それにね・・」
「はい、これ持って行って」
三葉は健斗の胸にサラダを押し付けた。
彼は頷いて一杯に盛られたレタスを落とさないようにリビングへ向かう。
桜宮がいい人だなんてそんなこと言われなくても知ってる。ずっとここで一緒に暮らして来たんだから。
健斗の事は家族だと思ってる。
大好きで大事な相手だ。
なのにどうして彼相手にこんなにイライラするのか。
健斗が桜宮を仁と親しげに呼ぶたびに頭の中で何かが暴れ回り抑えようもなく思考が乱される。
桜宮は健斗が好きだから見た目がどことなく似ている自分に声をかけて親切にしてくれたんじゃないだろうか。
自分を見て照れたり嬉しそうにするのは自分に健斗の面影を見てるだけかもしれない。
そんな疑念さえ湧いて来た。
羨ましい。
仁さんと呼べることも
番がいないから拒絶反応もなく桜宮に触れられることも。
健斗は何も悪くない。
悪いのは全部自分だ。
それなのに・・。
そう考えてハッとした。
誰にも取られたくない。
別の人に笑いかける桜宮を見たくない。
これを恋と呼ぶんじゃないのか
気付いたところで番持ちの自分にそんな資格はないし二人はもう再会してしまった。
三葉は考える事を放棄して気持ちを切り替え皆が待つリビングに料理を運んだ。
【健斗side】
海と別れて自宅に向かう道を健斗はのんびりと歩いていた。
久しぶりに会えた三葉は以前より健康的な顔色になっていたし、ずっと会いたいと思っていた仁さんとも会えた。
まさか二人が一緒にいるとは思わなかったけど。
健斗が桜宮に初めて会ったのは15歳になったばかりの春だった。
「健斗、視察に来られる篤志家の方に園の事をお話して貰える?」
園長はニコニコしながら突然健斗にそう聞いた。
「いいよ。僕の番になる人?」
この答えに園長はまだ早いわよと笑った。
「実を言うとね、あなたがいいと指名されたの。以前遊園地に行った時に見かけたらしいのよ。だから番を申し込まれる可能性もあるわ。もし嫌なら先に断るけどどうしたい?」
優しく微笑みながらそう言う園長に健斗はわくわくした顔で会いたい!と即答した。
「健斗、よく考えて?先の話とはいえそれなりの覚悟が・・」
「いいんだ!だって僕の運命の番かもしれないでしょ?」
興奮に頬を上気させた夢見がちな健斗の可愛さに園長は思わず笑う。そして段取りをつけるわねと言って柔らかな頬にキスをした。
その日から相手に会える日まで健斗は毎日胸を高鳴らせ、まだ会ったこともない相手に既に恋をしているかのような様子で過ごした。誰にも内緒でと言われていたので周りの子供達はそんな健斗を不思議なものを見るような目で見ていたけど。
そしていよいよ当日。
精一杯のオシャレをして園長室に行った健斗を出迎えたのが桜宮だったのだ。
健斗は王子様のような美しい彼に一目で恋に落ちた。
けれど桜宮は健斗を見るなり困った顔をして「他に同じ髪色の子は園にいる?」と聞いたのだ。
健斗が正直に四人いますと答えるとそうかと笑ってそれからはずっと園の施設や食事や要望について聞かれた。
桜宮は優しかった。
一緒に遊んでくれて美味しいお菓子をくれた。
けれど聡い健斗は彼が会いたかったのは自分ではなかったとすぐ理解してとてもがっかりした。
けれどそれからも桜宮は視察のたびに毎回健斗を呼んで沢山のお土産や楽しい話をしてくれた。
同じ髪色の他の子と交代しようかと提案した事もあるが必要ないと言われ結局最後まで桜宮が気に入ったのは誰なのか分からなかったのだ。
三葉だったとはね。
確かに彼も同じ髪色の一人だ。
仁さん凄いな。自分で見つけたんだ。良かったね。
今の三葉を救えるのはお金や社会的地位もある桜宮だけ。
初恋の相手である桜宮を思うと甘酸っぱいようなちょっと悔しいような思いはあるが三葉が幸せになれるならそれでいいやと思った。
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