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第2章―温かい手のひら―
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しおりを挟むそれは不思議な感覚だった。
冷たい雪が降っているのに、その人に抱き締められると自然に寒さを感じなくなった。暖かい腕。優しい声。私の頭を優しく撫でてくれる大きな手。 私はそこで忘れていた両親の事を突然、思い出した。
私を抱き締めてくれた彼の腕は暖かった。その温もりを見知らぬ人の腕の中で思い出すと、胸がギュッと切なくなった。
この人の腕は、こんなにも暖かい――。
優しい揺りかごのように、私を抱き締めて受け止めてくれる。そのあたたかい温もりを全身で感じると、彼に抱きついたまま泣きながら、すすり泣いた。
「そうか。きみは随分、一人で寂しい思いをしてきたんだな……。なら、私のもとに来るか?」
「っひっく…うっうっ……」
「私には愛する妻や子もいなければ、大切な恋人もいない。きみと同じく、ずっと一人ぼっちだ。もしきみが良ければ私の『娘』にならないか?」
「私が貴方の娘に……?」
「ああ、そうだとも。そしたらきみを幸せにしてあげるよ?」
「ほ、本当に……? あの人達みたいに私の事を捨てたりしない…――?」
「ああ、そんな残酷な事は絶対にしないさ。きみ見たいな可愛いらしい娘が傍にいてくれたら、私は毎日きみを離したりはしない。どうだい?」
彼は私に優しく話しかけてくると、そう言って話した。私は何故か、その人が悪い人ではない気がして素直に話を受け入れた。どの道、このまま彷徨っていたら路頭で飢えて死ぬことになるのは分かっていた。私はそんな絶望的な未来から逃げ出す為にあの時、彼の手を取った。
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