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第2章―温かい手のひら―
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しおりを挟む「良い子だ。さあ、私と馬車に乗ろう」
彼は私の手を取ると馬車に導いた。
「あ、貴方の名前は……?」
「私の名前はクレハドールだ。そして今日から、きみのお義父さんだ」
「クレハドール……。素敵な名前ね…――」
「そうか?」
「ええ、とても素敵だわ」
「きみの名前は?」
「私には本当の名前がないの。だから色々な名前を貰ったわ。でも、私に名前をつけてくれた大人達は最後、私の事を捨てたわ。だから本当の名前なんていらないのよ」
「――そうだったのか。きみは随分と、辛い思いをしてきだんだな。なら、きみの名前は今日から瞳子だ。素敵な名前だろ?」
「瞳子……それが今日から私の名前なのね?」
「ああ、そうだよ瞳子。さあ、私の屋敷に一緒に行こう。きみを心から歓迎するよ」
あの日、冷たい雪が降る寒空の下で彼の暖かい手に掴まった。それが彼との出会いだった。あの時、私達が引き寄せられたのはただの偶然だったのかもわからない。お父様の掌は、とてもあたたかく、温もりを感じられる優しい手だった。
その所為なのか私は時々、彼のあの温かい掌を思い出してしまう。そして、月灯りの下で舞う蝶のように、私の想いは宙を漂う――。
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