冷たい月を抱く蝶

成瀬瑛理

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第4章―悲しみの記憶と…――

3

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 人生で一度だけ、死にそうになった事がある。あれは孤児になってから半年が過ぎた頃だった。毎日食べ物にありつけずに、私はついに路上の上で倒れた。路上で倒れることは『死』を意味していた。

 いくら立とうとしても立ち上がれなくて、私は路上で倒れたままだった。でもその通りには人は沢山多くいたけど、誰も助けてはくれなかった。そして、目の前を裕福な人達が素通りするの。誰も気にかけていなかった。

 その時、私は感じたわ。
 
 この世界は何て冷たいんだろうって――。

 私はすがる思いで声を出して、道行く人に声をかけた。


「お願い、私に食べ物をちょうだい!」


――そう。あの時は無我夢中でひたすら叫んだ。そして、目の前を素通りした人の足下に必死に泣きすがって、食べ物を食べ物をって惨めに何度も言った。そしたら、そのすがった人は貴族の女性だった。女の人は私の掴んだ手を振り払うと、靴で私を蹴った。

 まるで石ころを蹴るように私は頭を蹴られた。

 あの時は本当に惨めで悲しかったわ。

 一層の事このまま、路上で死ねばいいって自分で自分を責めた。でもそんな時、誰かが近づいて来て私を地面から起こしてくれた。私よりも少し大きな子供だった。

 身なりの綺麗な格好をした男の子が、私の手に何かを握らしてきた。男の子は何も言わずに直ぐに立ち去って行った。そして私は彼が渡してきた物を閉じた手を開いて確かめた。すると手の中には金貨が1枚あった。私はそれに驚いた。
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