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愛は雪さえも…
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しおりを挟む司に会いたい…――。
冷たい雪は地面に深々と降り積もった。
「それってこれ?」
一瞬、聞き馴れた声に思考が停止した。体を震わすと恐る恐る後ろを振り向いた。すると、司が鞄を肩にかけたまま雪の中で黙って立っていた。
「あっ……」
司は目の前で照れくさそうな顔をすると、俺が捨てた青いセーターを着ていた。俺はそれに気がつくと、言葉を失った。そして、久しぶりに見た彼の姿に涙がポロポロと溢れた。司はカメラが入っている黒い鞄を肩にかけたまま、目の前で優しく微笑んだ。その立ち姿は紛れもなく本人だった。
「ただいま一希、元気にしてたか?」
その姿を目にすると、一気に思いが溢れて泣いた。そして、立ち上がって駆け寄ると、そのままぎゅっと彼に抱きついた。
「司っ…――!」
胸の奥で思いが次々に溢れてくると、腕の中で彼の名前を何度も呼んで泣いた。まるで幼い子供みたいに泣きつくと、司は両腕でぎゅっと抱き締め返して不意に話しかけてきた。
「どこから話そうか……?」
司はそう言って目の前で苦笑いをした。
「――さっき成田に着いたんだ。お前の顔が早く見たかったから、急いでタクシーを掴まえて帰ってきた」
司はそう言うと頭を優しく撫でてきた。俺は感情が抑えれなくなると、泣きながら言葉を詰まらして彼に尋ねた。
「しっ、仕事は…――? クリスマス帰れなかったんじゃなかったのか? お前あの女と一緒じゃなかったのかよ……?」
そう言って不思議そうに話すと、司は目の前で笑いながら答えた。
「あ~、やっぱりおまえ可愛いな! 俺をこれ以上、感動させるなよ。おまえの事を好きになり過ぎて怖いだろ?」
司はそう言って話すと俺の瞳を見つめてきた。その眼差しに胸がときめいた――。
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