悪魔になったらするべきこと?

ファウスト

文字の大きさ
71 / 172
新学期

砦の事件の終わりに

しおりを挟む
結果から言うと二人はエルフ達の救出に成功した。
エルフ達はいたく感謝してくれたが忘れていた
エトナーとルナはぎこちない笑顔でそれを受けることに。

「助けていただきなんと御礼を言ったらいいか!」
「いやぁ、ははは」

エトナーも珍しく歯切れが悪い。一応罪状のチェックなど一通り済ませてからなのでさらに時間がかかり、エルフ達が全員解放される頃には日もすっかり落ちていた。

「うー、さむっ」

道すがらエトナーは水筒に入れておいた火酒を含みながら教会へとエルフ達を引き連れて歩く。

「日が沈むと尚更冷えますね」
「ここいらで野宿なんかすると死ねるぞ、酒が尽きる前に教会へ行こう」

エトナーが言うにはこの街の夜は山から吹き下ろす風で恐ろしく寒いようだ。
ルナも今の時点で十分に寒いので皆と一緒に小走りで教会へと向かうことに。



「フラウステッドさん大丈夫かな・・・」

カティナは一人、教会の囲炉裏に炭を足しながら待っていた。
アダムは少し前にクラスメイトの様子を見にいってしまったし、教会には人が居ないのか
閑散としていて、火がはぜる音ばかりが響いている。

「冷えないのだけが救いだわ・・・」

火に集まったサラマンデルが元気に動いている。よほど濃い魔力を与えられたのだろうか。
まるで踊るように炭から炭に、熱から熱を伝えて煙突を上り、金属部を赤く熱していく。
その煙突の機能のおかげで教会はどんどんと暖かくなっていく。

「聖人様まだかな・・・」
「さむーーーーーーーーい!!!!」

ドカッッ!とドアを蹴破る勢いで開け放たれ、青い顔をしたエルフたちが列をなして教会に入ってきた。

「「「「「寒い寒い寒い!」」」」」

囲炉裏に群がるエルフたち。カティナは弾き飛ばされるように端に追いやられて慌てて立ち上がった。

「うーさむっ」
「聖人様!無事だったんで・・・酒くさっ!」
「あれ?アダムはどこいった?」
「えっと、生徒の様子を見てくるって・・・」
「不用心だな、まったく・・・」

人には安全がどうこうといったくせに、とエトナ―は愚痴をこぼすと
囲炉裏を囲むエルフたちの為に教会の物置に向かう。

「おーい!毛布配るぞ!一枚ずつもってけ!」

そこから毛布を持ってやってくると一人ずつに毛布を配り始めた。
エルフたちはそれを受け取るとくんくんと匂いを嗅いで顔をしかめた。

「なんか焦げ臭いんですが・・・」
「虫よけだ、我慢しろ。煙で燻してからしまってあるんだ」

臭いから虫はいねえよ。とエトナ―は言うと自身も毛布をかぶった。

「あれ、ところでルナちゃんはどこに・・・」
「あそこ、エルフたちにくっついて震えてる」

囲炉裏に直接当たれず、ガタガタ震えながらルナは外円にいるエルフにくっついている。
旅支度だったエルフたちは当然ながら防寒装備だったがルナは重ね着しただけだったので
モロに寒さに曝されていた。しかも貸してもらった教会のローブはくたびれていて
旧かったので猶更防寒能力がなかったようだ。それでもエルフたちを押しのけない
あたりに彼女のやさしさが透けて見える。

「かわいそ・・・」
「そう思うなら温めてやんな」
「そうですね・・・」

カティナは毛布を手にルナの傍に行くと自分ごと毛布を被ってルナに寄り添った。

「冷えてるね・・・」
「カティナちゃん・・・」

ローブを脱がせ、肩を寄せ合うと彼女の体が冷え切っているのに気付いた。
同胞を助けるために苦労をかけたクラスメイトを労うためカティナは
ルナの肩を抱いて頬を寄せた。

「ぬくーい・・・」

ホッとしたような表情のルナにカティナはようやく一心地ついた気持ちだった。
同胞は帰ってきたし、助けにいったクラスメイトも聖人様も無事だった。
あとは砦の内情が是正されて元通りになればこういった問題もなくなるだろう。

「よかった、ほんとに・・・」

温まった人から順番に囲炉裏から距離をとって思い思いのグループを作って横になっている。
カティナはうとうとしているルナをもう少しだけ囲炉裏に近づけると余った毛布を枕に
整えて敷くとルナを横にしてあげた。
火のぱちぱちとはぜる音と、ぼんやりしたオレンジ色の光が安心感と眠気を誘う。

「あふ・・・私ももう寝よう」

ルナの隣に寄り添うように横になると自分も毛布の中に入って天井を見上げた。
視線を横に向けるとエトナ―が残りの火酒を飲み干して自身も寝る準備を始めていた。
明日はどんな日になるだろう。

牢屋の中で考えていたときと今、同じことを考えている。
悪い事が終わって、その後のことだからきっといい日になる。そんな気がするのだ。

「・・・やっと、外で私の生活が始まるんだ・・・」

外に出て、国境についた途端に牢屋に放り込まれて、もうだめかと思っていた時に
まさかの学校の先生が助けに来てくれた。そして自分と同郷のエルフたちを
助ける為に聖人様だけでなくクラスメイトまで二つ返事で立ち上がってくれた。
心強い味方を得た気がして、カティナは嬉しくなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

処理中です...