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ルナの新しい力
月の導き
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悪魔が召喚されること、それはすなわち取引が行われることを意味する。悪魔という存在を鑑みればいかにも怪しげな雰囲気が拭えないが実際は必ずしもそうではない。
悪魔には大小様々な力を持ち、契約によってそれらを貸し与える事ができるのだ。
これは普通なら邪悪な魔法使いが兄弟な力を得て世界を支配・・・などと月並みな考えがよぎるだろう。
しかし現実はというと「猟師だから動物の声を聞き分けられるように」とか「寒い日にちゃんと火が起こせるように」とか生活に密接した契約も多いのだ。
もちろんライトな契約には捧げものもライトな物が多い。お祭りの参加だとか、収穫物をいくつかとか、信仰を捧げるとか、いろいろと地域に根差している。
このような場合、悪魔は正規のルートを通って地上に現れるので当然ながら弱体化はしない。
しかし契約が終了し、全てが滞りなく行われると悪魔は契約に従って魔界に帰らなければならないのだ。
前者は能力に、後者は時間に大きな制約がかかる。だがこれに例外が存在する。
大悪魔である。彼らは地上に信者が多く、彼らに命じて儀式をさせればいつでも地上には出られる。
しかし大悪魔はその存在が強大すぎるが故にどこにいても存在はほぼ察知されるし、下手をすると儀式の
規模で察知されることすらある。教会や魔法使いからも脅威と見なされるために地上で
自由に行動できることはほぼない。
ただ彼らも馬鹿ではない、そう言った場合は使い魔や下級の悪魔を使い走りとして使役することが多い。
使い魔の場合は自分でコントロールできるので柔軟に、下級の悪魔を使い走りにすればコストが安い。
ただ、どちらも共通することは「本人ではない」ということ。
悪魔を使役する場合はもちろん、使い魔を操作する場合もどちらも格段に戦闘能力は落ちる。
できることも多くない。
つまり、全てを要約すると「高位の悪魔が地上に滞在していること自体がおかしい」となるわけである。
儀式の予兆もなく、契約の兆しもなく、教会が警戒している節もない。
全てに全く予兆がないにも関わらず大悪魔が地上に顕現している。これが全てのおかしさを示している。
「ねえ、何かの間違いじゃないの?大悪魔が地上にいるだなんて・・・」
「そうだね、けど例外は何時だって存在する。以前、月が赤く染まって時の事を覚えているか?」
踊り子風の美女の言葉に布隠れの魔女は頷いた。あの時、魔法使いの中で特に悪魔と近しい間柄の者は
例外なくその予感を感知していた。
本来ならば他の大悪魔達と同様に彼女に祝いの品と言葉を送りたがる者がいただろう。
大悪魔は畏敬の念を集める存在。自身を高みへ引き上げる存在。古き者。魔法使いの憧れと言っていい。
「あの時だ、巧妙に隠されていたが悪魔達のざわめきが総帥や悪魔と密接に繋がった存在に伝わったのよ」
「大悪魔の誕生を隠す・・・?どんどんと想像が追いつかなくなってきたわ・・・」
「それはそうだろう、そんなことができる存在など数えるほどしかいない」
大悪魔の誕生を身内以外に隠しきることができる存在。それができるのはこの世に今のところ二人しかいない。
一人は日光教の最終兵器、生ける奇跡、神代の聖職者、不死の救済者。
性別を越えてこう呼ばれる、『聖人』エトナ―。
もう一人、こちらは『人』と形容するのが正しいとは思えない人の形をした異形。
形を保ち、力を保ち、世界を行き来する存在。
狂気の代弁者『魔神』ルルイエ。
「あの二人のどちらか、もしくは両方が誕生に加担していると考えて良い」
「・・・そういえばあの時、妙に聖人の到着が早かったのは」
布隠れの魔女はその時の状況と魔法使いの男が口走った言葉を思い出した。
「悪魔・・・ああああ!!!クソ!クソッ!あの男!」
「ちょっ!何があった?落ち着け!」
突然頭を掻き毟り始めた魔女に踊り子風の美女は驚いた表情で尋ねた。
「あのボケ!クソがっ!あいつが言ってたんだよ!『悪魔を見た』って!」
「なんだと・・・?」
「縛られて!連れ去られる前だったから!命乞いのための言葉だと思ってたのに!」
布隠れの魔女は自身のミスに気付いて地団駄を踏んだ。
大悪魔とのコネなど大金を積んでも余りある。覚えをめでたくすれば漏れなく
その関係者とも友好を築けるかもしれない。そして何より総帥直々に命令を下すほどの
感心事の核心を知れていたかもしれないという大きすぎる失敗を前に彼女が取り乱したのは
仕方ないことなのかもしれない。
「落ち着け、かなりの失敗だが挽回はまだ可能だ」
「うぅぅぅ・・・どうやって?」
「問題児を退治した魔法使いの学生、その中か、もしくは引率の教師がそうだろう?ならば調べるのは容易いはずだ」
「・・・そ、そうか!そうだった・・・!」
布隠れの魔女は件の魔法使いが戦っていた現場を見ていなかった、さらには彼女は転移の直後は感覚が鈍く気配を察知する能力が麻痺していた為にエトナ―の接近にすら気付けていなかったほどだ。
だが魔法使いを降した存在が魔法学校の生徒と引率の先生のどちらかにまで絞れている。
さらに言うなら若い悪魔と言うからには先生と言う線もないだろう。
「よかった、総帥に申し開きができそう・・・」
「それはよかった。それじゃあ戻ってきて早速だが現地に飛んでくれるかい?」
「ええ、名誉挽回しなきゃね」
魔女はそう言うと布を翻した。すると布に隠れた彼女はそのまま姿を消し、布だけが残される。
「さてと、これは彼女の部屋に戻さないとな」
踊り子風の美女は布を拾い上げるとそのまま回廊の奥へと消えた。
悪魔には大小様々な力を持ち、契約によってそれらを貸し与える事ができるのだ。
これは普通なら邪悪な魔法使いが兄弟な力を得て世界を支配・・・などと月並みな考えがよぎるだろう。
しかし現実はというと「猟師だから動物の声を聞き分けられるように」とか「寒い日にちゃんと火が起こせるように」とか生活に密接した契約も多いのだ。
もちろんライトな契約には捧げものもライトな物が多い。お祭りの参加だとか、収穫物をいくつかとか、信仰を捧げるとか、いろいろと地域に根差している。
このような場合、悪魔は正規のルートを通って地上に現れるので当然ながら弱体化はしない。
しかし契約が終了し、全てが滞りなく行われると悪魔は契約に従って魔界に帰らなければならないのだ。
前者は能力に、後者は時間に大きな制約がかかる。だがこれに例外が存在する。
大悪魔である。彼らは地上に信者が多く、彼らに命じて儀式をさせればいつでも地上には出られる。
しかし大悪魔はその存在が強大すぎるが故にどこにいても存在はほぼ察知されるし、下手をすると儀式の
規模で察知されることすらある。教会や魔法使いからも脅威と見なされるために地上で
自由に行動できることはほぼない。
ただ彼らも馬鹿ではない、そう言った場合は使い魔や下級の悪魔を使い走りとして使役することが多い。
使い魔の場合は自分でコントロールできるので柔軟に、下級の悪魔を使い走りにすればコストが安い。
ただ、どちらも共通することは「本人ではない」ということ。
悪魔を使役する場合はもちろん、使い魔を操作する場合もどちらも格段に戦闘能力は落ちる。
できることも多くない。
つまり、全てを要約すると「高位の悪魔が地上に滞在していること自体がおかしい」となるわけである。
儀式の予兆もなく、契約の兆しもなく、教会が警戒している節もない。
全てに全く予兆がないにも関わらず大悪魔が地上に顕現している。これが全てのおかしさを示している。
「ねえ、何かの間違いじゃないの?大悪魔が地上にいるだなんて・・・」
「そうだね、けど例外は何時だって存在する。以前、月が赤く染まって時の事を覚えているか?」
踊り子風の美女の言葉に布隠れの魔女は頷いた。あの時、魔法使いの中で特に悪魔と近しい間柄の者は
例外なくその予感を感知していた。
本来ならば他の大悪魔達と同様に彼女に祝いの品と言葉を送りたがる者がいただろう。
大悪魔は畏敬の念を集める存在。自身を高みへ引き上げる存在。古き者。魔法使いの憧れと言っていい。
「あの時だ、巧妙に隠されていたが悪魔達のざわめきが総帥や悪魔と密接に繋がった存在に伝わったのよ」
「大悪魔の誕生を隠す・・・?どんどんと想像が追いつかなくなってきたわ・・・」
「それはそうだろう、そんなことができる存在など数えるほどしかいない」
大悪魔の誕生を身内以外に隠しきることができる存在。それができるのはこの世に今のところ二人しかいない。
一人は日光教の最終兵器、生ける奇跡、神代の聖職者、不死の救済者。
性別を越えてこう呼ばれる、『聖人』エトナ―。
もう一人、こちらは『人』と形容するのが正しいとは思えない人の形をした異形。
形を保ち、力を保ち、世界を行き来する存在。
狂気の代弁者『魔神』ルルイエ。
「あの二人のどちらか、もしくは両方が誕生に加担していると考えて良い」
「・・・そういえばあの時、妙に聖人の到着が早かったのは」
布隠れの魔女はその時の状況と魔法使いの男が口走った言葉を思い出した。
「悪魔・・・ああああ!!!クソ!クソッ!あの男!」
「ちょっ!何があった?落ち着け!」
突然頭を掻き毟り始めた魔女に踊り子風の美女は驚いた表情で尋ねた。
「あのボケ!クソがっ!あいつが言ってたんだよ!『悪魔を見た』って!」
「なんだと・・・?」
「縛られて!連れ去られる前だったから!命乞いのための言葉だと思ってたのに!」
布隠れの魔女は自身のミスに気付いて地団駄を踏んだ。
大悪魔とのコネなど大金を積んでも余りある。覚えをめでたくすれば漏れなく
その関係者とも友好を築けるかもしれない。そして何より総帥直々に命令を下すほどの
感心事の核心を知れていたかもしれないという大きすぎる失敗を前に彼女が取り乱したのは
仕方ないことなのかもしれない。
「落ち着け、かなりの失敗だが挽回はまだ可能だ」
「うぅぅぅ・・・どうやって?」
「問題児を退治した魔法使いの学生、その中か、もしくは引率の教師がそうだろう?ならば調べるのは容易いはずだ」
「・・・そ、そうか!そうだった・・・!」
布隠れの魔女は件の魔法使いが戦っていた現場を見ていなかった、さらには彼女は転移の直後は感覚が鈍く気配を察知する能力が麻痺していた為にエトナ―の接近にすら気付けていなかったほどだ。
だが魔法使いを降した存在が魔法学校の生徒と引率の先生のどちらかにまで絞れている。
さらに言うなら若い悪魔と言うからには先生と言う線もないだろう。
「よかった、総帥に申し開きができそう・・・」
「それはよかった。それじゃあ戻ってきて早速だが現地に飛んでくれるかい?」
「ええ、名誉挽回しなきゃね」
魔女はそう言うと布を翻した。すると布に隠れた彼女はそのまま姿を消し、布だけが残される。
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