悪魔になったらするべきこと?

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プロローグ

変化!私はどうなった?

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手の平に火を浮かべるイメージをして、魔力を巡らせてみる。すると・・・

「わっ!」

思ったよりも大きな火が手の平から噴き出した。数十センチの火柱ができた。
ルナは驚いて手を振ると火は霧散して消え、手からはすこし煙が出ている。

「さすがに出力も段違いね、これならまず試験も大丈夫よ。ちょっとだけ小さくする必要があると思うけど」
「そ、そうですよね・・・」

屋内で使うにはちょっと気後れする大きさだった。改めて、小さく小さく、キャンドルの火をイメージしてみると・・・。

「むーっ・・・」
「いい感じいい感じ・・・うん、大丈夫」

試験の内容である十秒を軽くクリアして火の大きさを維持することができた。

「まさか小さくすることの方が難しいなんて・・・」
「出力も文字通りに人間離れしてるからねぇ、まあしょうがないよ」

ほっと安堵する。するとルナの視界が微かに揺れた。

「あれ、どうしたのかな・・・?」
「おっと、体力切れかな?無理もないけど」

糸が切れたように倒れそうになったルナをルルイエは抱きかかえて微笑む。

「頑張ったね、これからは皆が君の味方だからね」

ルルイエはゆっくりと瞼を閉じていくルナにそう言うと彼女を抱えて家まで向かった。







「はっ!あ、あれ・・・家だ・・・」

ルナが次に目を覚ましたのは自室のベッドの上だった。今までのことがまるで信じられずにベッドの中で身を捩った。

「・・・これって」

首に何かが掛けられているのに気付いて触ってみるとそれはルルイエにもらったペンダントであることが分かった。

「夢じゃなかった・・・!」

ベッドから飛び起きてルナは手の平に魔力を集中させてみる。そしてキャンドルの火をイメージして、ゆっくり、ゆっくりと魔力を流した。

「できた・・・!」

ピンポン玉くらいの火がゆらゆらと手の上で踊っている。

「使える・・・!魔法が!」

パンと手を合わせて火を打ち消すとルナは嬉しくなって部屋で飛び跳ねた。少しして、そう言えば・・・!と机の中に仕舞い込んだ追試の日程が掛かれた通知書を取り出した。

「朝一に来いって・・・言ってたよね」

カーテンの隙間からは朝陽が差し込んでいる。時間はどれくらいだろうか。
たとえ何時だったとしても関係ない、追試は一日受け付けているし、もう彼女に恐れる理由はない。
胸を張って、彼女は追試に臨めるのだ。

「おはよう!」
「おはよう、ルナ」
「ルナ、そんなに急いでどうしたの?」

着替えてリビングに出ると両親が朝食を取っていた。父はまだ謹慎処分なんだろう。寝間着のままだ。
ルナはそんな父をぎゅっと抱きしめて額にキスすると自分の分の朝食を瞬く間に平らげて立ち上がった。

「ごちほうはま!いってきまふ!」

もぐもぐしながらルナは母にもハグをしてから鞄を持って走り出した。

(試験に合格して、私は・・・!)

両親の名誉と自分の将来を守る!その意志に燃えてルナは学校の門をくぐった。そして追試の会場へ。

「逃げずによく来たな?」
「・・・」
「おい、無視するんじゃない!」
「お願いします」
「はい、ルナ・フラウステッドさんですね」
「頑張ってくださいねぇ」

ルナはガスタンの部下を一瞥するとぷいっと視線を逸らして校医の先生と試験監督に自分の番号を伝えて試験に臨んだ。

(ふざけやがって・・・まぁ、いい。どうせ魔法なんぞ奴には使えないんだ)

ガスタンの部下は廊下で待機している記者に合図をして、取材の準備をさせる。ルナが倒れたらそれをエルドの不祥事の証拠として報告する手筈なのだ。
表向きは追試を受ける生徒達を応援するという名目まででっち上げての手の込みようである。

「それでは、無理のない範囲で頑張ってくださいねぇ」

校医の先生こと、コロン・ルッテナンはルナにいつもの飄々とした様子で言いつつも時折周囲の事に意識を向けていた。

(彼女が来た途端に騒がしくなった、どうやら彼女になにかあるようだな)

名簿に目を落とすと今試験に向けて精神統一をしている少女の事を黙読してみる。

(フラウステッド・・・魔法局の人にそんな苗字の人がいたな、確か結構有名な人だったはずだが)

チラッと魔法局の人間を見やる。彼等の視線は何処か棘があり、敵意すら感じる。そして彼女の挙動を見逃すまいと廊下でペンとメモ帳を握りしめている記者の姿。

(同僚の娘さんを応援に来たって雰囲気じゃないねぇ・・・こりゃつまらんことになりそうだ)

「それでは始めてください」

試験監督の声と共にルナは腕を突き出して手のひらを上に向けると魔力を集中させる。そして火を出現させるとそれを規定の時間まで危なげなく維持して見せた。

「やった!」
「おめでとうございます、フラウステッドさん」


「・・・なんだと?」

魔法局の人間が小声でそう呟いたのをコロンは聞き逃さなかった。

(やっぱり何かあったな・・・)

コロンはそそくさとルナの元まで移動すると何食わぬ顔でルナの合格に笑顔を見せる。

「おかしいだろ!」

お祝いムードの会場に男性の声が響いた。コロンが顔を向けると案の定というべきか、魔法局の人間が彼女の合格に疑義を唱えたのである。

「はて、なにかおかしいですかぁ?」

わざわざ声をあげるからには何かしらの確信があるのだろう。しかしコロンにとってそれはどうでもいい事だった。
惚けて見せながらコロンは頭の中で色々と仮説を立ててみる。

(確か前回、フラウステッドのお嬢さんは魔力欠乏症で倒れたんだったか?しかしそれだけで彼女の合格に難癖をつけるには弱いはず)

彼女が魔法を使えないであろう事に確信を持てる事案。そうなるとコロンは校医としての知識をフル活用して考える。

(魔力欠乏症に似た症状が出るとなると・・・欠乏錯覚症、魔力量乖離症・・・どっちかに彼女が罹っていたと分かっていたようだ)

どちらもかなり珍しいタイプの症状だ。知識としてはあっても実際に発症している人間はかなり少ないのである。

(医者としてもそう告げるのに勇気がいる病気でもある)

人の何倍も魔法が使えるようになるまで時間が掛かってしまうある意味魔法使いにとって何より恐ろしい病気である。
時折現れては未完の大器を作ってきた病であるが・・・。

「そいつが魔法を使えるはずが無い!」
「はずがないと仰いますがね、現に彼女は・・・」

コロンは魔法局の男性を避けるように試験監督の後ろに隠れる彼女とを見比べながら言う。

「何か証拠がおありですかぁ?」
「証拠、それは・・・」

コロンが尋ねると男性は何か言い淀んだ顔をする。

「あぁ、わかりましたよ」
「何がだ?」
「彼女が前回倒れたことを気にしてらっしゃるんでしょ?」

コロンはそう言うと頭をかいて続ける。

「あれですよ、よくあるんです」
「だからなにがだ!」
「事前に練習し過ぎて倒れる人ですよぉ、私もそうだったんでよくわかりますねぇ」

試験となると不安で不安で!とわざとらしく大袈裟に肩を竦めてコロンは言う。男性はイライラした様子だがコロンは素知らぬ顔でハハハと笑いだす始末である。

「だから私も追試で受かったんですよ、友達にえらく呆れられたモンです」
「もういい!失礼する!」

受かってからも迷惑を、と自分の思い出話を続けるコロンに業を煮やした男性はドスドスと足音を鳴らしながら帰っていってしまった。

「ありゃ、お帰りですか。まだ生徒さんは残ってるんだけどなぁ」

コロンは男性を見送ると廊下で待機していた記者の所へ行くと

「ご苦労さん、多分だけどもう帰った方がよろしいですよ」
「あ、はいぃ・・・」

窓を開けて記者にそう声をかけると記者もそそくさとその場を後にした。
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