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プロローグ:ある博士の回想録
最終投薬、完成の日
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彼女の誕生日、彼女は不思議とこの日を好いていなかったがだからこそ今日、この日に完成した薬品を投与する事は最適かと思った。十年に渡る長い月日を実験とその試験に費やし、知識、体力共に高い水準を獲得したと私は思っている。彼女が果たしてそれを望んでいたかだけが心残りだったが・・・。
「君は、この最後の薬で完成する」
私が求めた不死なる生命体、それも不老、限界突破、成長の可能性を残した究極の生命体。それを私が作り出した薬品によって生み出すのだ。十年の歳月の徹底管理と教育、そして机上の知識に寄らない実体験による教育も施せるだけ施し、危険に飛び込む事で耐久性試験にもなんどとなくトライしてはその性能を発展途上ながら発揮した。自分も巻き込まれて死にかけるなどもしたがそれもいい思い出だろうか。
「はい、先生」
薄手のシャツにズボン姿の彼女は診察台に腰かけてほほ笑む。普通の子供なら注射や服薬など嫌いだろうにそんなことはおくびにも出さない。本当にいい子だ。薬品の影響か十五歳の少女にしては177センチと高いが彼女はどうも私にさらに近づけたいらしく身長を伸ばしたがっていた。うーん、確かに身長だけは何もしなくとも自慢できる数値ではあったが(192センチ)、女の子がそんなに背を伸ばしてどうなると言うんだろうか。
話が逸れた。私は気を取り直して瓶に入った虹色に輝く液体を注射器で吸い上げる。これで最後、私の理想の生命体には十年、仮に彼女ほどの体質の持ち主が他に居たとして・・・完成にはやはり同様の年月を必要とするだろう。
薬物への高い耐性だけでなく、一度受け入れた薬剤の効能を体の隅々まで行きわたらせて吸収するという不思議な体質・・・もしかしたら魔力やエーテルの関係でこの世界の住人は須らくそうなのかもしれないが・・・永らくの徹底管理の元ではあっても同じ結果が得られるとは限らない。
「それじゃあ、腕を出して・・・」
言われるままに彼女は右腕を私に差し出す。利き腕ばかりでは不便だろうと思ったがそうでもないらしい。
「緊張するかい?」
「どうして?」
私の問いかけに彼女は首を傾ける。ターコイズブルーの綺麗な瞳が私を見つめ、その中にきょとんとした間抜けな表情の自分がいる。
「もう慣れっこだよ、それに先生が私の為にならない事したことあった?」
「それはそうだが・・・」
子供らしい屈託のない笑顔と心の底からの信頼に私は思わず苦笑した。誰かのため・・・などと嘯いてきたが実際は自分の知的好奇心、そしてこの世界でようやく手に入れた錬金術と魔術を行使する場所が手に入って浮かれて実験を繰り返してきただけなのだ。長くこの世界に滞在し、一角の魔法使いになってからは魔術師、魔法使いの世界にも黒い噂が絶えない事は嫌でも耳に入った。その内容は確かに悍ましく、義憤を感じる部分もあれどそこの根底にあるのは自分と同じ身勝手な好奇心だった。
自分と闇に消えていった数多の魔法使い達、その差は一体何なのだろう。彼女のすんだ瞳を見るたびに思う。そしてこの研究の果てに彼女に何が訪れるのか・・・。
迷いを振り払うように目を閉じて息を深く吸い込む。そして注射をいつものとおり、彼女におこなった。
「終わり・・・?」
「ああ、その筈だが」
呆気ないと言わんばかりの彼女には申し訳ないがこれで理論上は大丈夫な筈なのだ。大丈夫なのだが・・・だからといっていきなり致死性の何かしらを行うわけにもいかない。そこまでマッドじゃないつもりだ。
「じゃあ私はこれから不死身の生物なんだね」
彼女はどこか誇らしげに笑みを浮かべると立ち上がって私に抱き着いた。彼女の好むスキンシップだ。小さな頃は抱き上げたまま書物を紐解いたりしたものだが今となっては難しいか。
「じゃあやることもやったし朝御飯にしようよ」
彼女はそう言うと私から離れてすたすたと歩いていく。何かしらの事態に備えて早い時間から行っていたので朝食がまだだった。もともと料理の不得手な自分は栄養的な意味合いの助言以外はできず、自然と皆に任せきりだった。
彼女も私の面倒を見る内に家事が得意になったクチだ。向こうの世界の料理知識なんかも覚える限り教えたので今ではちょっとしたものだ。薬品の後始末をしながら考えていると彼女の将来についても考えが及ぶ。
(将来、彼女が家庭を持つことができたとして・・・果たして上手くいくだろうか)
正直なところ、贔屓目に見ても彼女は端正な顔立ちをしているし発育もたいへんよろしい。そして料理も家事も人並以上にこなせると思う、なにしろ家事とは無縁な私の面倒を見れているのだから。
「君は、この最後の薬で完成する」
私が求めた不死なる生命体、それも不老、限界突破、成長の可能性を残した究極の生命体。それを私が作り出した薬品によって生み出すのだ。十年の歳月の徹底管理と教育、そして机上の知識に寄らない実体験による教育も施せるだけ施し、危険に飛び込む事で耐久性試験にもなんどとなくトライしてはその性能を発展途上ながら発揮した。自分も巻き込まれて死にかけるなどもしたがそれもいい思い出だろうか。
「はい、先生」
薄手のシャツにズボン姿の彼女は診察台に腰かけてほほ笑む。普通の子供なら注射や服薬など嫌いだろうにそんなことはおくびにも出さない。本当にいい子だ。薬品の影響か十五歳の少女にしては177センチと高いが彼女はどうも私にさらに近づけたいらしく身長を伸ばしたがっていた。うーん、確かに身長だけは何もしなくとも自慢できる数値ではあったが(192センチ)、女の子がそんなに背を伸ばしてどうなると言うんだろうか。
話が逸れた。私は気を取り直して瓶に入った虹色に輝く液体を注射器で吸い上げる。これで最後、私の理想の生命体には十年、仮に彼女ほどの体質の持ち主が他に居たとして・・・完成にはやはり同様の年月を必要とするだろう。
薬物への高い耐性だけでなく、一度受け入れた薬剤の効能を体の隅々まで行きわたらせて吸収するという不思議な体質・・・もしかしたら魔力やエーテルの関係でこの世界の住人は須らくそうなのかもしれないが・・・永らくの徹底管理の元ではあっても同じ結果が得られるとは限らない。
「それじゃあ、腕を出して・・・」
言われるままに彼女は右腕を私に差し出す。利き腕ばかりでは不便だろうと思ったがそうでもないらしい。
「緊張するかい?」
「どうして?」
私の問いかけに彼女は首を傾ける。ターコイズブルーの綺麗な瞳が私を見つめ、その中にきょとんとした間抜けな表情の自分がいる。
「もう慣れっこだよ、それに先生が私の為にならない事したことあった?」
「それはそうだが・・・」
子供らしい屈託のない笑顔と心の底からの信頼に私は思わず苦笑した。誰かのため・・・などと嘯いてきたが実際は自分の知的好奇心、そしてこの世界でようやく手に入れた錬金術と魔術を行使する場所が手に入って浮かれて実験を繰り返してきただけなのだ。長くこの世界に滞在し、一角の魔法使いになってからは魔術師、魔法使いの世界にも黒い噂が絶えない事は嫌でも耳に入った。その内容は確かに悍ましく、義憤を感じる部分もあれどそこの根底にあるのは自分と同じ身勝手な好奇心だった。
自分と闇に消えていった数多の魔法使い達、その差は一体何なのだろう。彼女のすんだ瞳を見るたびに思う。そしてこの研究の果てに彼女に何が訪れるのか・・・。
迷いを振り払うように目を閉じて息を深く吸い込む。そして注射をいつものとおり、彼女におこなった。
「終わり・・・?」
「ああ、その筈だが」
呆気ないと言わんばかりの彼女には申し訳ないがこれで理論上は大丈夫な筈なのだ。大丈夫なのだが・・・だからといっていきなり致死性の何かしらを行うわけにもいかない。そこまでマッドじゃないつもりだ。
「じゃあ私はこれから不死身の生物なんだね」
彼女はどこか誇らしげに笑みを浮かべると立ち上がって私に抱き着いた。彼女の好むスキンシップだ。小さな頃は抱き上げたまま書物を紐解いたりしたものだが今となっては難しいか。
「じゃあやることもやったし朝御飯にしようよ」
彼女はそう言うと私から離れてすたすたと歩いていく。何かしらの事態に備えて早い時間から行っていたので朝食がまだだった。もともと料理の不得手な自分は栄養的な意味合いの助言以外はできず、自然と皆に任せきりだった。
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(将来、彼女が家庭を持つことができたとして・・・果たして上手くいくだろうか)
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