ノーライフ・ガールは博士の最高傑作

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プロローグ:ある博士の回想録

ノーライフ・ガールの先生とは

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私の名前はリーシュ・ノサッジ、幼い頃なんだったかよく分からない戦争に巻き込まれて両親は死んだ。それから独りぼっちの所を人買いに売られ、幼いながらに私の人生が終わった事を悟った。世界を憎み、人を憎み、幸せを担保された人々をうらやんでは嫉妬し、これからやって来るろくでもない人生を呪い続ける日々だった。

「ほう、この子は・・・面白い」

最初に買いに来た男の鼻を削った木片でそぎ落とし、二番目の男の喉を掻き切った。人買いは私を愛玩目的で売るのを早々に諦めて今度はさらにろくでもない用途で売りに出した。弓の的や魔法の実験台にするような、そんな使い捨ての・・・時々食料にされるとか聞いた。そんな時だった。
彼は先ほどのような言葉を述べて私を買い取った。どう言った理由かは解らなかったが彼はとても大きな体を揺らして私を覗き込むとその深淵のような瞳に私を映し、にんまりと笑った。その姿がとても恐ろしくて、それでも私の嫌な世界を壊してくれそうで・・・何故だかうれしかった。

「君、名前は・・・?」
「無い、思い出したくない」

出会ってみると彼はとても良識的で、優しくて、それでいて良心が服と帽子とマスクをつけているような人だった。うれしいような、期待外れなような、何とも言えない気持ちで私は一年ほど過ごした。ケンコウシンダン?とやらで何度も針のついた容器で刺されるのだけは嫌だったけど目に見えて病気の子供たちが減っていった事に驚いた。彼はお医者さんなのだろうか。リーシュと言う名前をもらって、私は新しい人生を予想よりも遥かに素晴らしい方向に修正する事が出来たがそれでも、なんとなく詰まらない日々が続いていた。
第二の転機が訪れたのは孤児院を兼ねた彼の診療所で起きた毒の発生事件だった。私が面倒を見ていた小さな子達がどういった訳か薬品を保管していたらしい部屋に入ってしまい、さらに大変な事に薬品の棚を倒してしまったのだ。
諫めようと部屋に入った私の鼻をついた酷い臭いと、床に散らばり混ざり合った薬品、苦しむ子供たちを見て私は思わず彼らを助けるべく飛び込んでいた。無我夢中だったから気づかなかったけど先生曰く混ざった薬品はかなりの毒性を持っていたらしくそれを解毒剤もマスクもナシに平然としていた私に彼は驚いた様子だった。そして、私の第二の転機である新薬の被験者としての生活が待っていた。

「言いにくいが・・・新しい薬の実験台になって欲しい、君の体は薬物に強い耐性を持っているようだ」
「ええ、もちろんいいですよ」

その時の彼の驚いた表情が忘れられない。まるで断ってくれと言わんばかりの表情だった。だが、だからこそ私は彼の役に立ちたかった。彼が非情に振舞うこと、それを私に頼む事がなによりの信頼の証だとそう思った。
そして、実験に付き合う中で偶然見つけた彼の秘密に私の心は強く、強く引き付けられた。

「錬金術・・・悪魔の召喚術・・・神学・・・」

この世界ではおそらく存在しないであろう未知の魔術体系、そしてこの世界に存在しないであろう高位の存在について書かれた書物が医療と同じ量、もしくはそれ以上の量の蔵書があった。そしてなによりその全てに触れ、召喚し、契約する術が書き記されているのだ。かつて彼の世界を支配した様々な神々、そしてそれと対を為す悪魔の存在。
世界の理、魔術の豊富な知識、そしてこの世界に存在するのかも怪しい技術。全てが私を惹きつけた。
この知識は一体どこから得たのか?そして添えられた手記に記された超常の存在との邂逅の詳細。彼は一体何なのだろう?そして神に匹敵する上位存在との契約すら彼はこなしたと手記にある。本当だろうか?流石に俄かには信じがたい内容に私は思わずその書物に目を通したことすら伏せて、代わりに錬金術と薬学について興味があったと嘘をついてこの書庫に出入りする事にした。このころからだろうか、彼を『先生』と呼ぶようになったのは。
精霊のみならず、悪魔も、そして神さえも知己の中にある先生の素晴らしさ。世界を容易に滅ぼしうる力を持ちながら願う心は善良で、優しくて、とても清らかだ。私も先生と同じになれるだろうか?まるで、私にとっての神のような彼に。

そして、十五歳の誕生日、私はついに先生の手で完成した。不死身の肉体、異界の知識、それらを備えた私はどれだけ彼にとって有益な存在になれたのだろう。それを知るためには結果が必要だ。

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