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プロローグ:ある博士の回想録
ノーライフ・ガールの決意
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結果、とはいうものの先生が普通の人間が望むような立身出世に興味がない事は身の回りの世話を任されている内に嫌と言うほどわかっている。貴金属は得ずとも自ら作り出せる錬金術の最高峰の術者であり、例え作り出さずとも宝石の傷を消したり、貴族連中のドレスを新品に変換したりという並外れた技術を持っているので金銭の獲得には困らない能力がある。また、医師としても同様で知識と技術、内臓に巣食った病魔を腹を切り開いて刃物で切り取ったり時には直接手を突っ込んで治療するという荒業すら使いこなす彼は時に神を超えて悪魔的とすら言われる。
「どうしたら先生に恩を返せるのかな・・・」
目下彼が目指す目的はなんなのか、それは私で実現可能な事か?どうにもわからない。彼はいつもマスクで表情を隠し、目元だけで笑みを浮かべて私達に優しい言葉をかけてくれる。稼いだ莫大であろう金銭は全て私達を育てるために費やされ、下手な村なら土地ごと買えるのでは?と思うほど。時折爵位を手に王族や貴族が先生を囲おうとするところから見ても並々ならぬ評価を既に得ているのは間違いない。
そうなると私ができることは・・・。
「・・・この不死身の体でできること」
なんとなく呟いて自分の手を見る。朝食を終えた先生が仕事用の薬の調合に没頭しだしたので暇になり、考え事をしながら孤児院の外にでてみればいつのまにか少し遠い丘の上。いけないと思いつつも私は目の前の岩に視線を移した。
「・・・っ!」
振りかぶって思い切り拳を叩きつけると岩はバラバラに砕け散り、破片がそこらに散らばる。再生するはずなのだがその前に体に宿った力が強すぎて傷がつかない状況だ。当初、膂力の上昇を見込んで投与された薬剤により増強された膂力に耐え切れず体中の骨が粉砕するという珍事が発生し、ショックが強すぎたらしく次回から痛覚がマヒしてしまった。先生の慌てぶりがとても面白かった気がするがそれを笑うと先生が珍しく怒るのでできるだけ笑わない事にしている。次回に投与された薬は骨格レベルからの強化という事で私の成長や見た目を変えないように調整しながら折れた腕や足を矯正しながらの作業となった。その結果として私の体は並大抵では傷つかない体に・・・これじゃあ再生能力がどうとかわからないような・・・。
「こうなったらイチかバチか・・・悪魔の力を頼るか」
先生の蔵書の中には魔界へと赴く方法もあった。魔界の生物と契約し、さらなる力を得るしか先生に近づく方法がないと思われる。そしてゆくゆくは先生の次代を担う存在として、あの膨大な資料と知識を受け継ぐのだ。
先生はどうやら他の子達は魔術はおろか錬金術なども教えてもらっておらず、薬品の知識などもほとんどない。
そうなると先生はそういった知識を教える事を躊躇っているようだが・・・。無理もない、あれはこの世界にはおそらく早すぎる。世界を知れば知るほど私ですらそう思うのだ。
「さて、そうなるとさっそく誰かと契約しようっと」
対価に何を用意しようか、とりあえずは肉なんかがいいかもしれない。こそっと魔導書を持ち出す必要もあるから少しばかり準備が必要だ。数日かけて私は魔導書を持ち出し、人気のない場所に大型の獣を仕留めて持ち込んだ。
「さて・・・これで後は陣を書いて・・・」
本と見比べながら私は一つずつ模様を地面に描いていく。任意の悪魔を呼び出す、召喚者に予め最適な悪魔を呼び出す事で私のような初心者でも召喚と契約を成功させることができる。最適化された、先生の悪魔召喚士としての最高峰の技術だ。
「できた・・・『我が求めに応じて来たれ、深淵のモノ、最果てのモノ、光明のモノ、この世ならざる世界の理を我に』」
簡略化された詠唱、それを補う複雑な紋様が詠唱の役割を果たす。
『オォォォ・・・』
魔法陣が俄かに輝き始め、そして・・・深い闇が泥の様に滲み出し、私の周囲をあっという間に覆いつくした。
「これは・・・一体・・・?」
『おや、これはまた可愛らしい子・・・』
声、女性のような、それでいて『おそろしい』声。まるで初めて先生に会った時のような、そんな感覚に身震いした。
『呼ばれて来てみれば小娘一人か、世界の終末にはちと早いが・・・』
「しゅ、終末・・・?」
『我を何で、それでいて何の側面を以て呼んだか知らぬと見える・・・その不敬は高くつく』
そう言うと目の前の、とても大きくて恐ろしい存在は私を見おろしてほほ笑む。
『汝の不敬の対価にまずその腕、もらおうか』
「・・・!」
言葉が早いか、私の両腕が消滅した。噴き出す血にぽかんとしているとその恐ろしい存在はすうっと目を細める。
『なかなかに面白い体をしているようだ、腕と言わず体ももらおう』
刹那、私は首だけになり大きな掌の上に落ちた。痛みを感じられなくて良かったと、心の底からおもった。
頭の中から言葉が消える、上手く考えられない。怖い、怖い、怖い・・・。何が起こったのか、私は悪夢を見ているのか?悪い夢なら覚めてほしい。
『ふふふ、可愛い・・・首だけで震えて・・・』
細める眼から覗く瞳がまるで深淵のようだ。先生、先生・・・助けて助けて助けて助けて助けて助けて。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。開いた口の中で私の体が漂っている。助けを乞うようにもがいている。
瞳に私の顔が映る。震えている。歯がガチガチとなっている。汗が止まらない。首だけなのに体が熱い。
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして。
「どうしたら先生に恩を返せるのかな・・・」
目下彼が目指す目的はなんなのか、それは私で実現可能な事か?どうにもわからない。彼はいつもマスクで表情を隠し、目元だけで笑みを浮かべて私達に優しい言葉をかけてくれる。稼いだ莫大であろう金銭は全て私達を育てるために費やされ、下手な村なら土地ごと買えるのでは?と思うほど。時折爵位を手に王族や貴族が先生を囲おうとするところから見ても並々ならぬ評価を既に得ているのは間違いない。
そうなると私ができることは・・・。
「・・・この不死身の体でできること」
なんとなく呟いて自分の手を見る。朝食を終えた先生が仕事用の薬の調合に没頭しだしたので暇になり、考え事をしながら孤児院の外にでてみればいつのまにか少し遠い丘の上。いけないと思いつつも私は目の前の岩に視線を移した。
「・・・っ!」
振りかぶって思い切り拳を叩きつけると岩はバラバラに砕け散り、破片がそこらに散らばる。再生するはずなのだがその前に体に宿った力が強すぎて傷がつかない状況だ。当初、膂力の上昇を見込んで投与された薬剤により増強された膂力に耐え切れず体中の骨が粉砕するという珍事が発生し、ショックが強すぎたらしく次回から痛覚がマヒしてしまった。先生の慌てぶりがとても面白かった気がするがそれを笑うと先生が珍しく怒るのでできるだけ笑わない事にしている。次回に投与された薬は骨格レベルからの強化という事で私の成長や見た目を変えないように調整しながら折れた腕や足を矯正しながらの作業となった。その結果として私の体は並大抵では傷つかない体に・・・これじゃあ再生能力がどうとかわからないような・・・。
「こうなったらイチかバチか・・・悪魔の力を頼るか」
先生の蔵書の中には魔界へと赴く方法もあった。魔界の生物と契約し、さらなる力を得るしか先生に近づく方法がないと思われる。そしてゆくゆくは先生の次代を担う存在として、あの膨大な資料と知識を受け継ぐのだ。
先生はどうやら他の子達は魔術はおろか錬金術なども教えてもらっておらず、薬品の知識などもほとんどない。
そうなると先生はそういった知識を教える事を躊躇っているようだが・・・。無理もない、あれはこの世界にはおそらく早すぎる。世界を知れば知るほど私ですらそう思うのだ。
「さて、そうなるとさっそく誰かと契約しようっと」
対価に何を用意しようか、とりあえずは肉なんかがいいかもしれない。こそっと魔導書を持ち出す必要もあるから少しばかり準備が必要だ。数日かけて私は魔導書を持ち出し、人気のない場所に大型の獣を仕留めて持ち込んだ。
「さて・・・これで後は陣を書いて・・・」
本と見比べながら私は一つずつ模様を地面に描いていく。任意の悪魔を呼び出す、召喚者に予め最適な悪魔を呼び出す事で私のような初心者でも召喚と契約を成功させることができる。最適化された、先生の悪魔召喚士としての最高峰の技術だ。
「できた・・・『我が求めに応じて来たれ、深淵のモノ、最果てのモノ、光明のモノ、この世ならざる世界の理を我に』」
簡略化された詠唱、それを補う複雑な紋様が詠唱の役割を果たす。
『オォォォ・・・』
魔法陣が俄かに輝き始め、そして・・・深い闇が泥の様に滲み出し、私の周囲をあっという間に覆いつくした。
「これは・・・一体・・・?」
『おや、これはまた可愛らしい子・・・』
声、女性のような、それでいて『おそろしい』声。まるで初めて先生に会った時のような、そんな感覚に身震いした。
『呼ばれて来てみれば小娘一人か、世界の終末にはちと早いが・・・』
「しゅ、終末・・・?」
『我を何で、それでいて何の側面を以て呼んだか知らぬと見える・・・その不敬は高くつく』
そう言うと目の前の、とても大きくて恐ろしい存在は私を見おろしてほほ笑む。
『汝の不敬の対価にまずその腕、もらおうか』
「・・・!」
言葉が早いか、私の両腕が消滅した。噴き出す血にぽかんとしているとその恐ろしい存在はすうっと目を細める。
『なかなかに面白い体をしているようだ、腕と言わず体ももらおう』
刹那、私は首だけになり大きな掌の上に落ちた。痛みを感じられなくて良かったと、心の底からおもった。
頭の中から言葉が消える、上手く考えられない。怖い、怖い、怖い・・・。何が起こったのか、私は悪夢を見ているのか?悪い夢なら覚めてほしい。
『ふふふ、可愛い・・・首だけで震えて・・・』
細める眼から覗く瞳がまるで深淵のようだ。先生、先生・・・助けて助けて助けて助けて助けて助けて。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。開いた口の中で私の体が漂っている。助けを乞うようにもがいている。
瞳に私の顔が映る。震えている。歯がガチガチとなっている。汗が止まらない。首だけなのに体が熱い。
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして。
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