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旅立ちの日に
夕食準備の合間に
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「お気に入りだったのに・・・」
大きな鍋は子供たちの食事を一度に作る上で非常に便利な物で必然的に使用頻度も高く使い慣れた物だったのだがもはや無事なのは下準備に使う器具だけだ。
「鍋無しで料理はできないからなぁ・・・仕方ない」
そう思い、フライパンを取り出そうとした私の隣にいつの間にか先生が立っていた。相変わらずこの人は動きが読めない。ヨーガで体内の魔力や気、血流すらコントロールできる私は自然と自分以外の気や魔力の流れを察知できるようになったがそれでも先生のそれは異質すぎて把握できない。
「壊れたのなら直しましょうか」
砂になった鍋に手をかざすと先生は瞬く間に鍋を再生した。まるで時間の巻き戻しのようだったがデザインが異なった鍋になっているので再錬成なのだろう。最初は無地だったのがなぜか蔓草の模様が入っている。
「さて、これで夕食の準備は可能でしょうか」
「相変わらず馬鹿げたレベルの錬金術ですね」
破壊された鍋は恐らくではあるが普通の鉄ではなくなっていた。なぜなら私がそれを『鉄』として扱おうとしても無理だったからだ。本当ならそれを鉄に戻してから再構築を行うという手順を踏まないといけないのだが先生はそれを当たり前の様に同時進行している。
「お誉めに預り光栄ですよ、ですがこれくらいは貴女も直に出来るようになります」
容易く言うがそれがそうではない事は言うまでもない。確かに鉛を金に変えるとかそう言うのは可能だ。だがそれが素早くかつ同時進行で、さらには大量に行えるのは彼しかいない。その気になれば土の魔法で隆起させた岩を鉄や他の金属にしてしまうのだからたまったものではない。
「とりあえず今日はこの残った野菜・・・ジャガイモの皮で何か作ってみます」
厚めに剥かれてしまった皮にはジャガイモがまだ沢山ついている。これをパリッと焼いてしまえばいくらでも食べられるだろう。細かく切ろうと思ったら逆に難しいレベルの絶妙な厚さなのでむしろ手間は少ないかもしれない。
「リーシュ」
下準備を始める私に先生は徐に言う。
「なんです?」
「君はこれから君の幸せの為に行く、それは間違いないね?」
唐突な質問に私は思わず手を止めた。どういうことだろう。
「どうしたんですか?」
「君の、将来の話さ。普段は他の人の目があるからね」
そう言うと先生はシンクに寄り掛かって私を見降ろした。久しぶりの有無を言わせない雰囲気に私は思わず息を飲む。
「・・・その」
「もし、貴女が私やシヴァの言葉を妄信して動くつもりならば・・・それは許可できない」
言葉の途中で先生はいつになく厳しい言葉で私に言う。そしてその後で私に諭すようにつづけた。
「私には貴女を此処まで育てた責任がある。それは貴女が真っ当に生きるように諭す事であったり幸せを願う事であったり・・・ね」
「先生・・・」
「例え世界が滅ぶような事をしでかしてしまうとして・・・それが何だと言うのですか」
そう言うと先生は珍しく不敵な笑みで私を見つめる。
「貴女を作ったのは私だ、貴女が私を超えないかぎりそんなことはできっこないのだから」
「むぅ」
「ははは、珍しく怒りましたね」
確かに未熟、確かにそうだけど・・・なんだか釈然としない。
「難しく考えてはいけない、貴女はまず自分の幸せを考えるべきなのですよ」
「難しく・・・?」
「そう、間違っていたら私がまた教えてあげましょう。なので気ままに、それでいて自分の正しいと信じる道を歩みなさい。そうしている内に自ずと答えはでる」
そう言われて、我ながら単純だとは思うが無尽の荒野に一筋の道が開かれたような気分だった。自分が世界を滅ぼすなんてと思っていたがそれは私がそれまで望み続けていたからなのだ。今、この瞬間に限っては私はそんなこと望まないしこれからもそうならないように過ごしていけばいい。何せ今は離れたくないと思ってくれる子達もいれば無事此処に戻ってきたいと思える人もいる。帰る場所があるのだ。
「そう・・・ですね」
私は決意した。かつて抱いた妄執を振りまわされる事なく自身の幸福を願う事。私は夕食作りを再開しながら笑みを浮かべて厨房を出ていく先生を横目で見送った。
「さてと、旅の用意はこれで大体大丈夫かな」
数日を過ごし、その間に私は孤児院の子供たちを先生の手伝いをするためという言葉で納得させて私の故郷ともいうべき村を旅立つことになった。腰にはホルスターと拳銃、そしてそれをカモフラージュするためのマチェットを同じように腰に提げる。あとは旅支度のリュックを背負い、マントを羽織れば恰好だけは旅人っぽい。
後は野となれ山となれ、経験を積めば真新しいこのマントもリュックも馴染んで・・・そのころには私の旅にもある程度の成果が出ていればと思う。
大きな鍋は子供たちの食事を一度に作る上で非常に便利な物で必然的に使用頻度も高く使い慣れた物だったのだがもはや無事なのは下準備に使う器具だけだ。
「鍋無しで料理はできないからなぁ・・・仕方ない」
そう思い、フライパンを取り出そうとした私の隣にいつの間にか先生が立っていた。相変わらずこの人は動きが読めない。ヨーガで体内の魔力や気、血流すらコントロールできる私は自然と自分以外の気や魔力の流れを察知できるようになったがそれでも先生のそれは異質すぎて把握できない。
「壊れたのなら直しましょうか」
砂になった鍋に手をかざすと先生は瞬く間に鍋を再生した。まるで時間の巻き戻しのようだったがデザインが異なった鍋になっているので再錬成なのだろう。最初は無地だったのがなぜか蔓草の模様が入っている。
「さて、これで夕食の準備は可能でしょうか」
「相変わらず馬鹿げたレベルの錬金術ですね」
破壊された鍋は恐らくではあるが普通の鉄ではなくなっていた。なぜなら私がそれを『鉄』として扱おうとしても無理だったからだ。本当ならそれを鉄に戻してから再構築を行うという手順を踏まないといけないのだが先生はそれを当たり前の様に同時進行している。
「お誉めに預り光栄ですよ、ですがこれくらいは貴女も直に出来るようになります」
容易く言うがそれがそうではない事は言うまでもない。確かに鉛を金に変えるとかそう言うのは可能だ。だがそれが素早くかつ同時進行で、さらには大量に行えるのは彼しかいない。その気になれば土の魔法で隆起させた岩を鉄や他の金属にしてしまうのだからたまったものではない。
「とりあえず今日はこの残った野菜・・・ジャガイモの皮で何か作ってみます」
厚めに剥かれてしまった皮にはジャガイモがまだ沢山ついている。これをパリッと焼いてしまえばいくらでも食べられるだろう。細かく切ろうと思ったら逆に難しいレベルの絶妙な厚さなのでむしろ手間は少ないかもしれない。
「リーシュ」
下準備を始める私に先生は徐に言う。
「なんです?」
「君はこれから君の幸せの為に行く、それは間違いないね?」
唐突な質問に私は思わず手を止めた。どういうことだろう。
「どうしたんですか?」
「君の、将来の話さ。普段は他の人の目があるからね」
そう言うと先生はシンクに寄り掛かって私を見降ろした。久しぶりの有無を言わせない雰囲気に私は思わず息を飲む。
「・・・その」
「もし、貴女が私やシヴァの言葉を妄信して動くつもりならば・・・それは許可できない」
言葉の途中で先生はいつになく厳しい言葉で私に言う。そしてその後で私に諭すようにつづけた。
「私には貴女を此処まで育てた責任がある。それは貴女が真っ当に生きるように諭す事であったり幸せを願う事であったり・・・ね」
「先生・・・」
「例え世界が滅ぶような事をしでかしてしまうとして・・・それが何だと言うのですか」
そう言うと先生は珍しく不敵な笑みで私を見つめる。
「貴女を作ったのは私だ、貴女が私を超えないかぎりそんなことはできっこないのだから」
「むぅ」
「ははは、珍しく怒りましたね」
確かに未熟、確かにそうだけど・・・なんだか釈然としない。
「難しく考えてはいけない、貴女はまず自分の幸せを考えるべきなのですよ」
「難しく・・・?」
「そう、間違っていたら私がまた教えてあげましょう。なので気ままに、それでいて自分の正しいと信じる道を歩みなさい。そうしている内に自ずと答えはでる」
そう言われて、我ながら単純だとは思うが無尽の荒野に一筋の道が開かれたような気分だった。自分が世界を滅ぼすなんてと思っていたがそれは私がそれまで望み続けていたからなのだ。今、この瞬間に限っては私はそんなこと望まないしこれからもそうならないように過ごしていけばいい。何せ今は離れたくないと思ってくれる子達もいれば無事此処に戻ってきたいと思える人もいる。帰る場所があるのだ。
「そう・・・ですね」
私は決意した。かつて抱いた妄執を振りまわされる事なく自身の幸福を願う事。私は夕食作りを再開しながら笑みを浮かべて厨房を出ていく先生を横目で見送った。
「さてと、旅の用意はこれで大体大丈夫かな」
数日を過ごし、その間に私は孤児院の子供たちを先生の手伝いをするためという言葉で納得させて私の故郷ともいうべき村を旅立つことになった。腰にはホルスターと拳銃、そしてそれをカモフラージュするためのマチェットを同じように腰に提げる。あとは旅支度のリュックを背負い、マントを羽織れば恰好だけは旅人っぽい。
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