ノーライフ・ガールは博士の最高傑作

ファウスト

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旅立ちの日に

きな臭くなってきました。

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フェルグスとクルツが話し合っていた丁度その時に鎧姿の騎士が数名入ってきた。どうやらおおよその準備が整ったようだ。

「これより大規模な討伐に際して冒険者諸君の武勇を見せる機会が巡ってきた、我らと共に戦いたいものはギルドに名乗り出るように!」

これは大変な名誉である!と彼らはひとしきり叫んだあと踵を返してずかずかと歩き去ってしまった。いかにも貴族やそこらへんの出身らしい物言いにギルドはもちろん冒険者の人々も思わず眉をひそめ、中には舌打ちまでしたのにである。この図太さは一体どういう理屈なのかと不思議なほど。

「アホくせぇ、元よりアンデッドにビビってた手前らの責任だろうに・・・何が名誉だ」

名誉だとかお給金が元から保障されている彼らと違い冒険者にとって貴族が気まぐれに与える名誉なんぞには毛ほども興味がなかった上に彼らは具体的な報酬なども提示しなかったため食いつきはもちろん悪い。ましてや彼らがこんな事を言い出したのは教会が動き出したからであり、それまでは市民の嘆願などを歯牙にもかけなかったのにである。

「貴族の誇りなんぞで飯が食えるかってんだ。俺たちをバカにしやがって」
「ギルドを通して・・・なんて言ってたが見ろよ、ぜってぇギルドは何も聞かされてねえぞ」

職員たちが慌てふためいているのを見て冒険者たちは隠す事もなく大きなため息を吐いた。教会は貴族達にも大きなかかわりがある為ご機嫌伺いや連絡の徹底はされるものの少し立場が違う冒険者ギルドには時折ああいった無体を旗らく貴族もいる。まぁ、そういった場合どうなるかはこういう緊急時に表面化するわけだが。

「あーあ、アホくせぇ・・・騎士団が動くなら山賊討伐も直だろ?もうしばらく休業しようぜ」
「そうだな、そう言えば入門審査の列整理でクエスト出てたろ?そっち行こうぜ」

同じ騎士団でも人の出入りを審査するところや町の治安維持などといった下っ端の組織は貴族中心の騎士団よりも冒険者よりに重心を取っているため公平であり、たたき上げのため貴族などの特権階級も少ない。それ故に市民に根差した勤務が多く、冒険者たちにも真摯に接してくれる人が多かった。彼らは常に額に汗し、支給された服を真っ黒に汚しながら働くので煤の騎士と呼ばれ、反対にエリートコースの特権階級は服を汚すことなく働き続ける為白の騎士と呼ばれるのだが・・・どちらが市民に愛されるかは言うまでもなく、市民はそう言った特権階級に皮肉を込めて彼らを『白の騎士』と呼ぶのだ。

「あそことアレでどうしてここまで違うのか・・・」
「言ってやるな、高い所は空気が薄いんだろうぜ」

騎士はもちろん一般の市民よりも位階が高く、日本でいう所の侍的な扱いだがそれでも煤の騎士の称号を戴く騎士は仕事に従事する冒険者や市民を労い、白の騎士の称号を戴く騎士はそんな彼らを見下ろしては高圧的に接するのだ。
中には侮蔑を含んだ物言いを隠さないものも多い。
冒険者たちは不安がる市民たちを宥めるべく、そして煤の騎士達を助けるべくお小遣い同然のクエストを受注する。
どうせ酒場で管を巻くくらいなら小銭稼ぎでもして時間を潰そうか、と皆はのそのそと動き始める。
それと入れ替わるように早朝のクエストを終えた冒険者たちが戻ってきたが当然ながら誰も騎士団の討伐クエストには見向きもしなかった。まあ、ギルドも数名の騎士が勝手に宣った宣誓を真に受けてクエストを発注することなどできないので集まらないのも当然であったが。

「どこにでもバカはつきもんだが・・・ありゃなかなかレベルたけえよな」

フェルグスが呆れた様子で言うのをクルツもため息とともに肯定した。貴族だから発表すればついてくるなんて考え方は前時代的・・・と言うよりはただの傲慢だ。その土地の、しかもかなり領民に慕われている領主であればそれに関しても変わって来るかもだがあの騎士団のメンバーはこの土地とはそれほど所縁もなく、ただ派遣されたから来ているにすぎない。自分の領地があるから最悪この土地がダメになっても構わないのだ。そういう意図というか考えが透けて見えるところがあれば誰がそんな奴についていくというのか。

「そもそもだが、アイツ誰だよ?」
「私も知りません、山賊が増えて来たからって中央から派遣されてきただけの騎士達ですからね」

数か月前か、不意に山賊が王都の周囲でいなくなった。それが地方に散っただけだと気づいたのは手配書に書かれた山賊グループの拠点があちこちで蛻の殻になっていたからだ。その情報は山賊達によって浚われ、売り飛ばされるのを待つばかりの哀れな犠牲者たちが這う這うの体で近隣の村まで逃げて来たことから発覚した。
それと同時に地方に逃げ延びた山賊や盗賊たちが新天地を求めて地方を荒らし始めたことから騎士団は王命を受けて地方の騎士団へ増員を掛けた。しかしながら王都に勤めていた騎士達は貴族の子弟も多く、王命故に従うが基本的に左遷されたとかなんとか勘繰っては地方で横柄な態度をとるばかりだった。
それ故に賊の討伐は遅々として進まなかったが騎士団が増えただけでもそれなりに被害は減ったので国王のイライラも今はやや沈静化している状態だ。
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