ノーライフ・ガールは博士の最高傑作

ファウスト

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旅立ちの日に

困ったもんだ

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結局冒険者の利益と生命を守るというギルドの規定に腹を立てた騎士と受付のお嬢さんが口論になってしまった。

「ですから!正式な依頼もないままでクエストを発行することはできないんです!それともこちらの言い値を用意してくださるんですね?」
「言い値だと!吹っ掛けるのも大概にするのだな!平民が偉そうにしよって!」
「ならば騎士団からいくらで冒険者の方々をどれくらい、そしてどのような能力の方が必要なのか掛け合ってください!」
「話にならん!失礼させてもらう!」

ギルドの受付のお嬢さんは間違った事は言っていないはずなのだが・・・どうにも話が噛み合わないわね。
関わりたくないのでリッキーと共に手近な椅子に座ってぼーっとしていた。

「ふん!・・・ん?」

おいおいよ、なんでこっちみるのさ。慌てて視線を逸らすも騎士さんがなんかいやーな笑みで私を見ている。心なしかリッキーも一緒に見てる気がする。

「おい、そこのお前たち・・・冒険者か?」

一回目はシカト。リッキーが反応しそうだったので被っていたフードを引っ張ってカバー。関わるとロクなことないんだから。

「聞いているのか?」
「・・・私に言ってるの?」
「そうだ、お前見たところ中々美しいではないか。どうだ?私のところで働かんか?」

すっごいドヤ顔で言われてるけどなんなのコイツ。着てる鎧なんかはそれなりに良さそうだけど肝心の中身がこれじゃあね。

「大きなお世話よ、間に合ってるから」
「遠慮せずとも、王都では私もそれなりの身分なのだ。お前を養うくらいは造作もない」
「ならその金であたらしい召使でもさがしなさいな、私は間に合ってるっていってんでしょ」

肘をついてあからさまに嫌そうな顔をしてみる。貴族だかなんだかしらないけど、私は嫌いなのよね。しかもさ、なんで男って私の胸ばっかりみるわけ?魂胆が見え見えなのよ。

「給金は弾むぞ?」
「フン!他の男にも言ってるけどね、ビジネスの話なら相手の目を見ていってくれない?」

私は椅子を蹴飛ばすように立ち上がると騎士に吐き捨てるように言う。立ち上がると私の方が身長が高かったので自然と見下ろす格好になる。

「それと、チビが大物ぶってもチビのままよ?身の丈にあった振舞いをしたら?」
「ぬぐっ!」

みるみる真っ赤になったけど知るもんか。仕事に来た先で横柄に振舞う奴なんてどうせ仕事ぶりでも大したことないでしょうよ。

「貴様、王都においては騎士の小隊を預かるマエトラル子爵家の嫡子たる私に向かって!」
「前だか後ろだかしらないけどそんなにありがたい人ならさっさと山賊達を倒して王都に戻ってよ」

小隊を預かるにはそれなりに位階の高い人なんだろうけど、それこそ私が知ったことじゃない。さっさと仕事だけして帰ってよね。成果が出る前から休暇気分を出されたら私達はたまったもんじゃない。

「下郎がッ!」

さすがに言い過ぎたか、と思う暇もなく。突然彼が短剣を抜き、私の顔を切りつけて来た。

「ッ!」
「き、斬りやがった!」

周囲から悲鳴が上がる。言葉が悪かったとはいえ抵抗できない冒険者を切りつけるなんて!しかし顔は真っ赤のままだ、彼からすれば腰の長剣を抜かなかっただけ冷静なのだろうか?

「マエトラル子爵!いくらなんでもこの所業は看過できません!」

受付のお嬢さんが顔から血を流す私を見て真っ青な顔で駆け寄ると私と騎士の間に割って入った。

「平民の分際で騎士たる私を侮辱するからそうなるのだ!地に手をついて詫びるのが道理であろうが!」
「ならば何故先に斬ったのですか!しかも女性の顔を!」

実際はもうケガは塞がってるけどリッキーが涙目だし適当に誤魔化さないとね。

「ふぅ、つまりは騎士様は無礼な平民のいる冒険者なんかいらないってことでいいんでしょ?」
「なに?」
「まだ頭が冷えないの?無礼討ちなんてするような人の為に働く冒険者がいると思う?冒険者は身内に優しいんだよ?貴族様だからって王都以外で好き勝手出来ると思わない事だね」

血にまみれた顔のまま私は騎士に詰め寄る。受付のお嬢さんが真っ青な顔のまま睨みつけ、周囲の冒険者たちも怖い顔でこちらを見てるのに気づいたのか騎士は忌々しそうに舌打ちをした。

「ふ、フン!貴様らのような下賤な者には我らの崇高な理念が理解できんらしい!」

冷え切った場の空気が分かったのか分からないのか、騎士様は逃げるように立ち去った。

「協力を仰ぐにしては居丈高が過ぎたわね、あれで簡単にキレるようじゃ普段から私達をどう思っているか白状したようなもんだわ」
「そ、そんなことより早く傷の手当を!」
「あ、それならお気になさらず」

もったいないけど私はポーチに入っている布とゴウリ村で作ってきたポーションを取り出して布に染み込ませると血を拭きとりながら傷に当てる。

「すると・・・どうかな?」
「き、傷が消えた?!」
「うーん、なかなかいい塩梅ってことね」

実際はもう消えてしまっているんだけどね。まあ、実際の効果に関してもアレくらいの切り傷なら一瞬で塞がる効果高いポーションだ。
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