41 / 100
旅立ちの日に
山小屋
しおりを挟む
グレイウルフは普通ならば中型犬くらいの大きさのはずであったが彼女に従うグレイウルフは全てが二回りほど大きく、毛の艶などもよかった。さらには僧侶達を見つめる瞳には理知的な輝きさえ含んでおりこちらの意図を理解するが如き動作に僧侶達は驚いた。
「この者たちは貴女の?」
「仲間」
老齢の僧侶が傷を押さえながらも尋ねると彼女はゆっくりと頷いた。
「私は彼らが何を言いたいのかよく分かる。話合いを繰り返していたら彼らが勝手に賢くなった」
「そうなのですか・・・」
驚きつつもよろけると傍によって支えてくれる。グレイウルフに僧侶がお礼を言うとグレイウルフは誇らしげに小さく鳴いた。
「到着、ここ・・・」
案内されたのは意外にも立派な山小屋だった。案内されるままに入ると暖炉もあり、薪も積まれていてすぐにでも火が起こせそう。それに燻製にされたであろう肉も積まれており、香ばしい臭いが漂っている。
「こんなところに山小屋があるとは・・・」
「とりあえず血を流してる人から暖炉の傍へ寝かせてあげて、体が冷えてるかも」
カチカチと火打石を鳴らして木屑で種火を起こすと慣れた手つきで暖炉に火を入れてくれる。薪だけと思っていたがどうやら炭があるらしく丁寧に組まれたそれはすぐに大きな火になって部屋の温度を上げてくれる。
「このお肉は食べられるから焼いてくれていい」
「ありがとうございます・・・」
お礼を言いながら僧侶達が頭を下げると彼女は返事代りに毛布を何枚か投げ渡した。
「逃げ遅れが居るかもしれないからさっきの場所に戻って様子をみてくる、貴方達はそこにいてね」
「わかりました・・・」
「皆が守ってくれるけど・・・外に出たら危ないから勝手に出ないでね」
窓の外を指さしたのにつられて僧侶達が視線を移すと窓の外では先ほどのグレイウルフ達が小屋を取り囲むように徘徊しているのが見える。
「わかりました、貴女もご無事で」
僧侶達に見送られ、彼女は小屋を後にする。
「彼女達は善人・・・供物向かない」
小屋を出て数分歩いた彼女はそう独り言をつぶやいた。それは降り始めた小雨にかき消されるような小さなものだったが影がそれに呼応するように長く、大きく伸びた。
『彼らは間違いなく善だ、捧げられても困る。それよりはやく仕留めた獲物を回収するぞ』
「わかった・・・」
影が返事に満足気にゆれると彼女は歩を速めた。そしてそのままのスピードで現場へと到着する。
『ははは、ここの山賊どもはアタリだな。どいつもこいつも真っ黒の下衆そのものだ』
「結構逃がしたけど・・・」
『後から追い詰めれば問題ない、奴らの匂いは獣の感覚を通して把握済みだ。僧侶共がケガで動けない間に山賊ども我々で独占するんだ』
「うん、でもどうして僧侶達を警戒するの?」
彼女は影に向かいそう尋ねる。
『僧侶どもは僅かながら神の力を受けている、奴らに葬儀を行われてしまうと我々が魂を回収できなくなるんだ』
「そうなんだ・・・」
『かといって僧侶どもを殺してしまうと奴らの魂が回収した魂に混ざってしまう、善は輝きだ。返り血のように奴らの善性は我々が集めた邪悪に降りかかり、清水に混ざった泥のように色を変えてしまうんだ』
「そっか・・・」
『それにお前だって関係ない善人を殺したくはないだろう?』
影の言葉に彼女は確かにと頷く。行動はどうあれ彼女は純粋だった。悪人を殺し、善人は逃がす。だから以前見つけた泥棒も逃がした。彼らの根底にある善性を影が嫌い、無差別に傷つけることを彼女が嫌ったのだ。
仕留めるのは邪悪でなければならない。
「今で・・・何人だっけ・・・」
『沢山集まったぞ、もうすぐだ・・・お前の母親も生き返る』
「うん・・・」
悍ましい形に影が伸びるとどういうわけか山賊達の死体の一部を光らせる。一様に心臓の位置だった。
『魂を取り出せ』
「うん・・・」
山賊の死体に彼女はナイフを突き立てると胸を切り開き、心臓を露わにさせる。
『よし・・・ハァァア・・・!』
影が息を吐くような、吸うような言い難い声を上げると心臓から淡い、それでもどす黒い光の玉が飛び出し影の口のように開いた穴へと吸い込まれていく。
『ふむ、次だ・・・って何してる』
「解体」
『いや、心臓さえ見えればいいんだけど』
バラバラにしてしまう。影はあきれた様子だったが彼女はまるで遺族がそう望んだか、または家族が彼らの被害にあったかのように執拗に山賊の遺体を損壊した。
「こいつらの死体が綺麗なままなのが気に入らないの・・・」
『アンデッドの声がそうさせるのか?』
「んーん、そこまでは聞こえない・・・ただ気に入らないの。それに野の獣たちが食べにくそうにするし」
結局軒並み解体してしまいかなりの時間がかかってしまった。実際に山賊達の逃走を許してしまったのもこの彼女のこだわりによるところが大きかった。
「この者たちは貴女の?」
「仲間」
老齢の僧侶が傷を押さえながらも尋ねると彼女はゆっくりと頷いた。
「私は彼らが何を言いたいのかよく分かる。話合いを繰り返していたら彼らが勝手に賢くなった」
「そうなのですか・・・」
驚きつつもよろけると傍によって支えてくれる。グレイウルフに僧侶がお礼を言うとグレイウルフは誇らしげに小さく鳴いた。
「到着、ここ・・・」
案内されたのは意外にも立派な山小屋だった。案内されるままに入ると暖炉もあり、薪も積まれていてすぐにでも火が起こせそう。それに燻製にされたであろう肉も積まれており、香ばしい臭いが漂っている。
「こんなところに山小屋があるとは・・・」
「とりあえず血を流してる人から暖炉の傍へ寝かせてあげて、体が冷えてるかも」
カチカチと火打石を鳴らして木屑で種火を起こすと慣れた手つきで暖炉に火を入れてくれる。薪だけと思っていたがどうやら炭があるらしく丁寧に組まれたそれはすぐに大きな火になって部屋の温度を上げてくれる。
「このお肉は食べられるから焼いてくれていい」
「ありがとうございます・・・」
お礼を言いながら僧侶達が頭を下げると彼女は返事代りに毛布を何枚か投げ渡した。
「逃げ遅れが居るかもしれないからさっきの場所に戻って様子をみてくる、貴方達はそこにいてね」
「わかりました・・・」
「皆が守ってくれるけど・・・外に出たら危ないから勝手に出ないでね」
窓の外を指さしたのにつられて僧侶達が視線を移すと窓の外では先ほどのグレイウルフ達が小屋を取り囲むように徘徊しているのが見える。
「わかりました、貴女もご無事で」
僧侶達に見送られ、彼女は小屋を後にする。
「彼女達は善人・・・供物向かない」
小屋を出て数分歩いた彼女はそう独り言をつぶやいた。それは降り始めた小雨にかき消されるような小さなものだったが影がそれに呼応するように長く、大きく伸びた。
『彼らは間違いなく善だ、捧げられても困る。それよりはやく仕留めた獲物を回収するぞ』
「わかった・・・」
影が返事に満足気にゆれると彼女は歩を速めた。そしてそのままのスピードで現場へと到着する。
『ははは、ここの山賊どもはアタリだな。どいつもこいつも真っ黒の下衆そのものだ』
「結構逃がしたけど・・・」
『後から追い詰めれば問題ない、奴らの匂いは獣の感覚を通して把握済みだ。僧侶共がケガで動けない間に山賊ども我々で独占するんだ』
「うん、でもどうして僧侶達を警戒するの?」
彼女は影に向かいそう尋ねる。
『僧侶どもは僅かながら神の力を受けている、奴らに葬儀を行われてしまうと我々が魂を回収できなくなるんだ』
「そうなんだ・・・」
『かといって僧侶どもを殺してしまうと奴らの魂が回収した魂に混ざってしまう、善は輝きだ。返り血のように奴らの善性は我々が集めた邪悪に降りかかり、清水に混ざった泥のように色を変えてしまうんだ』
「そっか・・・」
『それにお前だって関係ない善人を殺したくはないだろう?』
影の言葉に彼女は確かにと頷く。行動はどうあれ彼女は純粋だった。悪人を殺し、善人は逃がす。だから以前見つけた泥棒も逃がした。彼らの根底にある善性を影が嫌い、無差別に傷つけることを彼女が嫌ったのだ。
仕留めるのは邪悪でなければならない。
「今で・・・何人だっけ・・・」
『沢山集まったぞ、もうすぐだ・・・お前の母親も生き返る』
「うん・・・」
悍ましい形に影が伸びるとどういうわけか山賊達の死体の一部を光らせる。一様に心臓の位置だった。
『魂を取り出せ』
「うん・・・」
山賊の死体に彼女はナイフを突き立てると胸を切り開き、心臓を露わにさせる。
『よし・・・ハァァア・・・!』
影が息を吐くような、吸うような言い難い声を上げると心臓から淡い、それでもどす黒い光の玉が飛び出し影の口のように開いた穴へと吸い込まれていく。
『ふむ、次だ・・・って何してる』
「解体」
『いや、心臓さえ見えればいいんだけど』
バラバラにしてしまう。影はあきれた様子だったが彼女はまるで遺族がそう望んだか、または家族が彼らの被害にあったかのように執拗に山賊の遺体を損壊した。
「こいつらの死体が綺麗なままなのが気に入らないの・・・」
『アンデッドの声がそうさせるのか?』
「んーん、そこまでは聞こえない・・・ただ気に入らないの。それに野の獣たちが食べにくそうにするし」
結局軒並み解体してしまいかなりの時間がかかってしまった。実際に山賊達の逃走を許してしまったのもこの彼女のこだわりによるところが大きかった。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
RIGHT MEMORIZE 〜僕らを轢いてくソラ
neonevi
ファンタジー
運命に連れられるのはいつも望まない場所で、僕たちに解るのは引力みたいな君との今だけ。
そんな風に引き寄せ合う者達が、世界の波に翻弄されながらも抗い生きる物語。
※この作品は小説家になろうにも掲載されています
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる