ノーライフ・ガールは博士の最高傑作

ファウスト

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旅立ちの日に

ツテがあると心強いよねー

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バレストーラ辺境伯、通称『鬼のバレストーラ』。騎士団の内外に響くと言われるその武威は凄まじく、それよりもさらに有名なのが騎士団の鍛錬を一手に引き受けるかの御仁の厳しさである。

「そんなえらい人と親交があったんだね」
「実は鉱山の関係でお世話したことがあるのがそのバレストーラ辺境伯なんだよ、そんでもってその時の縁で資金援助をしてもらったりしてたんだ」

フェルグスおじさんがお世話になっている貴族様というのがその辺境伯らしい。自分の領地はこの国の端っこ、この町から王都を挟んで向こうにある大きな山脈『アンパラチア大山脈』の麓を含む非常に広大な領地を有するこの国有数の大貴族であり、軍人である。

「実はリッキーの名付け親でもあってな?リチャードって本当は言うんだが大仰でなぁ、俺もカミさんもリッキーってずっと呼んでる」
「へー、すごいじゃんリッキー」
「そうなの?でもリッキーの方が好きだなぁ・・・僕は」

かなり砕けた間柄のようだ。そうなると彼らの動揺がますますひどくなってくる。平民平民とさんざバカにした挙句自分達より遥かに位階の高い貴族の知り合いと来た。そうなるとこの騒動も一転してどちらが悪いかなんて話どころではなくなってしまう。失態を取り戻そうとしてさらに墓穴を掘った形になってしまったのだから。

「私も・・・リッキーの方がいいかも」

ジェイナがそう言ってほほ笑んだのでリッキーも笑う。和やかなムードになってきたので私達は騎士達を放置して門をくぐる事にした。咎めたければ咎めればいい。腕力でも、コネでも私達に敵わなくなった彼らなんぞもはや気にするまでもない。そもそも私を斬りつけた事をばらしたら今度こそ彼らは終了するでしょ、おじさんとジェイナがキレたらさすがに。

「さて、もう帰っていいぞアンタら」

おじさんが去り際にそう言ったので騎士達もとぼとぼと門をくぐり、やがて自分達が借りた屋敷へと戻っていった。
元は王都に家があるんだろうけど今回の失態で失脚する人も多そうだね。なんてったって戦果を挙げられないばかりか死人をだし、現地で揉めに揉めて僧侶さん達を見捨てて逃げた挙句手柄を横取りしようとしたんだから。

「さーて、嬢ちゃんの家族も増えた事だし今日は宴会だなー」
「そうだねえ、奮発してなんか作っちゃいますか」

お肉でも買おうかなと思っていると不意にジェイナが手を叩いた。

「お肉、沢山持ってるよ」
「お肉?どこに?」
「えっと・・・あの、なんだっけ」
『魔空間倉庫だ、リーシュ。彼女に俺が持たせたが彼女のは道具ではなく能力としてだ』
「魔空間倉庫?」
「そうそれ!ほら!」
「あ、こんなところで出したら困るからしまいなさい」

ジェイナはそう言うと何もない空間から木の葉に包んだ肉を取り出した。往来で出すものでもないので慌てて引っ込めさせる。この世界には見た目以上に入る鞄や箱が作られている。大きなものは利益を見込めないくらい経費が掛かるので量産はされていない。小さな容量のものでも大きな酒樽一つ分が小さな鞄になるなどかなりの物なので当然高額で取引されるのだが・・・どうやらジェイナの場合はジョンが能力として身に着けさせたようだ。
悪魔には空間を自在に操る者がいるらしい、先生の能力なんかもそれに当てはまるだろうし。

「とりあえず食材は大丈夫そうだから・・・おじさんの宿に行きましょう」

どれだけあるかはわからないが調味料の類はまだまだあったはずなので焼肉といこう。

「ギルドには顔ださないで大丈夫?」
「ああ、死体の検分があるからなぁ・・・それにこういった祝い事には僧侶のじーさんたちも呼ぶから少し後になるだろうぜ」

傷はもちろん僧侶のお爺さん達にはケガをしている人も多かった。とりあえず今日は休んで明日教会に顔を出してみよう、ケガの治療にはそれなりに心得があるし。

「さて、それじゃあ今日はお嬢ちゃんが家族に再会したこと、それに山賊の討伐の前祝だ。ささやかながら豪勢な食事といこうじゃねえか」

おじさんがそう言うと屋外用のでっかいグリルを持ってきてくれた。昔に宴会用につかったものだそうだ。
それをジェイナと二人で庭先に設置し、さらに取り出したお肉をおじさんが豪快にミンチにする。

「おじさんは何をしてるの?」
「これか、旅先で教わった料理でな・・・俺ができる数少ない料理なんだが肉をたくさん使うからな」

たしかにおじさんの膂力でミンチにしているせいなのか普通のミンチよりもなぜか量がすくない気がする。おじさんはそのミンチに細かく刻んだ野菜を練りこむと貴重品の卵を混ぜていく。

「わかった!タルタルステーキでしょ」
「残念、違うんだな」

ジェイナが言う。おそらくは生の肉を混ぜたものなんだろうけど鮮度の良し悪しが分からないのでそれはダメ。
おじさんもちっちっち、と人差し指を振りながらいう。おじさんはそのお肉を適当な大きさにすると油を塗って熱したグリルの上にどんどんと乗せていく。

「ハンバーガーステーキだったんだ」
「へー、この親父の『拳骨肉』ってそんな名前なのか」
「なにその名前」
「親父が作るこれの量が一つだいたい親父の拳一個分だから『拳骨肉』っていってる」

言われてみると確かにおじさんの拳骨くらいのかなりボリュームのあるお肉だ。
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