ノーライフ・ガールは博士の最高傑作

ファウスト

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次の町 モリッツ

渡りに馬車?ちょっと違うか。

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なんだか可哀想な感じの男性が目の前にいる。私がどうしようか少し考えているとフェルグスおじさんもそれに気づいたのかこちらに近づいて来た。

「誰だコイツ」
「えっと、そのう・・・モリッツに行きたいとお伺いしてて・・・」

しどろもどろな男性にフェルグスおじさんはなんとなーく胡散臭そうな目線を向ける。

「馬車はあるのか?」
「ええ・・・はい、その、あそこに」

指さした先にはそこそこ上等な馬車がある。荷馬車ではあるが幌付きで、車輪にも革が巻いてあり振動を軽減する板ばねまで仕込んである。

「見た目は地味だが・・・ありゃかなり手の込んだ馬車だな、どうしてまたそんな馬車引いてるあんちゃんが俺たちに声をかけるんだ?」
「えっと、その、あの・・・足元を見られまして・・・お困りの人同士なら助け合いということで・・・お安くひきうけてくださるかと・・・はぁ」

冒険者ギルドにでも依頼を持ち込めばと思ったがどうやら込み入った事情があるのか、知らないのか。
とにかくこの覇気のあまりになさすぎる男性にはフェルグスおじさんも不機嫌そうな面持ちだ。

「しゃきっとしろ!それでも男か!護衛なら冒険者ギルドなりなんなりあるだろ?」
「えっと・・・そのぅ・・・山賊騒ぎからモリッツに帰る事も出来ず・・・馬車を預けるお金はおろか宿に泊まる元手すら尽きまして・・・馬車で寝泊りしてるんです・・・」

そういうと男性は縮こまっていたからだをさらに小さくして呟くようにいった。なかなか聞き取りにくい大きさの声で、時折おじさんは聞き取れなかったのか耳に手を当てている。

「カネが尽きたから相乗り感覚でお安く雇われてくれってか」
「そうなりますかね・・・はぁ」

こちらまで憂鬱になりそうなため息におじさんのこめかみに青筋が浮かんでいる。おじさんはからっと豪快な感覚の持ち主なのでこういった人とは性格上絶対合わないだろう。しかしながら困った人を放っておけない質でもあるらしく・・・。

「わかった、そう言う事なら馬車の運賃代りに護衛を引き受けようじゃねえか・・・その代わり!」
「なんでしょうぅぅぅ・・・」
「次にため息つきやがったらぶっ飛ばすぞ!」

こうやって引き受けちゃうわけだね。そんなこんなで地面に絵を描いて遊んでいた二人を呼び戻して私達はモリッツ行きの馬車に乗り込むことになった。

「四人もいるんですねぇ・・・これなら安心かなぁ・・・ふ・・・ゴホン」

気が弱そうだが几帳面なところがあるのか癖になっているらしいため息を懸命に堪えている。悪い人じゃなさそうなんだけどどうにも優柔不断というか、すっきりしない物言いだ。

「ところでモリッツの商人ってえ触れ込みだがよ、なんの商人だ?」
「宝石とか、貴金属を少々・・・マックさんのギルドで事務員もやってますぅ」
「マックの知り合いかお前」

馬車に乗りながら進む道すがらおじさんが男性に世間話感覚で話しかけた。その時に帰ってきた返答におじさんが意外そうに声を上げると男性は驚いたようにおじさんを見る。

「ぼ、ボスの知り合いでしょうか?」
「マックとは同じパーティで冒険者やってたんだがフェルグスって名前に聞き覚えはねぇのか?」
「ああ・・・聞いた事があります、ボスがいつも言っていたリーダーのフェルグスさんは貴方だったんですねぇ」

ちょっとだけおどおどした感じが抜けて男性に微かに笑みが浮かんだ。元が暗い顔なだけに微々たる変化だがそれでもため息ばかりの状態よりも遥かにマシだ。

「私はオーガンともうします、一応苗字をもらっておりましてぇ・・・オーガン・トーガンと名乗らせていただいておりますう」

苗字をもらう、というのは貴族などの公的な立場の人から姓を名乗る権利を正式にもらったということだ。私のように自称で苗字を名乗るのとはワケが違う。まったくそうは見えないが何かしらの功績を上げてきた人ということだろう。

「オーガンさんがどうしてマックおじさんのもとで働いてるのさ?」
「それはですねえ、私が彼にギルドの運営をお願いしたからですぅ・・・」
「へえ・・・まてよ、そうなるとヤツがヤバイって漏らしてたのはそのギルドのことかよ!」

そう言うとおじさんは再び手紙を広げ、私もそれを隣から覗き込む。するとそこには。

『任せてもらった店が潰れそうだから助けてくれ!なるたけ早くな!』

そんな感じの内容が書かれていた。おじさんの友人らしく他に余計な文も、詳しい説明もなくそれだけ書かれていた。それだけで助けに行こうとするおじさんがどれだけお人よしなのかが測れそうなものだけどおじさんいわく元からこんな感じで、マックさんがヤバイと言えばホントにヤバい時なんだそうだ。

「あーあ、しかし俺の足がどうにかなってたから良かったものの・・・俺が動けなかったらどうするつもりだったんだろうなァ」

しみじみと何か思い出すような感じでおじさんはつぶやいた。
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