ノーライフ・ガールは博士の最高傑作

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モリッツへ

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おじさん達と世間話をしつつ団子を作っては袋に詰めていく。鮮度の関係はジェイナに頼めばどうにでもなるので沢山つくっておこう。ついでにお腹の薬も。胃腸を保護するのは旅では重要だ、なにせ体力を保つのに一番重要な要素の一つだからね。

「おっと・・・順番が回ってきました・・・少しおまちくださいね」

オーガンはそう言うと衛兵のおじさん達と話し始めた。そして銀貨を支払い・・・あれ、お金もってるじゃん。

「支払いが済みました、これで入れます」
「あのお金はどうしたの?」
「・・・最後のお金です、もうギルドに帰るまで逆さにふってもお金はありません・・・」
「私達の分もかかったんじゃないの?」
「山賊騒ぎがあってから・・・しばらく護衛分は差し引いてくださるそうで・・・」

隠し金・・・と思ったが哀愁漂う姿で萎れた財布を凝視するオーガンをみると嘘とは思えない悲壮感が漂っている。
つまり山賊騒ぎがなかったら私達が自腹を切るハメになっていたというわけだ。護衛を一応引き受けてるのに・・・。

「差し引きがなかったらどうするつもりだったんだよ!」
「一応・・・商品から値段分を身代わりにすることができます・・・」

後ろの箱を開くと中から金属製のネックレスなんかが数点入っている。これなら確かにそれなりに値打ちはありそうだ。

「まあ、過ぎたことは言ってもしょうがねえ・・・マックの状況によってはもっと面倒くさい事になるだろうしな」

冒険者としては一流のおじさん、商人のオーガン、そして医師・薬師の卵の私、そして私の弟子のリッキー、猟師としては一流のジェイナ。それなりの事はできそうだが果たして・・・。

「えっと・・・それではみなさん・・・モリッツへようこそ」

馬車に揺られる事三日、私達は件のモリッツへと到着した。門をくぐると私は少し驚いた。

「思ったより色んな建物が建ってるのね」
「基本は労働者の為の宿泊施設ですが・・・」

木材、そしてどうやら石材らしきものも運び込まれており大小様々な建物があり石造りの建物では鍛冶の音が聞こえてくる。そしてその往来を歩くのは屈強そうな職人やせわしなく動く商人たち。記帳を片手に指示を飛ばし、それに従って職人たちが荷物を馬車に積んだり降ろしたり、受け取った材料を自分達の工房へと運び込んだり。熱気と人が歩き回る土埃がすごい。

「これは大変ね、体の弱い人はすぐ病気になるんじゃない?」
「そうですね・・・ですからここらへんは・・・医師や薬師が重宝されていますね・・・」

肉体労働の職人さんは当然ながらケガもたくさんするだろう。ポーションの材料なんかは問屋にたくさんあるだろうけど肝心の処方する医師が居ないんじゃ全部が買った人たちの裁量にまかされてしまう。そうなると効かなかったり、逆効果だったりでそうなると今度は問屋そのものの信用にも関わってくるだろう。

「私にとっては前の町以上に稼ぎには困らなそうだけど・・・」
「マックは普通の冒険者だから薬関係は無関係だろうな」

なんて話をしつつ通りを進んでいくと剣と盾が書かれた看板が。

「あれって冒険者ギルドじゃないの?」
「ん?そうみてえだな、おいオーガン!ここじゃないのか?」

割と盛況らしく剣や盾、それにリュックを背負った人たちが出たり入ったりしている。あそこがそうなら何が問題なんだろう・・・と思ったら。

「違います、そこは最近できたギルドですね」
「なにっ、ギルドが二つあるのか?」
「そうなんです・・・ですから問題なんです」

二つあるうちの片方が盛況となればもう片方、つまりこちら側のギルドというと・・・。

「うわっ、人の気配がしねえ」
「閑古鳥が鳴きそう・・・」

少し離れた所に件のギルドが建っていた。先ほどのギルドと違いやや古い建物で大きさはそれなりだが人の出入りが殆どないのも手伝って不気味な雰囲気さえ漂っている。

「とりあえず私は裏に馬車を停めてきます・・・」

オーガンはそういうと私達を降ろして一人この古い建物の裏手へと馬車を進めていった。残された私達は仕方ないので寂れたギルドへと入る事に。

「ごめんください、だれかいますかー」

声をかけて中に入ってみるが・・・返事はない。ギルドの受付は4か所かあったが殆ど空席であり、酒場と一体化したホールは薄汚れており最近人が通った形跡が見当たらない。唯一埋まっている受付の席では獣人らしい耳をピンと伸ばした金髪の女性が寝息を立てているのみ。依頼が張り出されるクエストボードはまったく依頼がなく、ジェイナが面白がって突いたところ掲示板がはがれて落ちた。リッキーと二人でどうにか修繕しようとしているがおじさんに拳骨を落とされて二人は消沈した。

「思った以上に深刻ね」

とりあえず思いついた事を口にだしてみるとおじさんもリッキーも、ジェイナでさえも困った様子で周囲を見渡すのみだった。
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