ノーライフ・ガールは博士の最高傑作

ファウスト

文字の大きさ
90 / 100
次の町 モリッツ

酒場はにぎやか

しおりを挟む
三人でてくてくと歩いていく。昼間から切った張ったを続けていたので思ったより時間がかかっていたらしく大通りを歩く人の様相は仕事帰りらしい人たちに変わっていた。全員が汗や埃で汚れて黒ずんだ服や疲れたなーなんてこぼしながらある者は寝床へ、ある者は酒場を目指して歩いていく。大通りの面々は後者が圧倒的多数だ。

「そろそろ良い時間かしら?私達も樵の飲み屋へ行きましょう」
「もうじき夕暮れだもんね」

夕暮れほどでも無いがもうじきここら辺も薄暗くなるだろう。大通りの前には道を照らす為の魔道具が設置されており、そこに魔石をはめ込む仕事をしているらしい人たちがはしごを手に作業を始めようとしていた。

「結構整備されてるのね、向こうでもそんなになかったわよね?」
「そうだねぇ・・・最下級の魔石でもいいとはいっても魔道具の維持費が高いもんね」

淡い、それほど強くない光だがそれでも人の顔が認識できるくらいには明るいこの魔道具は高いところに設置することで魔力を遠くまで及ぼし、その分だけ魔力による反応の光で照らすと同時に魔力の照射でほんの少しだけ魔力の範囲内の生物の視力を増強することができるそうだ。効果の割りに結構簡単にできるのだが魔力は物を投げたのと同じ要領で地面に落ちて行ってしまうのでできるだけ高い場所に設置する必要がある。しかも魔道具自体は魔石や魔力の反応で常時発動してしまうため人が触らず、それでいて明るいうちは動力源となる魔石を取り外さなければ無駄に魔力を使ってしまう。なのでそれを管理する灯り守という職業があって魔道具に刻んである魔法陣の応急修理をしたり、今やっているように魔石の脱着や掃除なんかも行う。

「意外と技術が求められる職業だから結構高給なのよねあれ」

無論照明の魔道具もピンきりであり、高いものはシャンデリアのようにかなり凝ったデザインの中に魔方陣と魔石を嵌め込むスペースが作られており狭くメンテがしにくい。消えにくいように魔方陣を描かなければならないのでそこまでいくと彫金レベルらしい。

「へぇ、いろんな仕事があるんだねえ」

リッキーが感心したように言うとジェイナもそれに同意する。
ジェイナが手を目一杯伸ばしながらジャンプすれば届きそうだが・・・。

「ジェイナ、わかってると思うけど触っちゃダメよ?」
「わ、わかってるもん・・・」

そう言いつつちらちらと目算で届きそうかどうか考えているらしい彼女にキチンと釘を指しておく。

「地図の出発点に戻ってこれたわね」

少し歩くとギルドから出発点のお店まで戻ってこれた。よしよし、地図はちゃんと機能している。

「ここからなら言ってる間につけるかしら?」
「なんとなく人の流れもあるし大丈夫じゃない?混雑する前に行こうよ」

リッキーもそう言うので私達は人混みの波に紛れて樵の飲み屋へと向かう事に。



「お、来やがったな。ここだー!」

飲食店が軒を連ねる大通りでも有名らしいところを歩いているとおじさんが先に私達を見つけて声をかけてくれた。

「人混みの中なのによくわかったね?」
「お嬢ちゃん達は面でみてもタッパで見ても良ーく目立つからなぁ」

頭のてっぺんらへんで手を動かすおじさんを見てそう言われればそうかとも思う。そのままおじさんの方へ行くと知らないおじさんが隣に居るのに気づいて会釈しつつ相席する。

「この人は?」
「途中で知り合った。インチキギルドの被害者だよ」
「なるへそ、こっちは色々と手に入れて来たわ」

ジェイナに手に入れた羊皮紙を出すように頼むとコートの内ポケットから引っ張り出すようにして丸めた羊皮紙を取り出した。

「これ、非合法の人身売買の証拠」
「マジか・・・犯人は」
「ごめん、こうしちゃった」

親指で喉を斬る仕草をするとおじさんはため息をついた。

「そうされても仕方ねえとは言え、独断がすぎるぜ。ここの領主にも無断でやっちゃ色々と都合が悪い」
「領主は動いてくれるの?」
「知らないだけかもしれねえだろ?それに自分が治めてる土地で他所モンの俺たちがやるってのが不味いんだよ」

領主にとっちゃ領内の悪事はあくまで身内の恥だ。とおじさんは言う。建前の話なのだろうがまだるっこしい話である。

「証拠を掴めただけで十分だったんだぜ?始末したらそこに居なかった奴のしでかした事は分らず仕舞だしな」
「うーん・・・」
「そこんとこも含めて反省だな」
「むむむ・・・」

そう言われると何も言えない。うーくそー、一人じゃ掃除もできないくせにー。なんて内心悪態をついてみるも自分失敗がきえるわけじゃなし。ああもう、やっぱりああいう時は頭に血が上りやすくてダメだわ。

「はぁ・・・ごめんなさい。それで、どうするべき?私は実力行使以外は全然浮かばないからおじさんの力を借りるわ」
「さてな、領主に陳情できるだけの権利があればいいんだが・・・他所の一般人が約束もナシに会いに行っても門前払いは確実だろうしな」
「マックさんに頼むとか?」
「現実的なトコとなるとそれくらいしかないわな。その為にはもうちょいとあそこのギルドを盛り立てて存在感を増しとかにゃあ話にならん」

一応内外で公的な機関の一つであるギルドの職員としてのマックさんに陳情をお願いする事で一致する。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

RIGHT MEMORIZE 〜僕らを轢いてくソラ

neonevi
ファンタジー
運命に連れられるのはいつも望まない場所で、僕たちに解るのは引力みたいな君との今だけ。 そんな風に引き寄せ合う者達が、世界の波に翻弄されながらも抗い生きる物語。 ※この作品は小説家になろうにも掲載されています

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...