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僕と大地の女神様

才能がない?!

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『あり得ないわ・・・』

アシェート様は何度か繰り返し、そして僕の顔をじっと見つめる。

『あなたは英雄ガルスの次男、有名だし・・・そんな子を忘れるはずないのよ』

だとするなら、とアシェート様は言う。

『貴方の才能を奪った輩がいるとしか思えないわ』
「才能を奪う?」
『恐らくは貴方を自分の神子か依り代として利用するつもりだったのかもしれないわね』

アシェートは目の前の元少年を見つめる。
天と地の神の加護は別の神の加護と反発する。その為悪意ある神の介入を事前に防ぐ事ができる。だが神の御業も抜け道が幾つかあり、神や神に仇なす存在の介入によって加護を与える直前ならばそれを歪められてしまう事があるのだ。

(無作為にこのような事をするとは思えない・・・依り代にしろ、神に仇なす為の尖兵にするにしろ、加護を奪った対象に出会うには砂漠の砂粒に等しい一点を探しだすに等しいのだから)

天から与えられる加護、人に宿る前でなければ介入はできないし妨害した後に僧侶や天の使いの目を掻い潜るにはその赤子が何者かを確認する術はほぼない。しかも子供が産まれる直前の一瞬で介入し、神が誕生を祝福する僅かの間に逃げなければならない。
バレたらもちろん・・・ 

(地母神が塵も残らず消す・・・!)

悩む自分を見つめる元少年はどこか不安そうにしている。
この子にとっては自分がまたなんの取り柄もない存在に戻るかどうかの瀬戸際、そうでなくても神たる自分が深刻そうに考え込んでいるのだから当然か。

『とりあえず・・・貴方の授かった加護はそのままにしておくわね』
「いいんですか?」
『普通ならダメ・・・だけど今のままだとあなたは邪な神の悪意に無防備になってしまうから』

天が授ける才能には他の神がおいそれと介入できないようにする目的もある。神は神に対して大小差はあれど干渉することができ、信仰や領地を巡って争うこともある。その為地の女神と天の神にも敵が居ない訳では無い。
天地の二柱は権能が巨大過ぎるために直接敵対こそしないものの、危害を加える手段はそれなりにある。信仰の力を奪う事で神を弱体化させること、もしくは信徒に自身の加護を与え信徒そのものを一振りの刃として顕現した神に直接危害を加えさせること。
天の加護を得られなかった人間は僧侶や巫女ならば信仰の力と修行によって護られるがそうでない人間は邪な神によって如何様にも操られてしまうのだ。

『才能が奪われていた分の時間を取り戻すといいわ』

二柱の加護があればおいそれと手出しもされないだろうし。けどちょっと心配だから私からも何か渡しときましょうか。
それほど強いものは無理だけど

『そろそろ頃合いだし、今回はここまでにしておきましょう』

そう言って私はそっと人の子の額に口づけた。加護を乗せて。

「・・・」

あら、可愛い・・・照れてる。目に浮かぶようだわ、この子、小さな頃はきっと父や兄の袖を引いて歩いていたのでしょうね。

『安心してね、あなたは早死なんかしないから』
「はい!」

元気な返事に思わず笑ってしまった。





「?」

まるでお母さんと話しているような感覚になって、思わず背筋を伸ばして返事するとアシェート様は可笑しそうに笑う。

「な、何か変でしたか?!」
『うふふ、いいえ。ただ、可愛かっただけよ』

アシェート様は口元に手を添えながらクスクスと笑う。なんだか釈然としないなぁ。

「?あれ、なんだろう視界が・・・」
『もう朝が来るわ、お喋りはここまでね』

滲みだした視界に目を擦ってみるが変化がないどころかどんどんと酷くなってくる。アシェート様の姿だけがはっきりとしていたがやがて瞼が重くなり、またふわふわした感覚が戻ってきた。

『また会いましょう、縁は結ばれたから』

意識を失う直後にそう聞こえた気がした。
















「・・・朝?」

気がつくとベッドの上だった。なんだか不思議な夢を見たような?

ゆさっ

「少なくともこっちは夢じゃない・・・」

でも、だからこそこれからは僕にも剣士としての可能性があるはずだ。決意を新たにベッドから立ち上がると

ぐぅ。とお腹がなった。

「うぅ、そういえば昨日の晩から何も食べてないんだった」

昨日の夕方に父の言葉を聞いて家を飛び出したからなぁ。そこからなんの連絡もせずに帰ったし怒られるよね・・・。
気が重いなぁ。

「誰もいないかな・・・」

こっそりと部屋を出て一人食堂を目指す。誰にも会いませんように・・・。まだ薄暗いし大丈夫かな。
食堂に入り、  周囲を見渡してみると食卓に布が被せられたお皿が置いてあった。

「これ・・・僕のか」

置いてあったフォークには僕のイニシャルが書かれている。いつも食器は父が用意してくれた物をいつも使っているのですぐにわかった。

「父さん・・・」

英雄ガルスの子、剣の申し子リゲルの弟。
そんな父にも、兄にも似ない。才能のない出来損ない。

ヨナ・フォルキン。

僕の名前。
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