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僕と大地の女神様

夢の中で

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声がする。夢の中のことだ。

水の中を漂うような感覚の中でありながら息苦しさも冷たさもない。魚でも海藻でもない自分が水の中で冷たさや苦しさを感じないハズがないからだ。

「ここはどこだろう」  

夢の中ならもっと楽しい事を想像してもいいのに辺りは海の底のように薄暗くて重苦しい。
そう考えていた時、不意に周囲の温度が変わった。

「?」

お湯の中のような、暖かい感触。そして掬い上げられる感覚とともに視界が開けた。


『大地の揺りかごへようこそ、人の子』

僕の体を掬い上げたのは巨大な手だった。前後左右を見渡して指の形を認めることができてようやくわかるくらいの大きさの手だ。

「大地・・・もしかしてアシェート様・・・?」

神話では空を支えるとも言われるその姿ならこの大きさも納得だ。

『ふふ、ご名答』
「わっ?!」

脇の下に手を入れて持ち上げられる。いつの間にか現れた女性が
まるで子供にするように僕を持ち上げて微笑んでいた。

『此処へ呼ばれた理由はわかる?』

なんのことかわからない。トール様と関係があるのだろうか?
正直に答えるべきなんだろうか?

「えっと、あの・・・」
『嘘、つかないでね?』

情報量に戸惑っているとアシェート様の瞳が僕を捉えた。
その瞬間、まるで空が覆い被さったような圧が僕にかかる。声が出ない、息ができない、体がぴくりとも動かない。

「えあ、あぁぁ・・・」

まるで宝石のように無機質な瞳、そこには恐怖に震える僕の姿が映っている。死ぬ、どうなるかはわからないが、このまま死ぬ。そう観念して視界が滲み出した時に漸く圧が消えた。

『ごめんなさい、怖がらせてしまったわね。人の子と話すのは久しぶりだから』
「ひっ、う、あぁぁ」

抱き締められていると気付くのに結構時間がかかった。圧力が消えた瞬間に泣き出してしまい落ち着くのにも。
死を感じた。はっきりと、その感触に包まれたのだ。

『あぁ、本当にごめんなさいね。私の子達はこうしないと皆反省しない子ばかりだから・・・』
「ひっく、う・・・ぐすっ」
『ごめんなさい、これではなんのために呼び出したのかわからないわね』

掌の上に僕を下ろし、アシェート様は申し訳なさそうに眉尻を下げた。その間になんとか気持ちを整えて、どうにか震える足と嗚咽を堪える。

「トール様、に・・・加護を、いただきました」
『雷の息吹はそこね、体の変化は?』
「ウェヌス様・・・って、トール様が」
『困った子、あの二人は本当に・・・』

なんとか体験したことを話すとアシェート様は頭痛を堪えるように額に手を当て、ため息をついた。

『昔からトールは戦士に、ウェヌスは坊やのような人の子に甘かったわ・・・徒に加護を与えては戦士や佳人を苛烈な運命に導いて・・・』
「加護をもらうのに何故ですか?」
『天が与える才能はその人の運命を決める重要なもの、それに抗って自ら切り開く事ができる人は一握り・・・大抵はその才能が呼び込む運命に翻弄されるものなのよ』

一般人には一般人の才能が、それは退屈なようで穏やかで健やかなせせらぎにも似た運命。対する天が与えた英雄の才能は刺激的で魅力的な反面、破滅と退廃が常に寄り添う茨の道。

『持って生まれた才能を元に人は育つわ、例外もたくさんあるけどそれは周囲の才能が影響を及ぼした結果であったり・・・でもそれは人としての生き方なの』
「どう違うのですか?」
『戦いの才能は戦いを、行き過ぎた美はこれもまた争いを産むわ、戦乱の世ならば英雄になるかも。でも今は戦乱どころか武の神と対になれるような英傑すらあなたの国にはいないのよ』

あまりにも不釣り合いなものを手に入れてしまった。そうアシェート様は言っている。でも、それでも

『そして、神から後天的に与えられた才能はあなたの元々の才能と反発する。親から子に受け継がれる一部の例外を除いてね』

そんな僕の思考を遮るようにアシェート様は続けた。

『あなたの家族の僧侶から聞いたでしょう?強く神の加護を受けた者は早死にする・・・それは才能があなたの中で反発するから。反発した才能は命を蝕むの。あなたは特に才能を親からも受け継いでいるから・・・』

そう言いかけたところでアシェート様は目を瞬かせた。そして怪訝そうに僕の顔をまじまじと見つめる。

『へ、変ね・・・あなたにも才能が、あら、あらあら?』
「?」
『な、ないわ・・・そんなはずは・・・』

口元を押さえてアシェート様は戸惑った様子で僕の頭に手を置いた。

『な、無い・・・まさかそんな・・・』
「何が無いんですか?」

手から動揺が伝わってくる。何が無いのか。なんとなく予想はついたが。

『どういうこと・・・私達が与えたはずの才能がない!』
「えっ」

てっきり剣や戦いに関する才能かと思いきや・・・。
アシェート様はあたふたしながら僕の顔をぺたぺたと触り続ける。











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