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プロローグ
暴れん坊主、カーソン
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左手一本で人間を軽々と釣り上げられるのは父さんの部下の中でもカーソンしかいない。それにこの武器も彼以外は滅多と使わない特殊なものだ。
「神殿での修行を終えてようやく帰ってこれましたぞ」
「おめでとう、これで正式に僧侶になったんだね」
カーソンはかつて僧を目指していたが荒くれ者だったらしく神殿を抜け出して傭兵として戦場を渡り歩いていた際に父に拾われて部下として働き、父が家督を継ぐまで護衛を引き受けていた。
家督を継ぎ、戦場に出る事が減った後カーソンは一念発起して再び僧侶になるための修行をしに古巣の神殿へ向かったのだ。
「そうですなぁ、しかしまぁ若も大きくなられて・・・」
年月が経つのは早いですな、と世間話をしつつカーソンは周囲を見回した。
「ところで・・・若は何時からおなごになられた?」
「うぅ、それは・・・説明しづらいんだけど」
神様に祈ってこうなったと白状するとカーソンは一瞬驚いた様子を見せたが両手で輪っかを作って覗くようにするとさらに驚いた。
「ややっ・・・な、なんと!まさしく神の気を感じまするぞ・・・」
「わかるの?」
「印を結びそこから覗けば修練を積んだ僧侶は人や物に宿る神の気配を覗く事が可能でござる・・・が」
「が?」
「子は産まれる時に天の神より才を受け、地の神から愛を受けて産まれるとされておりまする。その為に神から確実に恩恵を受けるため婚姻の儀式は必須とされておるのですな」
そこはご存知ですな?と確認が入る。父なる天の神と母なる地の神の伝承だ。子供は天からの贈り物と地からの祝福を受けて産まれるので子供は必ずなにかしらの才能を持っている、はずなのだ。
「それ故に、人は万能ではありませぬが同時に何かしらの役割を持っております。持ち合わせる才は天から与えられた一つのみ。ですが・・・」
「二つある?」
その言葉にカーソンは頷いた。トール様はウェヌス様が先に僕の所に来て何かしらの加護を与えたと言った。それからトール様は・・・。
「才を持ちすぎる人は早世の気があるといいます、いくら若が神から直々に賜ったとは言えそれはあまりに危険でござる」
「・・・そんな」
「例外としては神話にある『天地のいさかい』にある『才無しのグリップ』がありますが・・・実際にあったことかは解りませぬ」
『才無しのグリップ』とは神話に登場する人物で天の神が才能を授け忘れた事件だ。天の神オーデナが地の女神アシェートと子供の誕生を祝った時にオーデナが子供を見せに来た若い母親に目を奪われた為に手抜かりがあった。アシェートはその事をオーデナに告げに来た際に理由を聞いて激怒し壮絶な夫婦喧嘩が勃発した。最終的にはオーデナが大の字になり、アシェートに腹を踏ませた事で決着した。大地の力で踏みつけた為に大穴があき、そこは今は海を思わせる広さの泉となったとされる。
その後に『才無しのグリップ』は貰えなかった才能を得る為に冒険の旅に出て様々な神から才能を受け取ったと言う。物語の終わりには彼は『人にして万能に等しき人』と称され神話の一部として語り継がれているそうだ。
そんな中で人々は蝋燭を寿命、火を命に例える。火は才能や生き方によって激しく燃えて蝋燭をあっという間に溶かし尽くしてしまう。なので才能のありすぎる人はすぐ世を去ってしまうのだと。
「じゃあ僕は早死にしちゃうのか・・・」
せっかく才能をもらったのに・・・でも、僕はそれでもお父さんや兄さんに誇れる存在でありたい。
「若・・・」
「それでも僕は父さんの子なんだ、剣で身を立てたい」
そう言うとカーソンはため息をつき、眉間を押さえながら言った。
「仕方ありませんな、しかし某も黙って若が早世するのを許容するつもりはありませぬ」
「でもどうするの?」
「某の師匠に話して知恵を借りましょう」
旦那様にはこちらから上手く言っておきます。とカーソンは言う
。
「ありがとう」
「なに、当然の事でござる」
頭を派手にガリガリと掻いてカーソンは僕を部屋まで連れていってくれた。
「お腹すいたな・・・」
カーソンと別れて部屋に戻ってくると手早く着替えてベッドに横になった。今日は色んなことが起こりすぎて頭が混乱してる。
神様に出会って、女の子になって、カーソンが帰って来てて、もしかすると僕は長生きできないかもしれなくて・・・。
父さんは僕に期待してないかもしれなくて。
「とにかくもう寝ようっと・・・」
明日になればなにか思い付くかもしれない。そんなことを思いながら僕はシーツを被って目を閉じた。
その時の僕はまだなんにもわかってなかった。神様から力をもらうということ、そして僕自身におきている事を。
「神殿での修行を終えてようやく帰ってこれましたぞ」
「おめでとう、これで正式に僧侶になったんだね」
カーソンはかつて僧を目指していたが荒くれ者だったらしく神殿を抜け出して傭兵として戦場を渡り歩いていた際に父に拾われて部下として働き、父が家督を継ぐまで護衛を引き受けていた。
家督を継ぎ、戦場に出る事が減った後カーソンは一念発起して再び僧侶になるための修行をしに古巣の神殿へ向かったのだ。
「そうですなぁ、しかしまぁ若も大きくなられて・・・」
年月が経つのは早いですな、と世間話をしつつカーソンは周囲を見回した。
「ところで・・・若は何時からおなごになられた?」
「うぅ、それは・・・説明しづらいんだけど」
神様に祈ってこうなったと白状するとカーソンは一瞬驚いた様子を見せたが両手で輪っかを作って覗くようにするとさらに驚いた。
「ややっ・・・な、なんと!まさしく神の気を感じまするぞ・・・」
「わかるの?」
「印を結びそこから覗けば修練を積んだ僧侶は人や物に宿る神の気配を覗く事が可能でござる・・・が」
「が?」
「子は産まれる時に天の神より才を受け、地の神から愛を受けて産まれるとされておりまする。その為に神から確実に恩恵を受けるため婚姻の儀式は必須とされておるのですな」
そこはご存知ですな?と確認が入る。父なる天の神と母なる地の神の伝承だ。子供は天からの贈り物と地からの祝福を受けて産まれるので子供は必ずなにかしらの才能を持っている、はずなのだ。
「それ故に、人は万能ではありませぬが同時に何かしらの役割を持っております。持ち合わせる才は天から与えられた一つのみ。ですが・・・」
「二つある?」
その言葉にカーソンは頷いた。トール様はウェヌス様が先に僕の所に来て何かしらの加護を与えたと言った。それからトール様は・・・。
「才を持ちすぎる人は早世の気があるといいます、いくら若が神から直々に賜ったとは言えそれはあまりに危険でござる」
「・・・そんな」
「例外としては神話にある『天地のいさかい』にある『才無しのグリップ』がありますが・・・実際にあったことかは解りませぬ」
『才無しのグリップ』とは神話に登場する人物で天の神が才能を授け忘れた事件だ。天の神オーデナが地の女神アシェートと子供の誕生を祝った時にオーデナが子供を見せに来た若い母親に目を奪われた為に手抜かりがあった。アシェートはその事をオーデナに告げに来た際に理由を聞いて激怒し壮絶な夫婦喧嘩が勃発した。最終的にはオーデナが大の字になり、アシェートに腹を踏ませた事で決着した。大地の力で踏みつけた為に大穴があき、そこは今は海を思わせる広さの泉となったとされる。
その後に『才無しのグリップ』は貰えなかった才能を得る為に冒険の旅に出て様々な神から才能を受け取ったと言う。物語の終わりには彼は『人にして万能に等しき人』と称され神話の一部として語り継がれているそうだ。
そんな中で人々は蝋燭を寿命、火を命に例える。火は才能や生き方によって激しく燃えて蝋燭をあっという間に溶かし尽くしてしまう。なので才能のありすぎる人はすぐ世を去ってしまうのだと。
「じゃあ僕は早死にしちゃうのか・・・」
せっかく才能をもらったのに・・・でも、僕はそれでもお父さんや兄さんに誇れる存在でありたい。
「若・・・」
「それでも僕は父さんの子なんだ、剣で身を立てたい」
そう言うとカーソンはため息をつき、眉間を押さえながら言った。
「仕方ありませんな、しかし某も黙って若が早世するのを許容するつもりはありませぬ」
「でもどうするの?」
「某の師匠に話して知恵を借りましょう」
旦那様にはこちらから上手く言っておきます。とカーソンは言う
。
「ありがとう」
「なに、当然の事でござる」
頭を派手にガリガリと掻いてカーソンは僕を部屋まで連れていってくれた。
「お腹すいたな・・・」
カーソンと別れて部屋に戻ってくると手早く着替えてベッドに横になった。今日は色んなことが起こりすぎて頭が混乱してる。
神様に出会って、女の子になって、カーソンが帰って来てて、もしかすると僕は長生きできないかもしれなくて・・・。
父さんは僕に期待してないかもしれなくて。
「とにかくもう寝ようっと・・・」
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その時の僕はまだなんにもわかってなかった。神様から力をもらうということ、そして僕自身におきている事を。
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