異世界でドラゴニュートになってのんびり異世界満喫する!

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プロローグ

出発しんこー!

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意気揚々と出かけた私を見送ったドラゴン達は早速とばかりにあれこれと話し始めた。

『寿命が尽きるまでという条件を話してしまってよかったのか?』
『構わないだろう、重要な仕事である事は伝えておいたのだし何かあれば此方から催促すれば応じてくれるだろう』
『それもそうか・・・ところで・・・彼女が試練を突破出来なかった場合はどうするのだ?』

誰ともなく言った一言に一同は騒然となった。

『おおおお落ち着け、あれだけの力を与えれば大丈夫であろう!』
『しかし、この洞窟のモンスターには毒を使うタイプのモンスターもいるぞ・・・それに姫君は過酷な環境に慣れていないのでは?!』
『それなら大丈夫だ、我が大地の加護は如何なる場所でも快眠でき、傷もあっと言う間に回復する再生能力もある』

大地の属性が刻まれた石像のドラゴンは自慢げに己の得意分野の特性付与を行ったと言う。この特性は四肢の欠損などを自分の魔力や体力を代償に再構築するという物でさらにどこでも休息を取る事で人間はおろか生物を凌駕するスピードで体力と魔力を回復するチート能力。

『それは気が利く、我の与えた浄化による毒の無効化と合わされば触れるだけで毒は消え去り、泥水も清水に変わる。飢えと乾きに悩まされる心配もない』

水の属性が刻まれた石像のドラゴンは大地のドラゴンの言葉に感心しつつ自分の与えた特性付与について言う。浄化の力、汚泥の溜まった毒沼を清水の満ちた湖に変え、あらゆる毒と病の症状を消し去る脅威の浄化能力。水のドラゴンの住む場所は全てが清らかになり、魔物が寄り付かなくなるという。

『我の能力で灼熱の吐息を吐けるようにしたのも忘れてはイカンぞ、なんでも人間は火を通して食べるらしいからな。自前で火が起こせるとなにかと便利だろう』

火の属性の刻まれた石像のドラゴンは自信の得意分野である火を操る特性を付与したという。種火を起こすとかそういう感覚で語っているが彼の灼熱の吐息は鋼鉄を溶かす文字通り灼熱の温度である。

『我が風の特性が無駄になりかねんな。治癒と病気の快癒は道中必要になると思ったが・・・まぁ、我が風の特性ならば単体はもちろん火とも相性が良い、役に立つだろう』

風属性のドラゴンが使う風の治癒魔法はもちろんの事人間を遥かに凌駕した内容であり、四肢の欠損・皮膚の再生・死んだばかりなら死者の蘇生も可能というトンデモ性能だった。
さらに知らない内に風と火の合体魔法まで習得していた。炎すら燃やしつくし、豪雨の中でも消えない地獄の業火『フィアーストーム』である。

『皆抜かり無い様で安心したぞ。ドラゴニュートとなった今単純な能力値で姫君を倒せる者はおるまいが・・・』
『そなたは何も付与しなかったのか?』
『ふ、そなた等が必ずやってくれると信じていたからな』

ちょっと格好つけつつも雷の属性を刻まれた石像のドラゴンは皆が姫君と呼ぶ少女に施した加護の多さに若干呆れつつも事の重大さをちょっとだけ後悔しつつあった。

(元よりこれほどの加護を施してしまって良かったのだろうか・・・まあ、我も付与しちゃったけど)

雷の属性を刻んだ石像のドラゴン。彼が付与したのは落雷を操る能力と電流が走った場所を伝って高速移動できるという物。落雷はもちろん天災かと思うほどの威力であり、高速移動の類もチート級のシロモノであった。




そしてそんな彼らのチート性能をこれでもかと詰め込まれた私はというと。最初に出たところの部屋でドラゴン達のお使いミッションの最初の一つを手にしていた。

「お、これって炎の大剣かな。ラッキー!」

地図を片手に順調に洞窟を攻略していっていた。未踏の洞窟ならばともかく地図つきの場所なので迷う事無く進めるし、体も軽い。魔法とかがあったらなあとは思うけど使った事もないし、使えるのかすらわからない物をアテにしてもしょうがないのだ。

「とりあえずこれを・・・持ち上がるかな」

丁寧に台座に飾られている大剣を眺めて見る。刀身がうっすらと綺麗な銅色に輝いており高価そうな印象と同時に重厚感を感じる。長さは私の身長を少し上回るくらいの大きさでとてもじゃないが持ち上がらないのでは?という疑念を感じさせる。

「とりあえず持ち上げなきゃ・・・ねっ・・・うわっとと!」

柄に両手を添えて力いっぱい持ち上げようとすると予想外の軽さに大剣を持ったまま後ろに転げてしまった。まるで棒切れのような軽さだったけど・・・もてるようにしてくれてるのかな。
転げた拍子に剣が壁に大穴開けちゃったけどとりあえずお使いの用件の一つと武器が手に入ったので良しとする。

「次は・・・槍が近いのかな」

地図を見比べてみると風の槍が次に近い場所であった。そしてふと思ったんだけど普通は入り口から来るのでさっきの部屋は恐らく最深部なのだろうけど・・・そもそも私が最深部から出てきたんだからこれってヌルゲーじゃないかな?なんて事を考えつつ進んでいく。

「やっぱり入り口に送還されるとかしないとやっぱり簡単すぎないかな」

私は二つ目の部屋に差し掛かっていた。そしてそこに鎮座していた風の槍の前でそう呟いた。エメラルドのような宝石を嵌め込んだ柄から伸びる鋭い穂先が鈍く光っている。こちらも一目みて宝物と呼ぶにふさわしいなにか貫禄を持っていることが窺えるようだ。
二刀流してもいいかも知れないけどさすがに素人の付け焼刃じゃ危ないので槍をアイテム袋にしまう事にした。

「こうすると入るのかな?」

口を開けてアイテム袋の中へ槍を入れていくと吸い込まれるようにして槍が袋の中へ納まってしまった。おお、実際に見て見るとかなり凄いもんだね。しかしながら宝物そのものに驚く事はあってもそれを見つけられる喜びを感じることができない。なにせ歩けばすぐ見つかるんだし。
結局鎧も弓も直に見つかり、最後にあった大槌もあっけなく見つかってしまった。本当に私あそこからスタートしてよかったんだよね?

「ただいまー」
『なんと!何故これほどまでに早いのだ?!』
『うーむこれほどの速さは歴代の者でもトップではないか?』

全種類の武具を集めて帰ってきた私を石像のドラゴン達は戸惑ったような声色で出迎えてきた。

「あの、出てきたところがそのまま最深部だったんだけど・・・」
『『『『『えっ?』』』』』

私がそう言うと沈黙が辺りに響いた。どうやら彼らも私が最深部からスタートしたのは予想外だったようだ。どうりで簡単だったはずだ。けどもどうしたらいいのか・・・。

『ど、どうするのだ、加護の事ばかりで肝心な事を忘れていたぞ』
『しかし武具が揃ったら洞窟の外に出て神殿を巡らねば・・・』
『しかしこれでは実力が測れないではないか・・・経験も足りない』
『それでは別の試練を与えるしかなかろうが』
『仕方ない、ならば武具を使いこなせるように鍛錬を施すか』

ひそひそとなにやら話し始めた彼らに密かに嫌な予感を感じていた私はこそっと逃げ出そうかなとか考えていた。

が。


『『『『『これより、姫君を一人前に鍛えよう!』』』』』
「ふぇ?・・・きゃあああああ!」

一斉に告げられた一言により私はまたもや見えない何かに捕まり、何処かへの空間へと連れ去られていった。
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