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ガルデンヘイム王国王都で
賊徒の誤算
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「はぁ、ご馳走はまた後日食べられるからいいか・・・」
「ですがパレードが期日通りに開催できるかは難しいですぞ」
私が食べ損ねた料理に想いを馳せているとドアを閉めかけたオジさんが答える。
「えっ、どうして?」
「どうしてって・・・イベントは暗殺の危険も高まりますし・・・」
「えっ、じゃあ犯人が捕まるまでイベントなし?」
ご馳走とかもなし?
「毒をもられるやもしれませんし・・・」
「ごめん、ちょっと賊を捕まえてくる」
「えっ」
私は静かな怒りを湛えて王宮の窓から飛び立った。暗殺者、ゆるせん。
『居たぞ!』
『なんとしても捕まえるのだ!』
王宮をひっくり返したような騒ぎの中、一人の黒装束の男性が走っていた。
(しくじった・・・あの女は何者だ?)
そんな考えを追っ手の騎士を振り切りながら考える。気配を消し、歴戦の兵すら欺いた必殺の一撃を身を呈して防いだ彼女の姿が彼の心に強く残った。
(あの・・・美しい女は・・・)
即効性かつ凄まじいまでの苦痛を持って相手を死に追いやるはずの毒を懸命に耐え、あまつさえ相手を気遣う素振りさえ見せた彼女の姿に彼は思わず唇を噛んだ。
彼は暗殺を生業とする者であり、単独で任務を遂行する一匹狼の暗殺者であったが今回が初めての失敗であり、尚且つ姿を見られ、追っ手をかけられるという失態まで犯してしまっていた。
(なぜ、死を前にして微笑んでいたのだ・・・?)
「居たぞ!」
考え事が深くなっていたらしい。気付けば数人の騎士が自分を囲んでいる。
(素手では辛い相手・・・近衛騎士か)
彼とて徒手やナイフなどの格闘術を学んでいないわけではない。しかしそれを差し引いても彼に追い縋る騎士達の練度は高いものであった。なにより潜入と狙撃を狙ったため手元には殺傷力の低い小型の弓しかない。
「陛下のお命を狙った罪は重い、何より龍巫女様を傷つけた罪は重いぞ!」
騎士達は白刃を煌かせ憤怒を示す。隙間無く陣形を組んだ騎士達はまさに頑強な盾をイメージさせるもので、すり抜ける事も打ち破ることも困難を極めそうだ。
「龍巫女・・・?」
思わず呟いた。そんな奴見たことも聞いたことも無いが彼が傷つけた者とすればあの女性しかいない。歳若いがやけに美しかった。そんな彼女を彼らは龍巫女という。
「神妙に縛につけ!手向かうならば・・・斬る!」
そう言う騎士達だったが燃え滾るような戦意と敵意とを前に抵抗せずともこっ酷くやられるのは明白であった。じりじりと後ずさりつつこの場を切り抜ける為に彼は頭を働かせる。
「くっ・・・」
板で仕切られた壁を壊し、一目散に貧民街へと彼は転がり込む。騎士達はそれを見て怒りをさらに燃やして走りこんでくる。それを積み上げられたゴミやガラクタで足止めしつつも彼は奥へ奥へと進んでいく。その途中で彼は崩したガラクタの陰に滑り込む。
『くそっ!何処へ行った?』
『探せ!このままでは騎士団の名折れぞ!』
慌しい足音が彼から遠ざかっていく。荒い息を無理矢理押し殺していたため酷く消耗したが急場を凌ぐ事ができた。
「ゴホッ・・・なんとかなったか・・・」
「なにが?」
突然響いた声に驚いた彼が顔を向けた先には見間違うはずも無い、会場で国王を庇った少女だった。
「バカな・・・毒を・・・確かに」
「あの程度で私を殺せると思わないことだね」
「気配も・・・」
「騎士さん達が派手に動いてくれたから隠れるのは簡単だったんだよね」
会話を交わしつつ彼はすぐさまに立ち上がり逃げ出そうとしたがそれより早く動いた由香の右ストレートが彼の頬を打ち抜いた。ケーブシザークラブを粉砕したような威力ではなかったがガラクタと一緒くたになって転がった彼は殴られた勢いをそのまま壁に激突した。
「死んでないね、うん、手加減が出来るようになってきた」
「がっ・・・、何故、なぜ・・・お前ほどの使い手が表に出ないのだ・・・権威も栄光も思いのままなのに・・・」
素手でその道の訓練を受けた人間を殴り殺そうかという威力の拳打を放つ少女に彼は尋ねる。暗殺者としてはもちろん、普通に戦士としても一流となりえるだけの実力を持っていると彼の危機察知能力が告げているからだ。しかしそんな彼に帰ってきたのは素っ気無い言葉だった。
「栄光とか権威なんてどうでもいい、けど、貴方みたいなのがいると落ち着いてご飯が食べられないじゃない・・・おやすみー!」
「ご・・・ごはん・・・?」
右拳にふっと息を吹きかけたまま言う由香の言葉を聞きながら彼は二発目の右と同時に意識を手放した。
意外と皆空から監視されているとは思わないみたいで空を飛んでそれっぽい人を探すと直ぐに見つかった。私を狙った弓を手に騎士さんから逃げていたから間違いないだろう。
「ただいまー、賊を捕まえてきたよ」
「えっ」
「だから賊を捕まえてきた」
空を飛んで運び、途中から地面に降りて引き摺って門まで行くと騎士さんがひどく驚いていた。そういえば門から出て行ってなかったから当然か。王宮の中にいると思ってたんだよね。
「ごめんね、緊急事態だったから」
「いや、それは構いませんが・・・ソイツが陛下を狙ったという?」
「多分ね、街中を探し回ってる騎士さん達に伝令してもらえる?検分してもらう必要があるかも」
さて、これで厳戒態勢も解除されるだろう。こっそり王宮内へと戻った私はオジさんに賊が捕まった事をつげるべくお坊ちゃんの部屋へと戻ることに。
「ですがパレードが期日通りに開催できるかは難しいですぞ」
私が食べ損ねた料理に想いを馳せているとドアを閉めかけたオジさんが答える。
「えっ、どうして?」
「どうしてって・・・イベントは暗殺の危険も高まりますし・・・」
「えっ、じゃあ犯人が捕まるまでイベントなし?」
ご馳走とかもなし?
「毒をもられるやもしれませんし・・・」
「ごめん、ちょっと賊を捕まえてくる」
「えっ」
私は静かな怒りを湛えて王宮の窓から飛び立った。暗殺者、ゆるせん。
『居たぞ!』
『なんとしても捕まえるのだ!』
王宮をひっくり返したような騒ぎの中、一人の黒装束の男性が走っていた。
(しくじった・・・あの女は何者だ?)
そんな考えを追っ手の騎士を振り切りながら考える。気配を消し、歴戦の兵すら欺いた必殺の一撃を身を呈して防いだ彼女の姿が彼の心に強く残った。
(あの・・・美しい女は・・・)
即効性かつ凄まじいまでの苦痛を持って相手を死に追いやるはずの毒を懸命に耐え、あまつさえ相手を気遣う素振りさえ見せた彼女の姿に彼は思わず唇を噛んだ。
彼は暗殺を生業とする者であり、単独で任務を遂行する一匹狼の暗殺者であったが今回が初めての失敗であり、尚且つ姿を見られ、追っ手をかけられるという失態まで犯してしまっていた。
(なぜ、死を前にして微笑んでいたのだ・・・?)
「居たぞ!」
考え事が深くなっていたらしい。気付けば数人の騎士が自分を囲んでいる。
(素手では辛い相手・・・近衛騎士か)
彼とて徒手やナイフなどの格闘術を学んでいないわけではない。しかしそれを差し引いても彼に追い縋る騎士達の練度は高いものであった。なにより潜入と狙撃を狙ったため手元には殺傷力の低い小型の弓しかない。
「陛下のお命を狙った罪は重い、何より龍巫女様を傷つけた罪は重いぞ!」
騎士達は白刃を煌かせ憤怒を示す。隙間無く陣形を組んだ騎士達はまさに頑強な盾をイメージさせるもので、すり抜ける事も打ち破ることも困難を極めそうだ。
「龍巫女・・・?」
思わず呟いた。そんな奴見たことも聞いたことも無いが彼が傷つけた者とすればあの女性しかいない。歳若いがやけに美しかった。そんな彼女を彼らは龍巫女という。
「神妙に縛につけ!手向かうならば・・・斬る!」
そう言う騎士達だったが燃え滾るような戦意と敵意とを前に抵抗せずともこっ酷くやられるのは明白であった。じりじりと後ずさりつつこの場を切り抜ける為に彼は頭を働かせる。
「くっ・・・」
板で仕切られた壁を壊し、一目散に貧民街へと彼は転がり込む。騎士達はそれを見て怒りをさらに燃やして走りこんでくる。それを積み上げられたゴミやガラクタで足止めしつつも彼は奥へ奥へと進んでいく。その途中で彼は崩したガラクタの陰に滑り込む。
『くそっ!何処へ行った?』
『探せ!このままでは騎士団の名折れぞ!』
慌しい足音が彼から遠ざかっていく。荒い息を無理矢理押し殺していたため酷く消耗したが急場を凌ぐ事ができた。
「ゴホッ・・・なんとかなったか・・・」
「なにが?」
突然響いた声に驚いた彼が顔を向けた先には見間違うはずも無い、会場で国王を庇った少女だった。
「バカな・・・毒を・・・確かに」
「あの程度で私を殺せると思わないことだね」
「気配も・・・」
「騎士さん達が派手に動いてくれたから隠れるのは簡単だったんだよね」
会話を交わしつつ彼はすぐさまに立ち上がり逃げ出そうとしたがそれより早く動いた由香の右ストレートが彼の頬を打ち抜いた。ケーブシザークラブを粉砕したような威力ではなかったがガラクタと一緒くたになって転がった彼は殴られた勢いをそのまま壁に激突した。
「死んでないね、うん、手加減が出来るようになってきた」
「がっ・・・、何故、なぜ・・・お前ほどの使い手が表に出ないのだ・・・権威も栄光も思いのままなのに・・・」
素手でその道の訓練を受けた人間を殴り殺そうかという威力の拳打を放つ少女に彼は尋ねる。暗殺者としてはもちろん、普通に戦士としても一流となりえるだけの実力を持っていると彼の危機察知能力が告げているからだ。しかしそんな彼に帰ってきたのは素っ気無い言葉だった。
「栄光とか権威なんてどうでもいい、けど、貴方みたいなのがいると落ち着いてご飯が食べられないじゃない・・・おやすみー!」
「ご・・・ごはん・・・?」
右拳にふっと息を吹きかけたまま言う由香の言葉を聞きながら彼は二発目の右と同時に意識を手放した。
意外と皆空から監視されているとは思わないみたいで空を飛んでそれっぽい人を探すと直ぐに見つかった。私を狙った弓を手に騎士さんから逃げていたから間違いないだろう。
「ただいまー、賊を捕まえてきたよ」
「えっ」
「だから賊を捕まえてきた」
空を飛んで運び、途中から地面に降りて引き摺って門まで行くと騎士さんがひどく驚いていた。そういえば門から出て行ってなかったから当然か。王宮の中にいると思ってたんだよね。
「ごめんね、緊急事態だったから」
「いや、それは構いませんが・・・ソイツが陛下を狙ったという?」
「多分ね、街中を探し回ってる騎士さん達に伝令してもらえる?検分してもらう必要があるかも」
さて、これで厳戒態勢も解除されるだろう。こっそり王宮内へと戻った私はオジさんに賊が捕まった事をつげるべくお坊ちゃんの部屋へと戻ることに。
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