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ガルデンヘイム王国王都で
貴族って・・・面倒!
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「あーっ!」
「?・・・む」
「はしたないです」
ステーキが二枚目に突入した所で唐突に声が聞こえる。振り返ろうとして何処からとも無く現れたルーンちゃんに制されてしまう。しかし直ぐにその声の主がわかった。
「父上!スカサハ様と食べるならボクも呼んでくださいって言ったのに!」
ぶんすかと怒りながら現れたお坊ちゃんは私の隣に座る。メイドさんたちが慌てて用意を始める中膨れっ面のお坊ちゃんは不満そうに椅子に体を預ける。
「そういわないの、ご馳走様するまで待っててあげるから」
「そうですか?ならいいかなぁ」
そう言って頭をよしよしすると途端に機嫌が良くなり、笑顔を浮かべるお坊ちゃん。
「スカサハ殿よ、余り息子を甘やかしてくれるな」
「ふふ、古来から女性は甘やかし、男性が厳しくするものなのだよん」
「ぬぅ・・・そういう考え方もあるのか」
困った様子のお父さんがそう言うのでちょっと位は考えておこう。だがお坊ちゃんが可愛いので仕方ないのだ。そう思いつつ残ったステーキをほおばっていると、ふとお坊ちゃんの懐の手紙に目が向いた。
「それなに?」
「むぐ?」
「無くなってからでいいから」
「もぐもぐ・・・ごくん、お茶会のお誘いです」
お坊ちゃんは手紙を取り出してテーブルの上に置く。へー、貴族の嗜みって奴かな?お茶会って何するんだろうか。お茶飲んでのんきに世間話・・・なんて洒落込めれば世界は平和なんだろうけども。
「ん?この差出人どっかで見覚えが・・・」
差出人の名前はクリストフ・ロンベル公爵となっている。ロンベル?誰だっけ・・・思い出せない。頭の片隅に青い色がチラつくが全然覚えてないな。
「クリストフ・ロンベルといえばクロンスタット騎士団の重鎮だな。しかし近衛騎士隊と犬猿の仲のはずだが・・・」
「ボクも全然送られて来る理由が・・・」
お茶会に招くのは政治的な話もあるんだろうが、仲の良い人や派閥の人を招くのが普通だ。そんな中で敵側の重鎮を招くというのは普通ではありえないことだと言う。
「お茶会の内容とか書いてないの?」
「内容・・・あ、これ、封筒に二人組って書いてあります」
「なるほどな、目論見が読めたわ」
お茶会に招かれる人達の面子を見てお父さんはつまらなそうに鼻を鳴らした。
「仕事ばかりで王城から出ず、婚約者も居ない息子に唾をつけるつもりかと思えば・・・相手の居ない息子にペアで出席する事が前提の茶会になんぞ招くとは」
「なるへそ」
ようは独り者のお坊ちゃんを相手付きの息子達に応待させて、親御さん達がそれを見て笑っちゃおうという事か。陰湿だね。
「出席しないと失礼に当たります、ですが相手が・・・」
お坊ちゃんは困ったように頬に手を添えた。お茶会を欠席して良いのは危急の用件や公務があるときだけだ。お坊ちゃんには公務があるので理由がないわけでは無いが欠席がちのお坊ちゃんは只でさえ貴族達に顔が利かない。知名度が低い為、貴族達の評価がバラバラなのだとか。
クロンスタット騎士団みたいな奴らはともかく貴族達の中にも味方を作っておかないと面倒だ。
そうなると今回のお茶会で失態を犯せばお坊ちゃんは貴族達の中でさらに評価が低くなってしまう。真面目に物をやっているお坊ちゃんなだけに口先だけの連中には負けて欲しくないね。
「なんなら協力してあげようか?」
「いいんですか?」
「うん、なんかおもしろそうだし」
お茶会なんて何をするのかはわからないけど勉強すればいいじゃない。最悪は師匠から教わった魔法で・・・。
「物騒な事を考えてないか?」
「・・・まさか」
「お茶会は決闘や戦争とは違いますからね?」
「・・・わかってるって」
二人してなんて事をいうんだろう。私をなんだと・・・。ま、喧嘩明けだし気にしないでおこうっと。
「とりあえずペアの相手が居ないなら私がペアで組む、フォローはルーンちゃんと・・・だれか良い人見繕ってくれればいいんじゃない?」
「主命とあらば」
「そう言う事でしたら私めが参加いたしましょう」
そう言うと名乗り出たのはおじいさんの執事さんだった。モノクルをかけ、ピシッとした執事服に身を包んだ老人で目は開いているのかと思うほど細くいつも柔和な笑みを浮かべている。
「おじいちゃんは・・・何回か会ってるね」
王宮でも何度か出くわした記憶がある。ゆったりと、しかし無駄なく。そして目立つ事無く仕事をこなしている人。そんな印象だ。見た目は優しそうなおじいちゃんだが、身のこなしは時折武人を思わせるような無駄の無さを見せる。
「これは、やはり貴女様にはバレてしまいますか。お恥かしい」
「目を凝らして漸くって感じだよ」
殺意も何もない分余計に目立たなく感じる。背景と同化してるような感じで嫌味や遠慮させるヒマも何も与えず相手の要求に応えるように仕事をこなす熟練の職人だ。
「エルンスト、頼めるか?」
「お任せください、若様とスカサハ様をしっかりとおささえします」
お父さんの許可の下、執事さんがお茶会に同行してくれる事に。
「?・・・む」
「はしたないです」
ステーキが二枚目に突入した所で唐突に声が聞こえる。振り返ろうとして何処からとも無く現れたルーンちゃんに制されてしまう。しかし直ぐにその声の主がわかった。
「父上!スカサハ様と食べるならボクも呼んでくださいって言ったのに!」
ぶんすかと怒りながら現れたお坊ちゃんは私の隣に座る。メイドさんたちが慌てて用意を始める中膨れっ面のお坊ちゃんは不満そうに椅子に体を預ける。
「そういわないの、ご馳走様するまで待っててあげるから」
「そうですか?ならいいかなぁ」
そう言って頭をよしよしすると途端に機嫌が良くなり、笑顔を浮かべるお坊ちゃん。
「スカサハ殿よ、余り息子を甘やかしてくれるな」
「ふふ、古来から女性は甘やかし、男性が厳しくするものなのだよん」
「ぬぅ・・・そういう考え方もあるのか」
困った様子のお父さんがそう言うのでちょっと位は考えておこう。だがお坊ちゃんが可愛いので仕方ないのだ。そう思いつつ残ったステーキをほおばっていると、ふとお坊ちゃんの懐の手紙に目が向いた。
「それなに?」
「むぐ?」
「無くなってからでいいから」
「もぐもぐ・・・ごくん、お茶会のお誘いです」
お坊ちゃんは手紙を取り出してテーブルの上に置く。へー、貴族の嗜みって奴かな?お茶会って何するんだろうか。お茶飲んでのんきに世間話・・・なんて洒落込めれば世界は平和なんだろうけども。
「ん?この差出人どっかで見覚えが・・・」
差出人の名前はクリストフ・ロンベル公爵となっている。ロンベル?誰だっけ・・・思い出せない。頭の片隅に青い色がチラつくが全然覚えてないな。
「クリストフ・ロンベルといえばクロンスタット騎士団の重鎮だな。しかし近衛騎士隊と犬猿の仲のはずだが・・・」
「ボクも全然送られて来る理由が・・・」
お茶会に招くのは政治的な話もあるんだろうが、仲の良い人や派閥の人を招くのが普通だ。そんな中で敵側の重鎮を招くというのは普通ではありえないことだと言う。
「お茶会の内容とか書いてないの?」
「内容・・・あ、これ、封筒に二人組って書いてあります」
「なるほどな、目論見が読めたわ」
お茶会に招かれる人達の面子を見てお父さんはつまらなそうに鼻を鳴らした。
「仕事ばかりで王城から出ず、婚約者も居ない息子に唾をつけるつもりかと思えば・・・相手の居ない息子にペアで出席する事が前提の茶会になんぞ招くとは」
「なるへそ」
ようは独り者のお坊ちゃんを相手付きの息子達に応待させて、親御さん達がそれを見て笑っちゃおうという事か。陰湿だね。
「出席しないと失礼に当たります、ですが相手が・・・」
お坊ちゃんは困ったように頬に手を添えた。お茶会を欠席して良いのは危急の用件や公務があるときだけだ。お坊ちゃんには公務があるので理由がないわけでは無いが欠席がちのお坊ちゃんは只でさえ貴族達に顔が利かない。知名度が低い為、貴族達の評価がバラバラなのだとか。
クロンスタット騎士団みたいな奴らはともかく貴族達の中にも味方を作っておかないと面倒だ。
そうなると今回のお茶会で失態を犯せばお坊ちゃんは貴族達の中でさらに評価が低くなってしまう。真面目に物をやっているお坊ちゃんなだけに口先だけの連中には負けて欲しくないね。
「なんなら協力してあげようか?」
「いいんですか?」
「うん、なんかおもしろそうだし」
お茶会なんて何をするのかはわからないけど勉強すればいいじゃない。最悪は師匠から教わった魔法で・・・。
「物騒な事を考えてないか?」
「・・・まさか」
「お茶会は決闘や戦争とは違いますからね?」
「・・・わかってるって」
二人してなんて事をいうんだろう。私をなんだと・・・。ま、喧嘩明けだし気にしないでおこうっと。
「とりあえずペアの相手が居ないなら私がペアで組む、フォローはルーンちゃんと・・・だれか良い人見繕ってくれればいいんじゃない?」
「主命とあらば」
「そう言う事でしたら私めが参加いたしましょう」
そう言うと名乗り出たのはおじいさんの執事さんだった。モノクルをかけ、ピシッとした執事服に身を包んだ老人で目は開いているのかと思うほど細くいつも柔和な笑みを浮かべている。
「おじいちゃんは・・・何回か会ってるね」
王宮でも何度か出くわした記憶がある。ゆったりと、しかし無駄なく。そして目立つ事無く仕事をこなしている人。そんな印象だ。見た目は優しそうなおじいちゃんだが、身のこなしは時折武人を思わせるような無駄の無さを見せる。
「これは、やはり貴女様にはバレてしまいますか。お恥かしい」
「目を凝らして漸くって感じだよ」
殺意も何もない分余計に目立たなく感じる。背景と同化してるような感じで嫌味や遠慮させるヒマも何も与えず相手の要求に応えるように仕事をこなす熟練の職人だ。
「エルンスト、頼めるか?」
「お任せください、若様とスカサハ様をしっかりとおささえします」
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