異世界でドラゴニュートになってのんびり異世界満喫する!

ファウスト

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ガルデンヘイム王国王都で

パレードの裏で

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静寂に包まれた広間にはルーンがペンを走らせる音と、飛び散った鮮血が滴り落ちる音ばかりが響いていた。

「ふうむ・・・やはり大した事無いのう。裏家業の者共も人手不足か?」
「見た事の無い者ばかりでしたから契約者が金かコネが無かったか、それをケチったかのどちらかではありませんか?」
「剣を交えた者共をあまり悪し様に言うのは好きでは無いが・・・三下か」

がっかりした様子で剣に付いた血を払い、鞘に収める。剣を交えたとはいう物のその真実は一方的な虐殺であり、全員が一撃で左右か上下に泣き別れるという壮絶な最後であった。


「私としては貴方が凄すぎるだけだと思いますよ?」
「そうかな、ワシよりお前さんの主のほうが凄いではないか」
「神話に片足突っ込んでる我が主と人間を比べるのがそもそも間違いなのですよ」

そう言うとルーンはペンを置くと日記を閉じる。その出来栄えはそれなりに良かったのか彼女のチョーカーは淡く輝いている。

「しかし・・・貴方も歴代の王と比べてもなんら遜色ない経歴と実力の持ち主でしょうから比べたくなるのも無理はありません。現に、五龍様と主様の力を借りても私一人では貴方は手強い」
「ふむ?世界を司る神獣の加護を受けているとは思えない発言だな」

いぶかしむオットーにルーンは首を振って答える。

「極上の酒が注がれたとしても、器が小さければ溢れるばかりでその酒を満足に味わう事は叶いません。私の器はそんな程度しか無いのですよ」
「杯か、ならばお前さんの主の器はなんと例える?」

オットーの問いかけにルーンはしばらく考えた後に悩みながらも答える。

「そうですね・・・、例えるならば、海・・・でしょうか」
「海?あの、船で漕ぎ出す・・・あの海か?」
「はい、器と言うには余りに大きい。魔力を受け入れるという一点に置いては彼女ほどの器はありません・・・まさに底なしです」

そう言われてオットーは再度彼女の存在の稀有さを認識させられる。五龍の加護を受けると言う事は当たり前ながら五龍の加護を受け入れられるだけの容量があの体にあるという事に他ならないからだ。まさしく万物の母であり、認識を超えた巨大さの形容詞たる海という言葉に相応しい。

「旦那様、替えをお持ちしました」
「おお、すまんな」

余りのスケールの大きな話に頭が混乱しそうな自身の主を見かねてかエルンストが主人の替えの服とお茶の用意を持って現れる。遺骸に動じる事無く片付けるメイド達と共にてきぱきと汚れた広間を元通りにしていく姿はまさしく仕事人の鑑だろう。

「慣れたものですね」
「ああ、今日王宮にいるのは荒事に慣れた家中のものよ、それ以外の者達は皆パレードを見にいっとるよ」
「気配りは万全ですね」

服装こそメイドのそれだが全員が場数を踏んだ戦士のそれであり、中には帯剣している者までいる。こういう時に備えた準備が既にされているあたりに彼らの世界の厳しさを見せ付けられるようだ。

「なるほど、私が気をつけるまでもなかったと」
「今までで完全に掻い潜れたのはお前さんだけだったか」
「なんのことやら」

とぼけながら出された紅茶を楽しむ。今までの暮らしでは見る事さえ出来なかったであろう高級なカップとそこから香り立つ茶葉の香りを胸いっぱいに吸い込みながらルーンは自らの主がもたらした幸運に感謝する。

(主様が神獣の使いというならこの国王は英雄に相応しい豪傑だ。使いに導かれて覇道を為す覇王という役割がぴったり来るほどの。正直幾ら積まれたってこの男を再び狙うのは御免被る)

体ならばどこからでも良いと言う条件で尚且つ遠距離からの、そして自分の素性を完璧に誤魔化せるという前提条件が幾つも重なった上で漸く成功の算段をつけられた国王の暗殺という大仕事。
由香がいなければ成功していたかもしれないがこれがもし彼らと同じ方法を取っていたら?国王がいつも通りに警戒していたら?そう考えるとルーンは背筋に冷たい物を感じる。

(正直、魔法勝負なら今なら何とか。私単体では魔法ですら通じるか怪しい物だ)

「不思議なモノだ、彼女は一体何者なのだ」
「さあ?そればかりは私も解りません」

服を着替え、帷子の上からマントを羽織ると椅子に腰掛けて豪快に紅茶をがぶ飲みするオットー。作法もなにもあったものではなかったがルーンにそれを指摘できるほどの知識を持ち合わせていないので気にしない事にした。

「不思議といえばお前さんが張ったあの光の壁のそうだ。あれは障壁魔術とはちがうのか?エルンスト達だけを通すと言うのは魔術障壁ではできない事だろうが・・・」
「似て非なるものですね障壁は一枚の板、私が主様の加護を受けて使えるようになった魔術・・・結界と呼ばれる物は空間を区切る能力に近しいのです。言うなれば見えないドアを立てるようなものでしょうか」
「ほほぉ・・・そうなのか、ワシには土台無理な芸当だのう」
「そうですね、すべての精霊を支配する五龍様のお力を借りられるからこそ使えるのですよ。ですが私では初歩の初歩が限界ですが」

ルーンはそういいながら再び紅茶に口をつける。そして指をパチンと弾くと透明になっていた光の結界はガラスが砕けるように微塵に砕け、使用人たちが表情だけで僅かに驚いたようだった。
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