異世界でドラゴニュートになってのんびり異世界満喫する!

ファウスト

文字の大きさ
66 / 98
ガルデンヘイム王国王都で

嫌がらせか・・・?もう!

しおりを挟む
「なぁに?これ・・・」

パレードから数日、いつも通りに気分よくおぼっちゃんを抱き締めて眠り、そして目覚めてお父さんにからかわれながら美味しい食事を頂き、執事のお爺ちゃんにお茶の飲み方でも教えてもらおうと思っていたにも関わらず私は何故か修練場につれて来られていた。
そして目の前にはこんな物を着て歩ける人間がいるのか?と疑問を投げかけたくなるようなフルプレートの鎧・・・鎧というより鉄の塊が並べられていた。

「ようこそ、『ガルデンヘイムの戦乙女』殿」

そうわざとらしく、敬意の篭もっていない言葉で恭しく出迎えたのは青い服の・・・えっと、なんだっけ。青い服着た馬から落ちた人だ。

「御用向きは?」
「先日パレードでの華々しい姿をお見かけした際に、あのドレスを貴女が纏っていたと窺い、参上した次第でして」

ああ、あのドレスはとても価値のあるものだと聞いた事がある。なんせお父さんのお父さんである先代があのドレスの価値を損ねた事で大変な事になったとかなんとか。パレードが終わった後も会いたいという御仁が多くて困った物だ。

「我が方には貴女が本当にあのドレスを纏うに値するのか・・・少しばかり興味がありましてね」

周りには取り巻きらしい人々が疑うような、嘲る様な視線で私を見つめている。どうやらこの青いののお仲間さんのようだ。

「して、その価値を如何にして計るおつもり?」
「簡単な事、蘇った『戦乙女』の名が飾りでない事を教えていただきたいのですよ。そこで、伝記に伝わる強敵との戦闘を再現していただきたく」

そう言うと青いのは供回りらしき人物に顎で指示をして私の元に一本のボロボロの剣を手渡した。

「かつて『戦乙女』は隣国の英雄である『鋼鉄の四騎士』を傷ついた剣で仕留めたという逸話があります。騎士達は岩の下敷きになろうとへこむことすらない甲冑を身につけていたと言われますのでそれを再現しました、生憎と着て戦える者が居ませんので動きませんが・・・」
「この剣でその四つの甲冑を斬れと?」
「そうなりますな」

受け取った剣を軽く振ってみるとそれだけで剣は勘弁してくれとばかりに軋んだ。相当痛めつけられたようだ。降参して興味から外れるのを待つのもいいが、わざわざ嫌がらせの為だけに此処まですると言うのが気に入らない。

「ふぅむ・・・困ったね」
「難しいのならば仕方ありませんねぇ、ですがそれではあのドレスを着る資格など・・・」
「出来なくは無いよ」
「・・・なに?」

笑顔でこちらを蔑む青いのに私はそう答える。どうやら難癖でもつけたかったのかな?でもそうは問屋が卸さないよ。剣の見た目を変えないようにしつつ、私は剣に魔力を注ぎ、剣を強化していく頑丈に、頑丈になれば良い。

「いま、なんと?」
「出来なくは無いと言ったよ」

言い切ると周囲から「ふざけるな!」とか「でたらめを言うな!」などと罵詈雑言が聞こえてくる。どうしてできないと思うのか、そして、出来ないと思っている事を他人にやれというのはどういう了見なのか・・・。鬱陶しい話だ。

「・・・やかましいっ!」

剣を力いっぱい叩きつけると鎧の一つは私の剣の一撃を受け、キーンと高い音を立てて縦に両断された。ズズン、と小さな地響きを起こして倒れた鎧を私は見下ろしてわざとらしく驚いて見せた。

「あれ、鎧・・・じゃなくて鉄の像だったのかな?」
「うぅ・・・!」

両断された鎧は空洞などなく、文字通り鉄の塊だった。私の剣はとりあえず私の力に十分に耐えられる事が証明された。強化は十分だろうからさっさと済ませちゃおう。

「それで・・・伝記ではどうしたのかな?縦に?横に?それともこうかな!」

残った鎧の内の二つを横に切り裂き、串刺しで穴だらけにして破壊すると青いのに私は向かいあった。

「仮にも今の私はガルデンヘイムの、騎士の誇りを背負っている・・・私が背負う誇りを試す事が許されるは神か、王か、それとも次代を託される若き王か。あえて問おう、貴様はなんだ?王にでもなったつもりか?」
「うっ・・・!」

剣を突きつけて尋ねると彼は言葉に詰まったように後ずさった。

「このような戯れ合いを何度も受けるほど・・・私は寛容ではない」

腕に巻いたブレスレットからサラマンデルを呼び出し、最後の一体をドロドロに溶かす。
サラマンデルは火の属性からか暴れん坊の気性がある。そんな彼が私の逆立った感情に影響を受けて逸っているのだろう。溶かした鎧だけでは物足りないとばかりに叫び声を上げている。

「ひいっ!」
「・・・はぁ」

周囲は凍りついたように静まり返り、誰一人として声を上げない。私は剣を修練場の床に突き立てるとため息を残して修練場を後にした。
まったく、嫌がらせの為に人を朝から呼びつけるなんて・・・ヒマな奴らだね。
しおりを挟む
感想 107

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
 農家の四男に転生したルイ。   そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。  農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。  十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。   家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。   ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる! 見切り発車。不定期更新。 カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

処理中です...