67 / 98
ガルデンヘイム王国王都で
嫌がらせの裏側で
しおりを挟む
「がぁぁぁ!何故!何故だ!」
取り巻きが居なくなった修練場でグラハムは一人、怒りを爆発させるしかなかった。
伝説の英雄のドレスを纏うだけの名もしらぬ小娘と侮っていた事を考える余裕などなく、ただただ上手く行かない現状に不満を爆発させるしかなかった。
「あ、ありえん!精霊獣すら使いこなすだと・・・!」
目の前には未だに陽炎すら見えそうなほど高温に溶かしつくされた像と朽ちかけたボロボロの剣、そしてその剣に無残に切り裂かれた像達が声もなく転がっていた。
「くそっ!この、この剣に細工をしたのか!」
怒りに任せて剣を引き抜こうとすると抜く際に限界を迎えたのか半ばでぽっきりと折れてしまった。実際由香は強化をほんの数分で切れるようにしていたがそれを見抜ける者はその場に居なかったため彼女の武勇伝に一ページを添える一助となっただけだった。
「ぬぐ・・・!」
本来ならば出来るはずの無い出来事だった。実際に英雄たるエーリカが剣で四騎士を屠ったのは事実だったが、傷ついていたのは実際には彼女本人であり、携えていた剣は傷一つなく操る彼女の火事場のバカ力を如何なくその切れ味へと変え、見事彼女を窮地から救い出したのだ。
白銀の刀身の柄元に僅かに帯びた薄い青紫の色から『朝焼け』と呼ばれた宝剣は後に夫たる国王へと献上された。現在は先代との確執から宝物庫で眠っておりオットーがオルランドに譲る時期を待っている。
「バカな!出来るはずが無い!」
折れた剣を床に叩きつけて猛るも声は虚しく響くばかりだった。茶会も間近に迫っており、どうにかして由香と皇太子を遠ざけたいグラハムだったが彼には由香を攻撃するしかなかった。
なぜなら皇太子は既に王位継承権を得て、婚儀を行うに十分な優良物件となり、それだけでも茶会にくるとなれば娘を嫁がせたい貴族達は多い。それを追い出したとなればロンベル家自体の責任問題になりかねず、また国民に人気の高い皇太子をむやみに攻撃する事は国民のみならず国王本人の不興を買いかねないからだった。
それ故に出自のハッキリしない由香を攻撃し、道連れで皇太子を不参加に追い込むべく彼女を笑いものにしようと策謀を巡らせていたがパレードに前後して国王派、皇太子派の貴族が団結して彼女の防御に乗り出したからだ。
「情報も入ってこない・・・う、裏切りものどもめぇぇぇぇ!」
そして何より彼にとって痛手だったのが由香があのドレスを着こなしてパレードに出席した事だった。エーリカの威光は凄まじく、また、由香は忘れていたが抜いた剣を煌かせての剣舞などをやってのけた為に生前の彼女を知る貴族・軍属の老人達のハートを掴んでいたのだ。
年功序列が絶対の原則とはいわないまでも生き字引たる老兵や老貴族の影響力は強く、また伝記に恋焦がれる婦女子やロマンチストの男性貴族達はパレードで華々しく舞う彼女に心奪われていたのだ。
それ故に皇太子は気に入らずとも彼女を攻撃したいと考える者自体が少数派になっていた。
実際には少数ではなかったのかもしれないが上から順番に彼女の魅力当てられているのだから仕方ないのかもしれない。
「こ、こうなったら親父の権力で・・・!」
「若旦那様、そろそろお時間です」
目を見開いて猛る主人を迎えに参上したのは筋骨隆々の偉丈夫だった。身のこなしから相当な腕前を持つであろう男性は剣を帯びたままで修練場へと現れた。
「時間だと?」
「フェデリカ様がお待ちです、今晩にお会いなさると仰っていましたが」
「・・・ふん」
偉丈夫の言葉を受けて幾分か冷静さを取り戻したグラハムは先ほどと変わって僅かに笑みを浮かべながら帰路へと着く事にした。
フェデリカとはグラハムの婚約者の事であり、ロンベル家に劣らぬ名家の令嬢であった。気弱で美しい彼女はグラハムにとって理想の女性であり、本人の自覚は薄いが一目惚れに近しい物を感じていた。
「ふん・・・まあ、いい・・・やりようはいくらでもある」
冷静になれば視野も広くなる。あとは知恵を働かせれば悪事だろうと善事だろうとそうそう失敗はしないものだ。
ただ、それがどうあっても転ばない大いなる存在に対する挑戦であるとは彼自身未だ思いも寄らない事であった。
取り巻きが居なくなった修練場でグラハムは一人、怒りを爆発させるしかなかった。
伝説の英雄のドレスを纏うだけの名もしらぬ小娘と侮っていた事を考える余裕などなく、ただただ上手く行かない現状に不満を爆発させるしかなかった。
「あ、ありえん!精霊獣すら使いこなすだと・・・!」
目の前には未だに陽炎すら見えそうなほど高温に溶かしつくされた像と朽ちかけたボロボロの剣、そしてその剣に無残に切り裂かれた像達が声もなく転がっていた。
「くそっ!この、この剣に細工をしたのか!」
怒りに任せて剣を引き抜こうとすると抜く際に限界を迎えたのか半ばでぽっきりと折れてしまった。実際由香は強化をほんの数分で切れるようにしていたがそれを見抜ける者はその場に居なかったため彼女の武勇伝に一ページを添える一助となっただけだった。
「ぬぐ・・・!」
本来ならば出来るはずの無い出来事だった。実際に英雄たるエーリカが剣で四騎士を屠ったのは事実だったが、傷ついていたのは実際には彼女本人であり、携えていた剣は傷一つなく操る彼女の火事場のバカ力を如何なくその切れ味へと変え、見事彼女を窮地から救い出したのだ。
白銀の刀身の柄元に僅かに帯びた薄い青紫の色から『朝焼け』と呼ばれた宝剣は後に夫たる国王へと献上された。現在は先代との確執から宝物庫で眠っておりオットーがオルランドに譲る時期を待っている。
「バカな!出来るはずが無い!」
折れた剣を床に叩きつけて猛るも声は虚しく響くばかりだった。茶会も間近に迫っており、どうにかして由香と皇太子を遠ざけたいグラハムだったが彼には由香を攻撃するしかなかった。
なぜなら皇太子は既に王位継承権を得て、婚儀を行うに十分な優良物件となり、それだけでも茶会にくるとなれば娘を嫁がせたい貴族達は多い。それを追い出したとなればロンベル家自体の責任問題になりかねず、また国民に人気の高い皇太子をむやみに攻撃する事は国民のみならず国王本人の不興を買いかねないからだった。
それ故に出自のハッキリしない由香を攻撃し、道連れで皇太子を不参加に追い込むべく彼女を笑いものにしようと策謀を巡らせていたがパレードに前後して国王派、皇太子派の貴族が団結して彼女の防御に乗り出したからだ。
「情報も入ってこない・・・う、裏切りものどもめぇぇぇぇ!」
そして何より彼にとって痛手だったのが由香があのドレスを着こなしてパレードに出席した事だった。エーリカの威光は凄まじく、また、由香は忘れていたが抜いた剣を煌かせての剣舞などをやってのけた為に生前の彼女を知る貴族・軍属の老人達のハートを掴んでいたのだ。
年功序列が絶対の原則とはいわないまでも生き字引たる老兵や老貴族の影響力は強く、また伝記に恋焦がれる婦女子やロマンチストの男性貴族達はパレードで華々しく舞う彼女に心奪われていたのだ。
それ故に皇太子は気に入らずとも彼女を攻撃したいと考える者自体が少数派になっていた。
実際には少数ではなかったのかもしれないが上から順番に彼女の魅力当てられているのだから仕方ないのかもしれない。
「こ、こうなったら親父の権力で・・・!」
「若旦那様、そろそろお時間です」
目を見開いて猛る主人を迎えに参上したのは筋骨隆々の偉丈夫だった。身のこなしから相当な腕前を持つであろう男性は剣を帯びたままで修練場へと現れた。
「時間だと?」
「フェデリカ様がお待ちです、今晩にお会いなさると仰っていましたが」
「・・・ふん」
偉丈夫の言葉を受けて幾分か冷静さを取り戻したグラハムは先ほどと変わって僅かに笑みを浮かべながら帰路へと着く事にした。
フェデリカとはグラハムの婚約者の事であり、ロンベル家に劣らぬ名家の令嬢であった。気弱で美しい彼女はグラハムにとって理想の女性であり、本人の自覚は薄いが一目惚れに近しい物を感じていた。
「ふん・・・まあ、いい・・・やりようはいくらでもある」
冷静になれば視野も広くなる。あとは知恵を働かせれば悪事だろうと善事だろうとそうそう失敗はしないものだ。
ただ、それがどうあっても転ばない大いなる存在に対する挑戦であるとは彼自身未だ思いも寄らない事であった。
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした
渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞!
2024/02/21(水)1巻発売!
2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!)
2024/12/16(月)3巻発売!
2025/04/14(月)4巻発売!
応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!!
刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました!
旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』
=====
車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。
そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。
女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。
それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。
※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした
むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる