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アイゼンヘイムへ
シュタール・フュクスライン
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「連絡先はどこだ?」
「それが、件のアイゼンヘイム帝国で」
部下の一人がそう答えるとオットーの額に青筋が浮かぶ。部下や大臣達は戦々恐々としながらもオットーが魔道具を受け取ったので部下はそそくさと立ち去る。
「誰だ?」
『誰だとはご挨拶ね、国王陛下』
水晶玉が輝き、プロジェクターのように対象を映し出した。その映像には椅子に座った老齢の貴婦人が此方を笑顔でこちらを見ている。
「シュタール・フュクスラインめ・・・貴様があの手紙を送ったのか?」
『懐かしい名だわぁ、貴方のお父君相手に儲けたとき以来かしら?』
「ふん」
忌々しそうに鼻を鳴らすオットーに対し老婦人は笑みを深めるばかりだった。その笑顔が果たして生来の物なのか、それとも為政者を相手取る為の仮面なのかはわからない。それはおそらく他人はおろか肉親にさえも。
「貴様ごときにかかずらっているヒマはない、用件を手短に伝えろ」
『まあ、太皇太后に向かって随分な仰りようね』
書類を手にそう吐き捨てるオットーにわざとらしく扇子を口元に当てて悲しげに振舞う婦人。それに対し内心舌打ちをしながらオットーは聞いていたがその中に引っかかるワードを見つけて視線を戻した。
「太皇太后だと・・・?貴様の息子は何時退位したのだ」
『まだしてないわ、でも時間の問題なの』
笑みを浮かべたままだが真面目な顔つきになった老婦人を前にオットーは嫌な予感を感じながら書類を大臣に投げ渡して魔道具に顔を向ける。
「時間の問題だと?貴様の息子は壮健だったではないか」
『ええ、でももうダメ・・・直に亡くなるわ、手の施しようが無いって』
「間者がいたか・・・おおかた毒でも盛られたか」
アイゼンへイム皇帝、ヨアヒム・ドラン・アイゼンヘイムは健康優良児で有名で流行り病や些細な怪我くらいではびくともしない頑丈な体を持つ事で有名であった。なのでオットーがそう考えたのも不思議ではなかった。そしてその予想は彼女の態度からも的中している事が察せられた。
「犯人に目処はついたのか?」
『ええ、おそらくは・・・ヨアヒムの義理の弟の仕業でしょうね。ヨアヒムの妻になった姉の方は良い子だったんだけどねぇ』
ため息をついたその仕草には疲労と心労がありありと見て取れた。百戦錬磨の為政者であった彼女が例え一瞬の動作とはいえそのような姿を見せた事にオットーは内心驚きを隠せないで居た。
『正直、今となっては助からない命よりヨアヒムの未来を助けてあげたいと思ってね・・・白紙の小切手を利用させてもらったわ』
「なるほどな、先代の約定が今更になって・・・しかもそのような内容が書けたのはあの愚物がそんな約束をしておったからか」
先代は当時からバリバリに働いていた老婦人から多額の金銭を巻き上げられていた。その借金の棒引きにその様な取り決めを提案したのだろう。その際に動いた金銭はかなりの額だったとオットーは記憶していたがまさに自国の窮地を救う為の保険にされるとは思っても見なかった。
『オットー、私、ソフィーリア・ヒルデガルド・アイゼンヘイムの人生最後のお願いよ、貴国との友好と末永い互いの発展の為に皇帝アルフレート・フリーデン・アイゼンヘイムを助けて頂戴。その為に『ガルデンヘイムの戦乙女』の力が必要なの』
「彼女は貴族でもなんでもない・・・過信すると国が割れるかも知れんぞ」
『構わないわ、今は藁にも縋る思いってやつよ。とにかく力を貸して頂戴』
笑みを浮かべつつも緊迫した様子が伺える。オットーにとっても隣国の不穏な情勢は放ってはおけない。
通信が切れたと同時に彼は行動を開始した。
「陛下、このような時間に一体何があったのですか?」
その夕方、すぐさまオットーは自身の信頼に足る人物の中から身軽なものを集めた。
「隣国アイゼンヘイムに不穏な気配が漂っておる。おそらく十中八九は内戦の類であろうな、王弟一派がなにやらしでかしたらしい。すぐさま調査に向かうのだ」
「しかし、陛下、我らは相手にも顔や名が知られてしまっています、今から乗り込んでも不審がられるのでは?」
部下の中から一人がそう答える。突っ込んだ事を調べる以上、目立つ立場の人間が赴くのは不味いがかといって平民や騎士などでは限界がある。簡単に存在すらももみ消されてしまうからだ。
「それには心配に及ばぬ、彼奴等は『ガルデンヘイムの戦乙女』を呼びたがっておるからな」
「なるほど、同行者として入国するのですね」
「表向きはな、しかし・・・」
「しかし?」
「いや、なんでもない。直ぐにでも出発できるよう準備を整えておけ」
オルランドにはすまないと思いつつもオットーはなるべく早い時期に由香を派遣する意向を固める決意をした。
「それが、件のアイゼンヘイム帝国で」
部下の一人がそう答えるとオットーの額に青筋が浮かぶ。部下や大臣達は戦々恐々としながらもオットーが魔道具を受け取ったので部下はそそくさと立ち去る。
「誰だ?」
『誰だとはご挨拶ね、国王陛下』
水晶玉が輝き、プロジェクターのように対象を映し出した。その映像には椅子に座った老齢の貴婦人が此方を笑顔でこちらを見ている。
「シュタール・フュクスラインめ・・・貴様があの手紙を送ったのか?」
『懐かしい名だわぁ、貴方のお父君相手に儲けたとき以来かしら?』
「ふん」
忌々しそうに鼻を鳴らすオットーに対し老婦人は笑みを深めるばかりだった。その笑顔が果たして生来の物なのか、それとも為政者を相手取る為の仮面なのかはわからない。それはおそらく他人はおろか肉親にさえも。
「貴様ごときにかかずらっているヒマはない、用件を手短に伝えろ」
『まあ、太皇太后に向かって随分な仰りようね』
書類を手にそう吐き捨てるオットーにわざとらしく扇子を口元に当てて悲しげに振舞う婦人。それに対し内心舌打ちをしながらオットーは聞いていたがその中に引っかかるワードを見つけて視線を戻した。
「太皇太后だと・・・?貴様の息子は何時退位したのだ」
『まだしてないわ、でも時間の問題なの』
笑みを浮かべたままだが真面目な顔つきになった老婦人を前にオットーは嫌な予感を感じながら書類を大臣に投げ渡して魔道具に顔を向ける。
「時間の問題だと?貴様の息子は壮健だったではないか」
『ええ、でももうダメ・・・直に亡くなるわ、手の施しようが無いって』
「間者がいたか・・・おおかた毒でも盛られたか」
アイゼンへイム皇帝、ヨアヒム・ドラン・アイゼンヘイムは健康優良児で有名で流行り病や些細な怪我くらいではびくともしない頑丈な体を持つ事で有名であった。なのでオットーがそう考えたのも不思議ではなかった。そしてその予想は彼女の態度からも的中している事が察せられた。
「犯人に目処はついたのか?」
『ええ、おそらくは・・・ヨアヒムの義理の弟の仕業でしょうね。ヨアヒムの妻になった姉の方は良い子だったんだけどねぇ』
ため息をついたその仕草には疲労と心労がありありと見て取れた。百戦錬磨の為政者であった彼女が例え一瞬の動作とはいえそのような姿を見せた事にオットーは内心驚きを隠せないで居た。
『正直、今となっては助からない命よりヨアヒムの未来を助けてあげたいと思ってね・・・白紙の小切手を利用させてもらったわ』
「なるほどな、先代の約定が今更になって・・・しかもそのような内容が書けたのはあの愚物がそんな約束をしておったからか」
先代は当時からバリバリに働いていた老婦人から多額の金銭を巻き上げられていた。その借金の棒引きにその様な取り決めを提案したのだろう。その際に動いた金銭はかなりの額だったとオットーは記憶していたがまさに自国の窮地を救う為の保険にされるとは思っても見なかった。
『オットー、私、ソフィーリア・ヒルデガルド・アイゼンヘイムの人生最後のお願いよ、貴国との友好と末永い互いの発展の為に皇帝アルフレート・フリーデン・アイゼンヘイムを助けて頂戴。その為に『ガルデンヘイムの戦乙女』の力が必要なの』
「彼女は貴族でもなんでもない・・・過信すると国が割れるかも知れんぞ」
『構わないわ、今は藁にも縋る思いってやつよ。とにかく力を貸して頂戴』
笑みを浮かべつつも緊迫した様子が伺える。オットーにとっても隣国の不穏な情勢は放ってはおけない。
通信が切れたと同時に彼は行動を開始した。
「陛下、このような時間に一体何があったのですか?」
その夕方、すぐさまオットーは自身の信頼に足る人物の中から身軽なものを集めた。
「隣国アイゼンヘイムに不穏な気配が漂っておる。おそらく十中八九は内戦の類であろうな、王弟一派がなにやらしでかしたらしい。すぐさま調査に向かうのだ」
「しかし、陛下、我らは相手にも顔や名が知られてしまっています、今から乗り込んでも不審がられるのでは?」
部下の中から一人がそう答える。突っ込んだ事を調べる以上、目立つ立場の人間が赴くのは不味いがかといって平民や騎士などでは限界がある。簡単に存在すらももみ消されてしまうからだ。
「それには心配に及ばぬ、彼奴等は『ガルデンヘイムの戦乙女』を呼びたがっておるからな」
「なるほど、同行者として入国するのですね」
「表向きはな、しかし・・・」
「しかし?」
「いや、なんでもない。直ぐにでも出発できるよう準備を整えておけ」
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