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アイゼンヘイムへ
厳戒態勢へ!
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「スカサハ様、お話は終わりましたか?」
お爺ちゃんと退出していたお坊ちゃんが謁見の間を出た所で待っていた。
「うん、アイゼンヘイムへ行く事になったから」
「そうですか・・・出立は二日後になるようです」
溢れ出る不満を覆い隠して彼は淡々とそういった。仕方ないとは思いつつもお坊ちゃんは今回のお茶会をかなり楽しみにしていたようだ。
(父上は・・・スカサハ様に重責を負わせるつもりなんだ・・・ボクがやるべき事を彼女にやらせるなんて・・・)
実際は見当違いの予想をしていた。しかしその事に今私は気付けずにいた。その時の私はただ一言、彼から着いて行きたいと、そう言ってもらえるの事ばかりを考えていたからだ。
「殿下、お一人では心細くありませんか?」
お爺ちゃんの言葉に私は思わずハッとなってお坊ちゃんに目を向けた。
「それは・・・でもそれでは足手纏いになりますから」
きっぱりとそう言うとお坊ちゃんはそのまま廊下の奥へと消えていく。私は呆然とその背中を見送った。
「殿下・・・お若う御座いますな」
執事のお爺ちゃんの声が少し遠い。そのまま、私はお坊ちゃんの部屋ではなく殆ど使っていなかった自分に割り当てられた部屋へと向かう。
「二日後か・・・」
私はそれから長い二日を過ごす事になった。
「父上!何故、何故スカサハ様をアイゼンヘイムへ送るとお決めになったのです!」
「ワシがそんな事を好んで決めると思うたか?」
「思わない・・・けど、だからこそ聞きたかった」
オットーは息子が見せた珍しい怒りの表情に少なからず驚きを見せたがすぐさま自身の本音をぶつける。なにより腹芸を好まず、まっすぐに立ち向かう彼らしい返答だった。その言葉にオルランドも僅かに安堵する。
「けど、けど!スカサハ様を巻き込む必要なんか無かったんじゃないの?彼女は・・・」
「あえて彼女はお前を置いていくと言った、頼りたくて、心細くて、それでもな。その意味を理解せよ。彼女はあえて行くのだ、我らのためにな」
「それは・・・」
「ならばお前がどうすべきか、自ずと見えてくるだろう」
膨大な魔力と武力の背景にある等身大の由香の姿が見えているオットーにとってオルランドの感情の高ぶりが自分の事のように理解できた。だからこそ彼はオルランドにそう答えた。
「アイゼンヘイムにて尋常ならざる事態が起こった故にしばらくの間王族は式典への出席を控える、この発布は有力貴族たちも同様である」
お茶会はお父さんの貴族達への発布により急遽取りやめとなった。国家の一大事だから仕方ない
ね。そしてその二日後に私達はアイゼンヘイムへの出立の準備を終えて王宮より出立する運びとなった。
「これより貴公らは隣国の皇帝へと面会し、可能ならば友邦の安定のためその禍根を排除せよ」
「委細承知しました、万事お任せあれ」
私はお父さんの言葉にそう答え、騎士の礼を取った。ドレスのお陰で二日間に溜まった動揺や不安は完全に覆い隠されている。ただ、そのお父さんの悲しげな瞳だけがその事実を見抜いていたが。
「スカサハ様」
謁見の間に響いた誰かの言葉に一斉に振り返った。そこに居たのは礼装に身を包み、柔和な笑みを浮かべたお坊ちゃんだった。お坊ちゃんは私の傍に歩み寄ると傅く私に言う。
「此度の出立、大変に厳しいものとなるかもしれません」
「はい、ですが必ずご期待にそう結果をお持ちします」
「そうですか、ならば私の願いを聞いていただけますか?」
「なんなりと」
お決まりの文句だ。『戦乙女』の伝記にあった通りの言葉に私は苦笑しながらそう返した。
大方場を和まそうとしてお父さん辺りが吹き込んだんだろう。私は一説の通りそう答える。
後は彼が
「それでは、遠慮なく」
「えっ?」
しかし、次の言葉は私が知る伝記の一説ではなく。
そっと唇に柔かい感触。
「御武運を」
「~~~~っ!」
顔がかーっと熱くなる。なんてことしてくれたの!
「・・・お前、まさかアレを!?」
「はい!」
静まり返った空間に呆れた表情のお父さんがそう答える。事情を知るらしい人物はクスクスと笑い始める。
「おまじないです、『どんなに離れていても何時かまた再会できるように。別たれた川の水がやがて場所を変えて一つの流れに戻るように』」
「・・・そ、その辺にしといてくれないか!」
珍しく慌てた様子のお父さん。
「『待ちます、たとえ老いさらばえても、太陽が昇り続ける限り私は何時までも』」
「うがーっ!」
あ、壊れた。ってことはこれって・・・!
「オルランド!何故お前が妻の告白の台詞を知っているんだ!」
うわーっ!やっぱりか!頭を抱えてお父さんが絶叫している。
「知りませんよ、ボクはただ母上から再会のおまじないを教えてもらっただけですから」
「うぐぅ・・・やっぱりまだ怒っているのか」
「さて、どうでしょうか」
「クスッ・・・困った人」
二人のやり取りに先ほどまでの張り詰めた雰囲気はなくなり、皆が笑顔を浮かべていた。
あーあ、シリアスな空気が台無しだよ。
「けど、ありがとうね」
「なにかいいましたか?」
「いや、別に。それより」
「なんですか・・・あうっ!」
でこピン一発。たたらを踏んで後退するお坊ちゃんに私は唇をなぞりながら言った。
「こういうことは背伸びをしなくてもいい位身長が伸びてからして欲しいよ?」
「伸びたらしてもいいんですか・・・あう!」
「そう言う意味じゃない!」
今度はお父さんの拳骨が落ちた。全く困った人だ。
お爺ちゃんと退出していたお坊ちゃんが謁見の間を出た所で待っていた。
「うん、アイゼンヘイムへ行く事になったから」
「そうですか・・・出立は二日後になるようです」
溢れ出る不満を覆い隠して彼は淡々とそういった。仕方ないとは思いつつもお坊ちゃんは今回のお茶会をかなり楽しみにしていたようだ。
(父上は・・・スカサハ様に重責を負わせるつもりなんだ・・・ボクがやるべき事を彼女にやらせるなんて・・・)
実際は見当違いの予想をしていた。しかしその事に今私は気付けずにいた。その時の私はただ一言、彼から着いて行きたいと、そう言ってもらえるの事ばかりを考えていたからだ。
「殿下、お一人では心細くありませんか?」
お爺ちゃんの言葉に私は思わずハッとなってお坊ちゃんに目を向けた。
「それは・・・でもそれでは足手纏いになりますから」
きっぱりとそう言うとお坊ちゃんはそのまま廊下の奥へと消えていく。私は呆然とその背中を見送った。
「殿下・・・お若う御座いますな」
執事のお爺ちゃんの声が少し遠い。そのまま、私はお坊ちゃんの部屋ではなく殆ど使っていなかった自分に割り当てられた部屋へと向かう。
「二日後か・・・」
私はそれから長い二日を過ごす事になった。
「父上!何故、何故スカサハ様をアイゼンヘイムへ送るとお決めになったのです!」
「ワシがそんな事を好んで決めると思うたか?」
「思わない・・・けど、だからこそ聞きたかった」
オットーは息子が見せた珍しい怒りの表情に少なからず驚きを見せたがすぐさま自身の本音をぶつける。なにより腹芸を好まず、まっすぐに立ち向かう彼らしい返答だった。その言葉にオルランドも僅かに安堵する。
「けど、けど!スカサハ様を巻き込む必要なんか無かったんじゃないの?彼女は・・・」
「あえて彼女はお前を置いていくと言った、頼りたくて、心細くて、それでもな。その意味を理解せよ。彼女はあえて行くのだ、我らのためにな」
「それは・・・」
「ならばお前がどうすべきか、自ずと見えてくるだろう」
膨大な魔力と武力の背景にある等身大の由香の姿が見えているオットーにとってオルランドの感情の高ぶりが自分の事のように理解できた。だからこそ彼はオルランドにそう答えた。
「アイゼンヘイムにて尋常ならざる事態が起こった故にしばらくの間王族は式典への出席を控える、この発布は有力貴族たちも同様である」
お茶会はお父さんの貴族達への発布により急遽取りやめとなった。国家の一大事だから仕方ない
ね。そしてその二日後に私達はアイゼンヘイムへの出立の準備を終えて王宮より出立する運びとなった。
「これより貴公らは隣国の皇帝へと面会し、可能ならば友邦の安定のためその禍根を排除せよ」
「委細承知しました、万事お任せあれ」
私はお父さんの言葉にそう答え、騎士の礼を取った。ドレスのお陰で二日間に溜まった動揺や不安は完全に覆い隠されている。ただ、そのお父さんの悲しげな瞳だけがその事実を見抜いていたが。
「スカサハ様」
謁見の間に響いた誰かの言葉に一斉に振り返った。そこに居たのは礼装に身を包み、柔和な笑みを浮かべたお坊ちゃんだった。お坊ちゃんは私の傍に歩み寄ると傅く私に言う。
「此度の出立、大変に厳しいものとなるかもしれません」
「はい、ですが必ずご期待にそう結果をお持ちします」
「そうですか、ならば私の願いを聞いていただけますか?」
「なんなりと」
お決まりの文句だ。『戦乙女』の伝記にあった通りの言葉に私は苦笑しながらそう返した。
大方場を和まそうとしてお父さん辺りが吹き込んだんだろう。私は一説の通りそう答える。
後は彼が
「それでは、遠慮なく」
「えっ?」
しかし、次の言葉は私が知る伝記の一説ではなく。
そっと唇に柔かい感触。
「御武運を」
「~~~~っ!」
顔がかーっと熱くなる。なんてことしてくれたの!
「・・・お前、まさかアレを!?」
「はい!」
静まり返った空間に呆れた表情のお父さんがそう答える。事情を知るらしい人物はクスクスと笑い始める。
「おまじないです、『どんなに離れていても何時かまた再会できるように。別たれた川の水がやがて場所を変えて一つの流れに戻るように』」
「・・・そ、その辺にしといてくれないか!」
珍しく慌てた様子のお父さん。
「『待ちます、たとえ老いさらばえても、太陽が昇り続ける限り私は何時までも』」
「うがーっ!」
あ、壊れた。ってことはこれって・・・!
「オルランド!何故お前が妻の告白の台詞を知っているんだ!」
うわーっ!やっぱりか!頭を抱えてお父さんが絶叫している。
「知りませんよ、ボクはただ母上から再会のおまじないを教えてもらっただけですから」
「うぐぅ・・・やっぱりまだ怒っているのか」
「さて、どうでしょうか」
「クスッ・・・困った人」
二人のやり取りに先ほどまでの張り詰めた雰囲気はなくなり、皆が笑顔を浮かべていた。
あーあ、シリアスな空気が台無しだよ。
「けど、ありがとうね」
「なにかいいましたか?」
「いや、別に。それより」
「なんですか・・・あうっ!」
でこピン一発。たたらを踏んで後退するお坊ちゃんに私は唇をなぞりながら言った。
「こういうことは背伸びをしなくてもいい位身長が伸びてからして欲しいよ?」
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