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アイゼンヘイムへ

地龍様降臨

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「血・・・?」
「新しいものが混じっている、信者が居なかった理由はそれか」
「そんな・・・大司教様・・・」
「ヤツの血は姿を偽る為に有効に使わせてもらった故にそう落胆せずとも良いぞ」

正体を看破されたと知ったのか大司教の顔がメキメキと音を立てて歪み、嫌な笑みを浮かべた男性へと変わっていく。その言葉と表情に大司教の結末を知った彼女は涙を浮かべて崩れ落ちる。

「本来はシスター・シシリアを葬る為に此処で待っていたが・・・ガルデンヘイムの戦乙女の首級が同時に手に入るとは幸先が良い」
「ほほう・・・そうなるとガルデンヘイムからの報復は避けられないはずですが・・・我らがついでと?」
「そこな修道女はタダの修道女ではりませんよ、その名こそシュバリエ・シシーリア・アイゼンヘイム、この国の皇帝ヨアヒム・ドラン・アイゼンヘイムの后に他ならないのだから」
「なるほど、そして貴様が大司教に成り代わったのと同様の手口で我らに成り代わろうと」

私の言葉に笑みを深める男。暗殺者というより呪術師といった面貌だが、それにしてもおぞましい事を思いつくものだ。

「そのとおり、貴女の腕前は正直誤算でしたが・・・無防備な二人を守りながら、我らとどれだけ戦えるでしょうねえ?」

そして圧倒的な優位を得たとばかりに嬉しそうに言う男。確かに不味い、シシリアを見捨てるのも気分は悪いが手段としては悪くない。しかし主様を今動かしては折角の治療が無駄になるし、そもそも『地龍の揺り籠』を起動できる人が彼女以外にも残っているとも限らない。
寝るだけで動いてくれるならいいが、もしそうでなかったら彼女を癒す手段を探す所から始めないといけなくなる。せめてどちらか一人なら何とかなったが・・・。

「シシリア、貴女は戦えますか?」

私の問いかけに頬を濡らしながらも彼女は首を横に振った。魔術が使えるかとも思ったが彼女の属性は水と風が少しばかり。治癒に特化しているらしく、土属性の宝具にもアクセスできるなど稀有な才能を持っているようだが戦闘に役立つほど魔力量も属性の強さもない。

「はてさて、此処が命の捨て所となりますか?」
『いや、それには及ばぬ』

突然の呼びかけに驚いて振り返ると眠っていたはずの主様の口が動いた。しかしその声は・・・。

「地龍様?!」
『ふ、治療のアテがまさか我が宝具とはな・・・確かに病は癒せるが本来は治癒器ではないのだ』

瞳をひらいたその色は地龍様の属性を示す茶色がかった色だ。つまり『地龍の揺り籠』というのはつまり・・・。

「『我を現世に顕現させる為の降霊器、それがこの宝具の真の使い道。アイゼンヘイムの開祖も己が身に我の一部を宿し、国を築いたのだからな』」

地龍の揺り籠の効果、それは使用者の体に地龍様を降臨させその力を得る為の儀式の道具なのだという。それをあえて途中で切り上げる事で微力な力を宿し、病を癒す程度の加護に抑えているのがこの神殿での使用方法との事。

「しかしそれでは主様のお心は癒せないのでは?」
「『案ずるな、火龍の馬鹿者と違い宝具を媒介にして行っておる故治療も同時進行で行っている。意識を取り戻すには時間は掛かるが動いても問題ない・・・あー、ごほん!』・・・これでよかろうよ」

咳払いの後に声も主様と同じになった。瞳と髪の色が若干茶色がかっているが見抜けるものはそうそういるまい。

「さて、ルーンよ。この不埒者を征伐するに時間は掛けられぬ、そこな修道女を連れて下がっておれ」
「了解しました」

まさか『地龍の揺り籠』が神降ろしの為の道具だったとは思わなかったがこれは幸いだ。地龍様が居るとなればとても心強い。

「ふふふ、滾るのう。人の身での久方ぶりの現界、それも・・・姫君の体とは・・・滾るぞ!滾る!」

歓喜の叫びと共に両手に輝きを纏ったかと思うとそれは手甲となって彼女の手に現れる。銅色の手甲は鮮やかな色合いで顔が映るほどに輝いている。

「暗殺者共、今より我が妙技を受けよ!」

地龍様を宿した主様は弓を引き絞るように右手を振りかぶると虚空に向かって拳を打ち出した。

「な・・・ぎえっ!」
「ぐおっ!」

すると彼らを押し潰すように不可視の巨大な拳が放たれたのか大きなクレーターが壁に出来上がり、二・三人が一気に壁にめり込んだ。

「次々行くぞ!」

まるで巨人に叩きのめされたかのように壁にめり込んでいく暗殺者達。ガルデンヘイムの時とは比べ物にならないくらい一方的な惨状であった。

「ふぅむ、コソコソとしている連中なぞこんなものか」
「地龍様、首魁の一人が見えませんが・・・」
「逃げたようだな、まあ良い。それよりこれからの事の方が大事だ」

そう言うと地龍様はボコボコになった階段を登っていく。とりあえず私はシシリアを連れて後を追いかける事にした。

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