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アイゼンヘイムへ
病は気から?いや、毒だって・・・
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「此処だな!」
ドアを開け放った最後の一枚。その先にアイゼンヘイムの皇帝ヨアヒム・ドラン・アイゼンヘイムは従者が心配そうに気遣う中、苦しげにうめくばかりであった。
年の頃はシシリアと変わらぬ壮年の男性だと言うのにその姿は老人と見紛う程に衰弱し、空気が抜けるような音を立てているので漸く息が続いていると認知できるほどだ。部屋には絵画が飾られていたがアレが本人をモチーフにしたものだとは信じがたい。
「ふむ、これは酷いな」
「ぶ、無礼な!病人の手前、ましてや陛下の御前ですよ!」
従者の人が至極真っ当な反応をした。病人が寝ている場所にドアを蹴破らんばかりの勢いで登場した地龍様を歓待する馬鹿などおるまい。
「どけ、病を癒す術を持って来たのだから邪魔をするでないわ」
「ちょ・・・うわっ」
地龍様が手を翳すと衝撃波が起こり、従者達が粗方吹き飛ばされていく。ああ、常識的な対応とは一体・・・。
「坊や、頑健さが売りのお前が随分と無様な姿よな・・・まあ、飛び出した妻を呼び戻せぬような軟弱者故に仕方ないのかもしれんがな」
「・・・おぬしは・・・」
「ほう、意識を取り戻したか・・・少し見直したぞ」
「まさか・・・貴女がいらっしゃるとは・・・」
「生憎と本人ではないがな、混乱を解消する為に貴様の妻も連れてきてやった。これを機に心を入れ替えるが良い」
そう言うと地龍様は主様がやるように人差し指を立ててくるくると回すと緑と青の光を起こし、寝たきりの皇帝に治癒魔術を掛ける。
「おお・・・陛下のお顔が・・・」
「信じられない・・・死の手前だったと言うのに」
カサカサに干からびていた肌に生気が蘇り、濁っていた瞳に輝きが戻る。白くなっていた髪も黒々と元通りになっていくと徐々になるほど頑健そうな偉丈夫がベッドに身を横たえている。
「ふぅむ、姫君ならば完全に治せるのだがな・・・専門外の私ではこんなものか」
五龍様のそれぞれが司る属性に直接アクセスできる主様と違い、地龍様は水龍様や風龍様の属性を使う事は出来ても『特性』とも呼ぶべき水準までは行使できないのだ。それでも人間が使う治癒術のレベルは凌駕しているのだが。
「さて、押し寄せる蛮族はとっくに消え失せておるだろうし・・・後は賊徒を征伐すれば此度の遠征も完了か」
「そうなると義弟の始末ですか」
「尊称を外すと面倒ではないか、外交問題だ」
「私にとって尊ぶべきは主様だけですので、それとも跪けと?」
「揉め事の原因だ、仕方な・・・あれ、私達は?」
「今回の結果次第と言う事で」
「そうか・・・」
なんだか残念そうな地龍様、ですがあなた方が事態をかなりややこしくしているのですが。
火龍様に至っては危うく主様の心を壊してしまう所だった。そうなったら私は・・・世界を憎まずには居られないほど、悲しむ事になっていたかもしれない。
彼女は、何時の間にか私達の心に入り込んで重要な位置を占めている。風のように何処からか現れ、往年の友の様に気安く、そして母の様に優しく、そして宝石の様に美しい。付き合いが深まるほどに彼女に寄り添っていたいと、そう思える人だ。
「もし、ガルデンヘイムからの使者様よ・・・」
「む、大分と気分は良くなったか」
「おかげさまで・・・」
「ヨアヒム!良かった・・・」
堪え切れなくなったのかシシリアが傍に駆け寄り、皇帝に縋りついた。
「貴方とあの子に何かあったら・・・私は・・・私は!」
「すまなかった・・・君に辛い思いをさせてしまって」
泣きじゃくるシシリアを前に皇帝は心底安心した様子で彼女の頭を撫でている。感動の再会と言った所だが我らには関係ない。我らは我らの平穏を削ってまで此処に来ているのだ。
長引けば陛下も、殿下も気に病まれる。引いては主様の心の平穏すらも。
「皇太子殿下は何処に?皇帝夫妻とお子様は王宮にて安全を確保されるのが最適かと」
「あの子は・・・離宮に・・・」
「離宮?」
「王宮の隣にあるあの青色の建物です」
「ならば直ぐにでも呼び、三人で纏まって行動すべきですね」
私がそう言ったものの皇帝はなにやら渋った様子で目線を逸らした。なんだか嫌な予感がするな。
「すでに表面上はあの子が皇帝なのですがなにぶん幼くやんちゃ盛りで」
「年の頃は確か・・・七つほどかと聞いていたが何故離宮に留め置く必要があるのだ?」
地龍様が首を傾げると同時に離宮から轟音が響いた。何かが爆発したような音だ。
「何事だ?!」
「ああ、あの子・・・!まだあの頃のクセが治ってないのね!」
シシリアが悲鳴に近い声を上げた。
「あれが御子の仕業だと?」
「治るどころか酷くなっていて・・・実際に教育係をつけようと探し回っていた所だったのです」
治ったばかりだと言うのにまた顔を青くして皇帝は頭を抱えている。
ドアを開け放った最後の一枚。その先にアイゼンヘイムの皇帝ヨアヒム・ドラン・アイゼンヘイムは従者が心配そうに気遣う中、苦しげにうめくばかりであった。
年の頃はシシリアと変わらぬ壮年の男性だと言うのにその姿は老人と見紛う程に衰弱し、空気が抜けるような音を立てているので漸く息が続いていると認知できるほどだ。部屋には絵画が飾られていたがアレが本人をモチーフにしたものだとは信じがたい。
「ふむ、これは酷いな」
「ぶ、無礼な!病人の手前、ましてや陛下の御前ですよ!」
従者の人が至極真っ当な反応をした。病人が寝ている場所にドアを蹴破らんばかりの勢いで登場した地龍様を歓待する馬鹿などおるまい。
「どけ、病を癒す術を持って来たのだから邪魔をするでないわ」
「ちょ・・・うわっ」
地龍様が手を翳すと衝撃波が起こり、従者達が粗方吹き飛ばされていく。ああ、常識的な対応とは一体・・・。
「坊や、頑健さが売りのお前が随分と無様な姿よな・・・まあ、飛び出した妻を呼び戻せぬような軟弱者故に仕方ないのかもしれんがな」
「・・・おぬしは・・・」
「ほう、意識を取り戻したか・・・少し見直したぞ」
「まさか・・・貴女がいらっしゃるとは・・・」
「生憎と本人ではないがな、混乱を解消する為に貴様の妻も連れてきてやった。これを機に心を入れ替えるが良い」
そう言うと地龍様は主様がやるように人差し指を立ててくるくると回すと緑と青の光を起こし、寝たきりの皇帝に治癒魔術を掛ける。
「おお・・・陛下のお顔が・・・」
「信じられない・・・死の手前だったと言うのに」
カサカサに干からびていた肌に生気が蘇り、濁っていた瞳に輝きが戻る。白くなっていた髪も黒々と元通りになっていくと徐々になるほど頑健そうな偉丈夫がベッドに身を横たえている。
「ふぅむ、姫君ならば完全に治せるのだがな・・・専門外の私ではこんなものか」
五龍様のそれぞれが司る属性に直接アクセスできる主様と違い、地龍様は水龍様や風龍様の属性を使う事は出来ても『特性』とも呼ぶべき水準までは行使できないのだ。それでも人間が使う治癒術のレベルは凌駕しているのだが。
「さて、押し寄せる蛮族はとっくに消え失せておるだろうし・・・後は賊徒を征伐すれば此度の遠征も完了か」
「そうなると義弟の始末ですか」
「尊称を外すと面倒ではないか、外交問題だ」
「私にとって尊ぶべきは主様だけですので、それとも跪けと?」
「揉め事の原因だ、仕方な・・・あれ、私達は?」
「今回の結果次第と言う事で」
「そうか・・・」
なんだか残念そうな地龍様、ですがあなた方が事態をかなりややこしくしているのですが。
火龍様に至っては危うく主様の心を壊してしまう所だった。そうなったら私は・・・世界を憎まずには居られないほど、悲しむ事になっていたかもしれない。
彼女は、何時の間にか私達の心に入り込んで重要な位置を占めている。風のように何処からか現れ、往年の友の様に気安く、そして母の様に優しく、そして宝石の様に美しい。付き合いが深まるほどに彼女に寄り添っていたいと、そう思える人だ。
「もし、ガルデンヘイムからの使者様よ・・・」
「む、大分と気分は良くなったか」
「おかげさまで・・・」
「ヨアヒム!良かった・・・」
堪え切れなくなったのかシシリアが傍に駆け寄り、皇帝に縋りついた。
「貴方とあの子に何かあったら・・・私は・・・私は!」
「すまなかった・・・君に辛い思いをさせてしまって」
泣きじゃくるシシリアを前に皇帝は心底安心した様子で彼女の頭を撫でている。感動の再会と言った所だが我らには関係ない。我らは我らの平穏を削ってまで此処に来ているのだ。
長引けば陛下も、殿下も気に病まれる。引いては主様の心の平穏すらも。
「皇太子殿下は何処に?皇帝夫妻とお子様は王宮にて安全を確保されるのが最適かと」
「あの子は・・・離宮に・・・」
「離宮?」
「王宮の隣にあるあの青色の建物です」
「ならば直ぐにでも呼び、三人で纏まって行動すべきですね」
私がそう言ったものの皇帝はなにやら渋った様子で目線を逸らした。なんだか嫌な予感がするな。
「すでに表面上はあの子が皇帝なのですがなにぶん幼くやんちゃ盛りで」
「年の頃は確か・・・七つほどかと聞いていたが何故離宮に留め置く必要があるのだ?」
地龍様が首を傾げると同時に離宮から轟音が響いた。何かが爆発したような音だ。
「何事だ?!」
「ああ、あの子・・・!まだあの頃のクセが治ってないのね!」
シシリアが悲鳴に近い声を上げた。
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