214 / 282
ドラゴンと独立宣言の章
夜風に吹かれて その2
しおりを挟む
「最初に出会った時、貴方はとても恐ろしい存在だと思いました・・・それはもう化け物だと」
最初に出会った俺はまさしく悪鬼羅刹かの如く恐ろしい存在だったと彼女はいう。自害すら出来ず、敵対組織であったエルフに囲まれて生活を送ることを余儀なくされたとき彼女は心底絶望していたという。
「そんなにか」
「癒すといいながら私を嬲って楽しんでいるように見えたのでそれはそれは・・・」
「なんというか・・・すまん」
瓦礫に腰掛けて思い出す。とんでもない破廉恥行為だ。そして協力する事で命をどうにか永らえた所で起こったあの日。押し倒され、服を破かれて純潔を散らしたあの時の姿。
「こう言ってはどうかとも思いますが・・・男の本懐を遂げた瞬間ではありませんでしたか?」
「うーむ、それは・・・まあ、良かったという気持ちも無くはなかったが・・・」
「まあ、あんな表情をしていたら嫌でもわかりますけど」
あの時、あの瞬間に感じた確かな感覚は明らかに罪悪感のそれであった。とんでもない事をしたと、どうしようもない奴だと、そう自分で思った。
「あの時、貴方の瞳は今日、今のように潤んで零れ落ちそうなほど悲しげでした」
なんてことをしたのだろう、そう、子供が我に帰った瞬間のような。ほんの悪戯が取り返しのつかない過ちに変わった瞬間、それを目撃した子供のように。
「そんな目を見せられたら・・・もう放って置けなくなりました。だって、貴方はとってもか弱い所を敵だった私に見せたのだから」
あの時彼女は俺についていく決心を心の底から決めた。一人の女性として、たった一瞬の出来事ではなく一生の出来事として。
「女は守る生き物ですから。弱みを見せた貴方が悪いんですよ?あんな姿を見せられたら私は貴方を化け物だなんて思えない・・・例え何千、何万の人間を地獄に叩き落したとしても・・・貴方がそれを悲しみ続ける限り私は貴方を化け物とは思わない」
化け物は誰かを悲しみませんから。と彼女はそう言う。
「それに・・・私は今の貴方のような情けない姿の貴方も好きです」
「むぐ・・・」
「最低な発言だと・・・そう思いますが、私は私の価値が高くなることが嬉しくて仕方ありません・・・数千、数万の人を死に追いやった悲しみと私を傷つけた時の悲しみが同列である事に・・・私は少なくとも貴方の中で数万人分ですから」
「確かに・・・酷い話だ・・・」
彼女は微笑みを浮かべて俺の頭を抱き締めると無理矢理胸に顔を埋めさせる。
「元気でましたか?」
「元気になりすぎる、そろそろ離してくれ」
「嫌です・・・といったら?」
「たまには夜空の下でというのも一興かな」
「ごめんなさい調子にのりました!」
「ダメだ。弱気な俺を見たろ?見物料だ」
慌てて逃げ出した彼女の腕を掴むと俺はマントを地面に敷いてその上に彼女を押し倒した。
「ゆうべはおたのしみでしたね」
「どっから仕入れてきたそんなセリフ」
翌朝警察隊の面々に帰り際に冷やかされながら俺はこっそりと駐屯地へと帰ってくる。アウロラを背負ってきたのでちょっと遅くなってしまった。
「獣人は鼻が利きますから」
「つまりバレバレと」
そう考えると無茶苦茶恥かしい。しかし彼女にはまた助けられてしまった。俺はまだまだ未熟な部分が多いのだろう。しかし今の立場で俺はそんな事を言って入られない。だからこそ俺を支えてくれる彼女には真摯でいようと思う。
「陛下、一応言わせてもらいますが・・・お外でいたすのは不味いですよ」
「何度も言わなくても分かってるよ・・・」
これで何人目だ。まるでオバちゃんの井戸端会議並のスピードで広まっている。アウロラは顔が真っ赤になったまま俯いてしまっている。結局この拷問のようなやり取りは仕事がはじまるまで延々と続き、最終的には何人か殴ったかもしれない。
最初に出会った俺はまさしく悪鬼羅刹かの如く恐ろしい存在だったと彼女はいう。自害すら出来ず、敵対組織であったエルフに囲まれて生活を送ることを余儀なくされたとき彼女は心底絶望していたという。
「そんなにか」
「癒すといいながら私を嬲って楽しんでいるように見えたのでそれはそれは・・・」
「なんというか・・・すまん」
瓦礫に腰掛けて思い出す。とんでもない破廉恥行為だ。そして協力する事で命をどうにか永らえた所で起こったあの日。押し倒され、服を破かれて純潔を散らしたあの時の姿。
「こう言ってはどうかとも思いますが・・・男の本懐を遂げた瞬間ではありませんでしたか?」
「うーむ、それは・・・まあ、良かったという気持ちも無くはなかったが・・・」
「まあ、あんな表情をしていたら嫌でもわかりますけど」
あの時、あの瞬間に感じた確かな感覚は明らかに罪悪感のそれであった。とんでもない事をしたと、どうしようもない奴だと、そう自分で思った。
「あの時、貴方の瞳は今日、今のように潤んで零れ落ちそうなほど悲しげでした」
なんてことをしたのだろう、そう、子供が我に帰った瞬間のような。ほんの悪戯が取り返しのつかない過ちに変わった瞬間、それを目撃した子供のように。
「そんな目を見せられたら・・・もう放って置けなくなりました。だって、貴方はとってもか弱い所を敵だった私に見せたのだから」
あの時彼女は俺についていく決心を心の底から決めた。一人の女性として、たった一瞬の出来事ではなく一生の出来事として。
「女は守る生き物ですから。弱みを見せた貴方が悪いんですよ?あんな姿を見せられたら私は貴方を化け物だなんて思えない・・・例え何千、何万の人間を地獄に叩き落したとしても・・・貴方がそれを悲しみ続ける限り私は貴方を化け物とは思わない」
化け物は誰かを悲しみませんから。と彼女はそう言う。
「それに・・・私は今の貴方のような情けない姿の貴方も好きです」
「むぐ・・・」
「最低な発言だと・・・そう思いますが、私は私の価値が高くなることが嬉しくて仕方ありません・・・数千、数万の人を死に追いやった悲しみと私を傷つけた時の悲しみが同列である事に・・・私は少なくとも貴方の中で数万人分ですから」
「確かに・・・酷い話だ・・・」
彼女は微笑みを浮かべて俺の頭を抱き締めると無理矢理胸に顔を埋めさせる。
「元気でましたか?」
「元気になりすぎる、そろそろ離してくれ」
「嫌です・・・といったら?」
「たまには夜空の下でというのも一興かな」
「ごめんなさい調子にのりました!」
「ダメだ。弱気な俺を見たろ?見物料だ」
慌てて逃げ出した彼女の腕を掴むと俺はマントを地面に敷いてその上に彼女を押し倒した。
「ゆうべはおたのしみでしたね」
「どっから仕入れてきたそんなセリフ」
翌朝警察隊の面々に帰り際に冷やかされながら俺はこっそりと駐屯地へと帰ってくる。アウロラを背負ってきたのでちょっと遅くなってしまった。
「獣人は鼻が利きますから」
「つまりバレバレと」
そう考えると無茶苦茶恥かしい。しかし彼女にはまた助けられてしまった。俺はまだまだ未熟な部分が多いのだろう。しかし今の立場で俺はそんな事を言って入られない。だからこそ俺を支えてくれる彼女には真摯でいようと思う。
「陛下、一応言わせてもらいますが・・・お外でいたすのは不味いですよ」
「何度も言わなくても分かってるよ・・・」
これで何人目だ。まるでオバちゃんの井戸端会議並のスピードで広まっている。アウロラは顔が真っ赤になったまま俯いてしまっている。結局この拷問のようなやり取りは仕事がはじまるまで延々と続き、最終的には何人か殴ったかもしれない。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,385
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる