二度目の恋をしたいけど、こいつは絶対に運命の相手じゃない!!

永戸望

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どうやら私は運命の相手ではないらしい

気になるあの人

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「あ、サッカー部やってるやってる」

 私は、桜井という男子に借りパクされたノート奪還のため、彼が練習している、サッカー部のグラウンドまで来ていた。
 少しずつ落ちていく夕日の中、サッカーゴールのある土のグラウンドではサッカー部が、少し離れた端の方には、野球部のスペースがあった。

 私は、グラウンドの芝生のところから桜井君を探す。
 すると、奥の方で往復しながら走り込みをしている姿を見つけた。
 私は呼ぶために、一歩踏み出すと

「あれ。あなたもサッカー部の練習を見に来たの?」

 後ろから、声をかけられる。
 そこには、髪の毛を金髪に染め、クルクルに巻いた私より背の低い小柄な女子が立っていた。
 別に髪の毛の色に規則はないけど、目立ちすぎでは。

「いや、その。桜井君に少し用事が……」

「あ、萊斗《らいと》君に? ふ~ん? あのカッコつけ萊斗にこんな彼女が居たとは」

「いえただの友達……いやほぼ他人のクラスメイトです」

 私は速攻全力で否定する。その勘違いはされるとめちゃめちゃ不名誉だし困る。

「その様子じゃ、本当に嫌がられてる感じ? 萊斗ウケる! まあ萊斗君の行動は最初は若干引くよね」

 良かった。理解ある人らしい。
 
「あの、あなたは?」

「え、あたしの事? 私は3年2組、神城佳子《かみじょうかこ》よ。よろしくね」

「神城さんですね。あ、私は暗闇未華《くらやみみはな》と言います」

「暗闇《くらやみ》さん……変わった苗字ね」

「ははは……よく言われます」

「未華さんよろしくね」

 神城さんは、歯を出してニコッと笑う。とても、可愛い人だ……。派手な格好をしているが、童顔でとても可愛らしい。小動物のようだ。身長も150センチほどだろうか。

「……それで、神城さんはなんでサッカー部の練習を?」

「あたしの男友達がサッカー部にいるのよ。あいつがサッカーしてる姿が好きだから、よく見にくるのよ」

 神城さんは優しく微笑みグラウンドを方を見つめる。その先には、1人の男子が立っていた。周りの部員へ指示を送ったり、声掛けをしている。
 キャプテンなんだろうか。

 私もぼーっとグラウンドを見ていると、神城さんは私の方を向く。

「そうだ! 未華さんも一緒にサッカー部の練習見ない?」

「あ、私は桜井君に」

「うちの学校のサッカー部は弱小で、中々一緒に見る人が居ないのよね! ねえ、どう?」

「……わかりました。良いですよ。一緒に見ましょうか」

 私は神城さんの熱量に負けて、承諾する。この後予定があるわけでもないし、別に見て行っても支障はない。
 それに、彼女は悪い人では無さそうなので、仲良くなれそうな気がしたのだ。

「こうやって一緒に話せる同姓は初めてだわ! あ、まずサッカーというのは、あの白い枠の中にボールを入れ」

「それくらい知ってますよ」

    ◆

「おい桜井! 遅刻してきたからダッシュしてろ!」

「ごめんって上杉! ちょっと待ってこれキツくないか!?」

「つべこべ言わずとっとと走れー!」

 俺、桜井萊斗《さくらいらいと》は完全に忘れていたサッカーの練習にかなり遅刻して参加した。
 この学校のサッカー部は弱い。それは、教える顧問が居ない事、上の学年が弱かった事、人数が少ない事など様々な理由がある。3年生だって3人しか居ない。
 だから、参加してもしなくても対して変わらないのだが、今年は上杉が本気らしい。といっても、一回戦突破が目標だが。
 でも俺は、今たまらなく楽しかった。

 俺は、ノルマまで走り込みを終え、キャプテン上杉の元へ向かう。

「上杉、走り込み終わった。これからどうすんの?」

「おお桜井。これから、5対5のミニゲームをする。だから準備しとけ」

「りょーかい」

「それと」

「うん? どうした?」

 上杉は、グラウンドの端の方の芝生を指差す。
 
「あの佳子が女子と一緒にいるんだが……天変地異か?」

 そこには、遠くからでもよく目立つ金髪の佳子と、その隣には未華ちゃんがいた。

「あれ、未華《みはな》ちゃ……未華さんじゃん」

「知り合いか?」

「さっき図書室で一緒に勉強してたクラスメイトだよ」

「へえ。お前の差し金か」

「ちげえよ」

 なんでここに居るんだ。佳子と友達だったのか?
 いや、佳子からそんな話は聞いたことがない。

「もしや……俺に惚れて、勉強を切り上げて付いてきたな?」

「多分それだけは無いと思うぞ」

「酷くない!? 俺だって可愛い女の子にモテたいけど!?」

「喋らなければお前はモテるんだけどなぁ。人との距離感の取り方が致命的だからなぁ。空気読めないからなぁ」

「おいそれどう言う意味だよ」

 俺は上杉を問い詰めようとするが、そそくさと練習に戻り、後輩へ指示を出し始めた。
 仕方ない。未華ちゃんの事は後回しにするか。

    ◆

「ミニゲーム開始!」

 キャプテンの上杉さんの声を共に、笛が鳴りゲームがスタートする。

 私は、神城さんと芝生に座り、練習を眺める。

「風磨《ふうま》あいつカッコいいでしょ?」

「あの中心の人ですよね。確かにスラッとしてますね」

 神城さんが指す風磨と言う人は、サッカー部の部員達には「上杉さん」と呼ばれていた。

「あいつのサッカーしてる姿が好きなのよね。一生懸命やってて。昔から変わらないのよ」

「昔からの知り合いなんですか?」

「うん。あいつとは幼馴染よ。生まれた病院も同じだし、誕生日も1日違いなの」

「……幼馴染、ですか」

「腐れ縁だわ」

「……好き、なんですか?」

「どう、なんだろ」

 神城さんは地面を見ながら、優しく微笑む。

「私が、あいつから離れられないだけよ」

 離れられないだけ。その言葉が、ずっしりと心に重くのしかかる。

「……好きって気持ちは、伝えれるうちに伝えといた方が良いですよ神城さん」

「未華《みはな》さん、その言葉に凄く重みを感じるわ。あなたの経験談?」

「……ええ。経験談です」

 私は神城さんと見つめ合い、お互いフッと吹き出して笑う。
 だんだん冷え込んできた風が芝生を揺らし、2人の声を遠くへと流す。

「未華さん。あなたと仲良くなれそうな気がするわ」

「私もですよ」

 そう言うと、神城さんは立ち上がり、グラウンドの方に向けて叫ぶ。

「風磨《ふうま》ー! 萊斗《らいと》なんかに負けるなよー! 練習でも、勝て!」

 神城さんは叫び終わると、スッキリした様子で私を見てくる。

「未華さんもやらない?」

「絶対やりません」

 彼女の叫びが聞こえたのか、上杉さんのチームは桜井君のチームにバンバン点を入れ、6-1で上杉さんチームの勝ちで終わった。

    ◆

 試合終了後、練習終了時間となったので、片付けに入り始めた。
 俺は、着替えるために更衣室に戻ると、上杉が俺に寄ってくる。

「お、桜井お疲れさん」

「お疲れさん。……お前、佳子ちゃんパワーでやる気出しすぎじゃないか?」

「……いやいや。関係ないぞ。元々あれくらい出していた」

 上杉はそう言いながらも、俺から視線を逸らす。
 分かりやすいなこいつ。

 上杉はロッカーの中から眼鏡を取り出し装着する。

「おい桜井。そういや、お前の差し金の女子の所には行かなくて良いのか?」

「あ、そういえば。……ちょっくら行ってくるわ」

 俺はすっかり忘れていた未華ちゃんの事を思い出して、すぐに帰る用意をして更衣室から出た。

    ◆

「おーい、未華さんー!」

 私が神城さんと話していると、遠くから桜井君が走ってやってくる。

「どうしたの、こんな所に来て。もしかして俺を見に来てくれた?」

 桜井君はニコッと笑い、私の方を見つめてくる。
 私は、少しイラッとしたので端的に用件を話す。

「ノート返して」

「……あ」

 桜井君は、今思い出したように驚いて固まってしまう。

「萊斗《らいと》、借りパクしてたんだ」

 神城さんは冷たく桜井君に言う。
 桜井君は慌てた様子で、鞄を漁りノートを取り出す。

「行く前に返そうと思ってたのに、完全に忘れてたわマジでごめん」

「いえ。別に取り返せたので問題ないです」

 私はノートを受け取り鞄へ仕舞う。

「本当ごめんね未華ちゃん」

「ちゃん付けやめて下さい」

 私は冷たい目で桜井君を睨む。

「じゃあ、私が未華《みはな》さんのこと未華ちゃんって呼ぶー!」
 
 神城さんは私に飛び付き、ニコニコして言う。
 抱きしめられていて、中々身動きが取れない。

「……別に神城さんなら、良いですよ」

「やったー! ありがと未華ちゃん!」

「え、俺は?」

「嫌です」

「ええ……」

 桜井君は少し落ち込んだ演技をして、すぐに笑顔に戻る。
 やっぱり、この人は全体的に嘘っぽくて軽い。

「あ、未華ちゃん? 私の事も神城さんじゃなくて、佳子《かこ》って呼んでほしい!」

 未だに離れない神城さんに、熱いキラキラとした眼差しを向けられる。

「……分かった。佳子。よろしく」

「よろしく!」

「女子だけでイチャイチャしやがって……俺も混ぜてほしい」

 目の前に居た桜井君が何か言っていたが、私はスルーをした。
 
 その後、私は佳子とだけ連絡先を交換して家に帰宅した。

    ◆

「お姉ちゃん。お客さんが来てる」

「え、こんな時間に?」

 夜9時頃。お風呂に入りポカポカした気分でアイスを食べていると、誰かが来た。
 私は、玄関へと向かう。

「こんばんは~! 久しぶりですね先輩」

 ラフなTシャツに、短パンを履いている少女が立っていた。
 ツインテールの髪型は今でも健在で、私を上目遣いで見てくる。

「楓《かえで》ちゃん……こんばんは」

 彼女は、名取楓《なとりかえで》。現在うちの高校の2年生。つまり後輩。

 そして、去年。彼女は私と芽衣ちゃんと共に、《《湊《みなと》を争った人物だ》》。
 私以外の、負けたヒロインである。

「せんぱぁ~い。少し、お話しませんかぁ~?」

 彼女は満面の笑みで私に語りかける。
 どうやら、彼女の小悪魔っぷりは健在らしい。
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