二度目の恋をしたいけど、こいつは絶対に運命の相手じゃない!!

永戸望

文字の大きさ
3 / 11
どうやら私は運命の相手ではないらしい

気になるあの人

しおりを挟む
「あ、サッカー部やってるやってる」

 私は、桜井という男子に借りパクされたノート奪還のため、彼が練習している、サッカー部のグラウンドまで来ていた。
 少しずつ落ちていく夕日の中、サッカーゴールのある土のグラウンドではサッカー部が、少し離れた端の方には、野球部のスペースがあった。

 私は、グラウンドの芝生のところから桜井君を探す。
 すると、奥の方で往復しながら走り込みをしている姿を見つけた。
 私は呼ぶために、一歩踏み出すと

「あれ。あなたもサッカー部の練習を見に来たの?」

 後ろから、声をかけられる。
 そこには、髪の毛を金髪に染め、クルクルに巻いた私より背の低い小柄な女子が立っていた。
 別に髪の毛の色に規則はないけど、目立ちすぎでは。

「いや、その。桜井君に少し用事が……」

「あ、萊斗《らいと》君に? ふ~ん? あのカッコつけ萊斗にこんな彼女が居たとは」

「いえただの友達……いやほぼ他人のクラスメイトです」

 私は速攻全力で否定する。その勘違いはされるとめちゃめちゃ不名誉だし困る。

「その様子じゃ、本当に嫌がられてる感じ? 萊斗ウケる! まあ萊斗君の行動は最初は若干引くよね」

 良かった。理解ある人らしい。
 
「あの、あなたは?」

「え、あたしの事? 私は3年2組、神城佳子《かみじょうかこ》よ。よろしくね」

「神城さんですね。あ、私は暗闇未華《くらやみみはな》と言います」

「暗闇《くらやみ》さん……変わった苗字ね」

「ははは……よく言われます」

「未華さんよろしくね」

 神城さんは、歯を出してニコッと笑う。とても、可愛い人だ……。派手な格好をしているが、童顔でとても可愛らしい。小動物のようだ。身長も150センチほどだろうか。

「……それで、神城さんはなんでサッカー部の練習を?」

「あたしの男友達がサッカー部にいるのよ。あいつがサッカーしてる姿が好きだから、よく見にくるのよ」

 神城さんは優しく微笑みグラウンドを方を見つめる。その先には、1人の男子が立っていた。周りの部員へ指示を送ったり、声掛けをしている。
 キャプテンなんだろうか。

 私もぼーっとグラウンドを見ていると、神城さんは私の方を向く。

「そうだ! 未華さんも一緒にサッカー部の練習見ない?」

「あ、私は桜井君に」

「うちの学校のサッカー部は弱小で、中々一緒に見る人が居ないのよね! ねえ、どう?」

「……わかりました。良いですよ。一緒に見ましょうか」

 私は神城さんの熱量に負けて、承諾する。この後予定があるわけでもないし、別に見て行っても支障はない。
 それに、彼女は悪い人では無さそうなので、仲良くなれそうな気がしたのだ。

「こうやって一緒に話せる同姓は初めてだわ! あ、まずサッカーというのは、あの白い枠の中にボールを入れ」

「それくらい知ってますよ」

    ◆

「おい桜井! 遅刻してきたからダッシュしてろ!」

「ごめんって上杉! ちょっと待ってこれキツくないか!?」

「つべこべ言わずとっとと走れー!」

 俺、桜井萊斗《さくらいらいと》は完全に忘れていたサッカーの練習にかなり遅刻して参加した。
 この学校のサッカー部は弱い。それは、教える顧問が居ない事、上の学年が弱かった事、人数が少ない事など様々な理由がある。3年生だって3人しか居ない。
 だから、参加してもしなくても対して変わらないのだが、今年は上杉が本気らしい。といっても、一回戦突破が目標だが。
 でも俺は、今たまらなく楽しかった。

 俺は、ノルマまで走り込みを終え、キャプテン上杉の元へ向かう。

「上杉、走り込み終わった。これからどうすんの?」

「おお桜井。これから、5対5のミニゲームをする。だから準備しとけ」

「りょーかい」

「それと」

「うん? どうした?」

 上杉は、グラウンドの端の方の芝生を指差す。
 
「あの佳子が女子と一緒にいるんだが……天変地異か?」

 そこには、遠くからでもよく目立つ金髪の佳子と、その隣には未華ちゃんがいた。

「あれ、未華《みはな》ちゃ……未華さんじゃん」

「知り合いか?」

「さっき図書室で一緒に勉強してたクラスメイトだよ」

「へえ。お前の差し金か」

「ちげえよ」

 なんでここに居るんだ。佳子と友達だったのか?
 いや、佳子からそんな話は聞いたことがない。

「もしや……俺に惚れて、勉強を切り上げて付いてきたな?」

「多分それだけは無いと思うぞ」

「酷くない!? 俺だって可愛い女の子にモテたいけど!?」

「喋らなければお前はモテるんだけどなぁ。人との距離感の取り方が致命的だからなぁ。空気読めないからなぁ」

「おいそれどう言う意味だよ」

 俺は上杉を問い詰めようとするが、そそくさと練習に戻り、後輩へ指示を出し始めた。
 仕方ない。未華ちゃんの事は後回しにするか。

    ◆

「ミニゲーム開始!」

 キャプテンの上杉さんの声を共に、笛が鳴りゲームがスタートする。

 私は、神城さんと芝生に座り、練習を眺める。

「風磨《ふうま》あいつカッコいいでしょ?」

「あの中心の人ですよね。確かにスラッとしてますね」

 神城さんが指す風磨と言う人は、サッカー部の部員達には「上杉さん」と呼ばれていた。

「あいつのサッカーしてる姿が好きなのよね。一生懸命やってて。昔から変わらないのよ」

「昔からの知り合いなんですか?」

「うん。あいつとは幼馴染よ。生まれた病院も同じだし、誕生日も1日違いなの」

「……幼馴染、ですか」

「腐れ縁だわ」

「……好き、なんですか?」

「どう、なんだろ」

 神城さんは地面を見ながら、優しく微笑む。

「私が、あいつから離れられないだけよ」

 離れられないだけ。その言葉が、ずっしりと心に重くのしかかる。

「……好きって気持ちは、伝えれるうちに伝えといた方が良いですよ神城さん」

「未華《みはな》さん、その言葉に凄く重みを感じるわ。あなたの経験談?」

「……ええ。経験談です」

 私は神城さんと見つめ合い、お互いフッと吹き出して笑う。
 だんだん冷え込んできた風が芝生を揺らし、2人の声を遠くへと流す。

「未華さん。あなたと仲良くなれそうな気がするわ」

「私もですよ」

 そう言うと、神城さんは立ち上がり、グラウンドの方に向けて叫ぶ。

「風磨《ふうま》ー! 萊斗《らいと》なんかに負けるなよー! 練習でも、勝て!」

 神城さんは叫び終わると、スッキリした様子で私を見てくる。

「未華さんもやらない?」

「絶対やりません」

 彼女の叫びが聞こえたのか、上杉さんのチームは桜井君のチームにバンバン点を入れ、6-1で上杉さんチームの勝ちで終わった。

    ◆

 試合終了後、練習終了時間となったので、片付けに入り始めた。
 俺は、着替えるために更衣室に戻ると、上杉が俺に寄ってくる。

「お、桜井お疲れさん」

「お疲れさん。……お前、佳子ちゃんパワーでやる気出しすぎじゃないか?」

「……いやいや。関係ないぞ。元々あれくらい出していた」

 上杉はそう言いながらも、俺から視線を逸らす。
 分かりやすいなこいつ。

 上杉はロッカーの中から眼鏡を取り出し装着する。

「おい桜井。そういや、お前の差し金の女子の所には行かなくて良いのか?」

「あ、そういえば。……ちょっくら行ってくるわ」

 俺はすっかり忘れていた未華ちゃんの事を思い出して、すぐに帰る用意をして更衣室から出た。

    ◆

「おーい、未華さんー!」

 私が神城さんと話していると、遠くから桜井君が走ってやってくる。

「どうしたの、こんな所に来て。もしかして俺を見に来てくれた?」

 桜井君はニコッと笑い、私の方を見つめてくる。
 私は、少しイラッとしたので端的に用件を話す。

「ノート返して」

「……あ」

 桜井君は、今思い出したように驚いて固まってしまう。

「萊斗《らいと》、借りパクしてたんだ」

 神城さんは冷たく桜井君に言う。
 桜井君は慌てた様子で、鞄を漁りノートを取り出す。

「行く前に返そうと思ってたのに、完全に忘れてたわマジでごめん」

「いえ。別に取り返せたので問題ないです」

 私はノートを受け取り鞄へ仕舞う。

「本当ごめんね未華ちゃん」

「ちゃん付けやめて下さい」

 私は冷たい目で桜井君を睨む。

「じゃあ、私が未華《みはな》さんのこと未華ちゃんって呼ぶー!」
 
 神城さんは私に飛び付き、ニコニコして言う。
 抱きしめられていて、中々身動きが取れない。

「……別に神城さんなら、良いですよ」

「やったー! ありがと未華ちゃん!」

「え、俺は?」

「嫌です」

「ええ……」

 桜井君は少し落ち込んだ演技をして、すぐに笑顔に戻る。
 やっぱり、この人は全体的に嘘っぽくて軽い。

「あ、未華ちゃん? 私の事も神城さんじゃなくて、佳子《かこ》って呼んでほしい!」

 未だに離れない神城さんに、熱いキラキラとした眼差しを向けられる。

「……分かった。佳子。よろしく」

「よろしく!」

「女子だけでイチャイチャしやがって……俺も混ぜてほしい」

 目の前に居た桜井君が何か言っていたが、私はスルーをした。
 
 その後、私は佳子とだけ連絡先を交換して家に帰宅した。

    ◆

「お姉ちゃん。お客さんが来てる」

「え、こんな時間に?」

 夜9時頃。お風呂に入りポカポカした気分でアイスを食べていると、誰かが来た。
 私は、玄関へと向かう。

「こんばんは~! 久しぶりですね先輩」

 ラフなTシャツに、短パンを履いている少女が立っていた。
 ツインテールの髪型は今でも健在で、私を上目遣いで見てくる。

「楓《かえで》ちゃん……こんばんは」

 彼女は、名取楓《なとりかえで》。現在うちの高校の2年生。つまり後輩。

 そして、去年。彼女は私と芽衣ちゃんと共に、《《湊《みなと》を争った人物だ》》。
 私以外の、負けたヒロインである。

「せんぱぁ~い。少し、お話しませんかぁ~?」

 彼女は満面の笑みで私に語りかける。
 どうやら、彼女の小悪魔っぷりは健在らしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

うちの幼馴染がデレすぎてて俺の理性はもう限界。でも毎日が最高に甘いからもうどうでもいいや

静内燕
恋愛
相沢悠太の日常は、規格外の美少女である幼馴染、白石葵によって完全に支配されている。 朝のモーニングコール(ベッドへのダイブ付き)から始まり、登校中の腕組み、そして「あーん」が義務付けられた手作り弁当。誰もが羨むラブラブっぷりだが、悠太はこれを「家族愛」だと頑なに誤解(無視)している。 「ゆーたは私の運命の相手なんだもん!」と、葵のデレデレは今日も過剰の一途。周囲の冷やかしや、葵を狙う男子生徒のプレッシャーが高まる中、悠太の**「幼馴染フィルター」**はついに限界を迎える。 この溺愛っぷり、いつまで「家族」で通せるのか? 甘すぎる日常が、悠太の鈍感な理性を溶かし尽くす――最初からクライマックスの、超高濃度イチャイチャ・ラブコメ、開幕!

羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。

泉野あおい
恋愛
人の気持ちに重い軽いがあるなんて変だと思ってた。 でも今、確かに思ってる。 ―――この愛は、重い。 ------------------------------------------ 羽柴健人(30) 羽柴法律事務所所長 鳳凰グループ法律顧問 座右の銘『危ない橋ほど渡りたい。』 好き:柊みゆ 嫌い:褒められること × 柊 みゆ(28) 弱小飲料メーカー→鳳凰グループ・ホウオウ総務部 座右の銘『石橋は叩いて渡りたい。』 好き:走ること 苦手:羽柴健人 ------------------------------------------

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について

沢田美
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。 クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。

没落寸前でしたが、先祖の遺産が見つかったおかげで持ち直すことができました。私を見捨てた皆さん、今更手のひらを返しても遅いのです。

木山楽斗
恋愛
両親が亡くなってすぐに兄が失踪した。 不幸が重なると思っていた私に、さらにさらなる不幸が降りかかってきた。兄が失踪したのは子爵家の財産のほとんどを手放さなければならい程の借金を抱えていたからだったのだ。 当然のことながら、使用人達は解雇しなければならなくなった。 多くの使用人が、私のことを罵倒してきた。子爵家の勝手のせいで、職を失うことになったからである。 しかし、中には私のことを心配してくれる者もいた。 その中の一人、フェリオスは私の元から決して離れようとしなかった。彼は、私のためにその人生を捧げる覚悟を決めていたのだ。 私は、そんな彼とともにとあるものを見つけた。 それは、先祖が密かに残していた遺産である。 驚くべきことに、それは子爵家の財産をも上回る程のものだった。おかげで、子爵家は存続することができたのである。 そんな中、私の元に帰ってくる者達がいた。 それは、かつて私を罵倒してきた使用人達である。 彼らは、私に媚を売ってきた。もう一度雇って欲しいとそう言ってきたのである。 しかし、流石に私もそんな彼らのことは受け入れられない。 「今更、掌を返しても遅い」 それが、私の素直な気持ちだった。 ※2021/12/25 改題しました。(旧題:没落貴族一歩手前でしたが、先祖の遺産が見つかったおかげで持ち直すことができました。私を見捨てた皆さん、今更掌を返してももう遅いのです。)

王家に生まれたエリーザはまだ幼い頃に城の前に捨てられた。が、その結果こうして幸せになれたのかもしれない。

四季
恋愛
王家に生まれたエリーザはまだ幼い頃に城の前に捨てられた。

私の作るおにぎりが、騎士団の士気を異常に上げています(犯人は副団長)

星乃和花
恋愛
おにぎりを配っただけで、騎士団の士気が異常値になりました。 団長は警戒、監察部は呪術検査、国まで動きかけるのに――副団長だけが平然と断言。 副団長「彼女のご飯は軍事物資です」 私「えっ重い」 胃袋で落ちた策略家副団長の“最適化溺愛”に巻き込まれ、気づけば専属補給係(=婚約)寸前!? ほのぼの爆笑&甘々の騎士団ラブコメです。 (月水金21:00更新ー本編16話+後日談6話)

処理中です...