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どうやら私は運命の相手ではないらしい
新たに始まる運命の恋……?
しおりを挟む今日は一段と寒く、放課後の今は暖かい服装を身に纏っている人が多かった。
「……寒い」
私は、1人で机に座りぼーっと窓を見ていた。
窓枠だいぶ汚れてるなぁ。年季入りすぎだなこの学校。
三年生になってから1ヶ月ほど立って、今日は友達みんなが塾という事で、1人だった。私も塾入ろうかな。
そんな事考えながらも耳を澄ましていると、近くの席の湊と芽衣ちゃんの話が聞こえてくる。
「湊君? 本当に勉強する気があるのかしら」
「あるよもちろん! ……でも明日からというのは?」
「……はぁ。明日やろうは馬鹿やろうって未華《みはな》さんが言ってたわよ。それに、私と同じ大学行きたいなら、今からでも勉強しないと! それに月末にはもうテストがあるのよ?」
「……はい。そうですねすみません」
「という事で、今日は私の家で徹底的に勉強を叩き込んであげるわ」
「え!?」
「安心して。親切丁寧死なない程度を心がけるから。もし、夜遅くなっても……明日は休みだから泊まって行っても。ね?」
「死なない程度ってなんか怖いんだけど!?……っえ!? 泊まりって、流石にそれは……」
湊《みなと》はなにを想像したのか、顔を真っ赤にして天井を見上げる。
湊は何を血迷ったか、私の方をクルッと首を回し見てくる。
「未華! 良かったら一緒に」
「いや私は大丈夫。芽衣ちゃん、湊を徹底的に絞ってあげて」
私は即座に湊の言葉を遮り断る。
湊が私に助けを求めた瞬間、芽衣ちゃんから明らかに負のオーラが溢れ出ていた。
空気を読めない湊が悪い。勉強をしっかり教えてもらってこい。
私は心の中でそう呟き、教室からすぐさま出る。
あそこにいたら、湊が私に助けを求めてくるからだ。
行き場を失った私は、なんとなく図書室へと向かった。私も受験勉強をしなければいけない。
図書室の自習スペースは、かなりの人が使っていた。三年生が多い。一応進学校なので、三年生にもなれば受験勉強モードへとシフトする。
私も、自習スペースに座って教科書を広げて勉強を始める。
ペンの軽やかな音と時計の音。外から漏れてくる運動部の練習の声は、放課後らしさを全面に押し出す。その音は勉強意欲を底上げし、ペンが更に進む。
図書室で勉強するのはとても良いかもしれない。
「あの、隣いいっすか?」
「ひゃい!?」
急に話しかけられ驚き、変な声が出る。ハッとして、周りを見渡し頭を下げてから、話しかけてきた男子の方を向く。
「あ、どうぞどうぞ」
「ありがとう未華ちゃん」
男子は承諾を得ると、サッと座り勉強道具を用意し始める。
……ん? 今未華ちゃんって言わなかった?
私は、バレないように、隣に座った男子を見る。
スッとした顔立ちに、少し茶髪に染められた髪。
どこかで見たような……
私の視線に気づいたのか、その男子はこちらを向き、ニカッと笑う。
仕方ない。直接聞こう。
「あの、すみません。私あなたと話したことありましたっけ?」
「えっとね……。いや、未華《みはな》ちゃんとは初めてだよ」
「じゃあ、なんで名前知ってるんですか?」
「同じクラスになったじゃんかよ。覚えてくれよー! 桜井萊斗《さくらいらいと》だよ。知ってる?」
「……ん?……あー、はい覚えてますよ」
私は記憶の中を必死に探り、途中で諦める。
「その反応覚えてない人のやつ! 未華ちゃん冷たいわぁ……」
桜井萊斗と名乗った男子は大袈裟に悲しがる。
「初めて会った人に『ちゃん付け』で、しかも下の名前……人との距離感バグってます?」
「そっちもかなりズカズカくるね! 嫌いじゃない」
「私は苦手なタイプです」
「うわメンタルに来るわ……」
桜井さんは、常に笑いながらリアクションを取る。
距離の詰め方といい、女慣れしてそうな感じといい、あまり関わらないタイプの人だ。
私は、すぐ会話を切り上げ勉強へ戻る。桜井さんも、勉強しに来たのだから話してると迷惑になるだろう。
しばらく勉強に集中していると、隣から鞄を漁るガサガサという音が聞こえてくる。
「ねえねえ未華ちゃん」
「……なんですか?」
「筆箱を教室に忘れたからペン貸してくんない?」
「教室にあるなら取ってくれば良いのでは?」
「いやいやこの自習スペース人気だから、離れてる隙に取られちゃうよ」
私は周りを見渡す。
確かに、自習スペースは満員で、かなりの人気らしい。
私は仕方なく筆箱からペンと消しゴムを取り出して桜井さんへ渡す。
「ありがと、未華ちゃん」
私はすぐ勉強へと戻ろうとする。
しかし、
「未華ちゃん。授業聞き逃したからノート貸してくんない?」
「勉強する気ありますか!?」
私はつい、声を上げる。周りの視線が一気に注がれたので、すぐに頭を下げて小声で話す。
「ちょっと初めから図々しすぎじゃないですか?」
「そう? これが普通だけど。お願いだから貸してくれない?」
「えー……ほんと図々しいですね」
「お願い! ジュース一本あげるからどう?」
「……今だけですよ」
私は鞄からノートを取り出して渡す。
「ありがとう未華ちゃん」
「その『ちゃん付け』ムズムズするのでやめてください」
「そうか。……じゃあ、未華」
「ひゃ!?」
耳元で囁かれ、むず痒さが我慢できず私は後ろに勢いよくのけぞる。
「わざと耳に息吹きかけましたね!? うわ最低」
「ドキッとした?」
「……もしかしてこんなのが女子にウケると思ってるんですか? 脳内お花畑なんですか」
急に、今日認識したような男子に耳元で囁かれたら、感じるのは気持ち悪さだと思う。
凄く、ゾワゾワした。
「あれ。漫画じゃこういうのあったのにな」
「現実とフィクションを混合してるんですか? 虚しさだけが残るのでマジでやめといた方が良いですよ」
私は、妹の発言を思い出して自分も何か傷ついたがそこは気にしない事にする。
「ごめんごめん。未華さん。はい、これで良い?」
「はぁ……お好きにどうぞ」
私はため息を付き、勉強に戻る。
全く。なんなんだこの人。疲れが一気に溜まる。
しかし、その後ありがたい事にほとんど絡んでくる事なく、30分ほどが経つ。
「あ、未華さん筆記用具ありがと。俺はもうサッカーの練習行くから、また来週ね」
「え、はいまた来週」
桜井さんはそう言うとすぐ図書室から出て行ってしまった。
ほんと、なんだったんだろあの人……。
その後、10分ほど勉強して気付く。
あ、ノートを返してもらってない。明日は土曜日。ノート無しで週末を過ごすのは不安だ。
そういえば、サッカーの練習とか言っていたし、今から取りに行こうかな。
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