恋人以上の幼馴染と、特別な関係を築くまで

永戸望

文字の大きさ
31 / 37
幼馴染は譲れない

幼馴染は一番わかってる

しおりを挟む
「紬さん、準備は良いですか?」

「もちろん。痛い目を見るのは、リリアナさんの方ですよ」

「あはははは」

「うふふふふ」

 ショッピングモールでの買い物から、数時間後。私たち二人は、今私の家の前にいる。
 家の中に、結人がいるのは知っているので、後は玄関を開けるだけだ。
 二人で、誕生日プレゼントを大事に抱え、覚悟を決めた。

 ピンポーン。

 私は、呼び鈴を鳴らす。

「別に紬さんの家でもあるんですから、鳴らさないで入れば良いのでは?」

「別にいいでしょ! 心の準備の時間ちょいだいよ」

「別にそんな緊張しなくても良いじゃないですか。勝つ気持ちなんでしょう?」

「だとしても! 多少は緊張するのよ」

「まずは、ユートに謝ったほうがいいと思いますよ」

「うっ」

 その通りだった。
 ここ最近、私は少々傲慢で自分勝手な行動を取っていた。それで結人を傷つけてしまったのは事実。
 謝るしかない。

 リリアナさんと、軽い言い合いをしていると、ガチャリと扉が開く。

「あ、結人……最近は色々ご迷惑をかけてほんとに……」

「紬ちゃん、あの」

「へ?」

 私が頭を下げて、ここ最近の行動への懺悔をしていると、何故か女の子の声が聞こえた。
 顔をあげる。
 そこには、私の見知った顔が。

「……紬ちゃん、久しぶり。といっても、数週間ぶりだね」

「奈緒ちゃん……」

 秋元奈緒が、顔を覗かせていた。
 しかも何故か、サイズ違いのTシャツを一枚着て、髪をそこそこ濡らした状態。
 まるでお風呂上がり。

「紬さん、誰ですかこの女の人」

 リリアナさんは、ポカンとしながら首をかしげる。

「あはははは……」

 私は、笑うしかなかった。

    ◇

「……それでね、お父さんが偶然こっちに用事があるって言うから一緒に来たんだ」

「そ、そうなんだ。……なんで言ってくれなかったの?」

「驚かせようと思って! あ、結人くんには言ってたよ」

「誰ですかこの人」

「あれ、結人は?」

「結人くんは、今買い物行ってる」

「紬さん、だから」

「いやあ、奈緒ちゃんにこんなすぐに会えるなんて」

「うん、私もびっくり」
 
「なんでワタシを無視するんですか!?!?」

 なんだよもう……うるさいなぁ。
 
「あ、奈緒ちゃん紹介するね。この人は、転校生のリリアナさん」

「どうも、リリアナと言います。ユートの幼馴染です」

「こんにちわリリアナさん。私は、秋元奈緒です、ちょうど前年度に転校しちゃったので、入れ違いだね」

 よろしくねと、二人はニコッと笑う。
 一応、リリアナさんに釘刺しておこう。

「リリアナさんは、"元"幼馴染でしょ?」

「あら、ワタシの方が早いんですが」

「だから、早さなんて関係ないって」

「長さも関係ないんですよ」

「……おお、バチバチだね。結人くんも隅に置かないなぁ」

 リリアナと私が言い合い、それを奈緒ちゃんが眺めているという謎構図。

「というか、なんで奈緒ちゃん下着姿?? その服、結人のじゃん」

「えっと……その」

「もしかして奈緒さんとユートは……」

「違う違う! 車が水溜まり踏んで私に思いきりかかっただけだから!」

 すると、

「ただいま……って、リリアナと……紬も居るのか……」

 結人が帰ってきた。手には沢山の荷物。
 そして何故か嫌そうな顔をした。

「ちょっと結人? なんで今一瞬嫌そうな顔したの!?」

「いや別にしてないよ!」

 私が問い詰めると、結人は慌てて否定する。
 逆にそれが怪しい。

「絶対してた! ね、奈緒ちゃんも見たでしょう?」

「うーん、見てなかった」

「リリアナさんは!?」

「ええ、バッチリ見ましたよ。紬さんを見て嫌そうな顔してました」

「別に私見てじゃないでしょ」

 ね? と、結人の方をチラッと見ると「はぁ……」とため息をついていた。
 え……嘘。

 私が硬直して、目が潤んできた時、奈緒ちゃんが「そういえば!」と手を叩いた。

「リリアナさんと紬ちゃん、今日はお二人で何処か行ってきたの?」

「え? ……あ、うん」

「もうこのさい、さっさと渡しましょうかね」

 と、リリアナさんはカバンから包みを取り出した。

「ユート、これお誕生日プレゼントです」

「え!? 誕生日プレゼント? 俺に?」

「ハイ、今日紬さんと一緒に買いに行ったんですよ」

「そうだったんだな……あ、俺リリアナにプレゼント用意してないや」

「別にワタシは気持ちだけで充分ですよ」

「……開けて、良いか?」

「もちろん」

 結人が包みを開けると、中には腕時計が入っていた。

「そんなにお高いものじゃないですけど、ユートが腕時計欲しいって言ってたので」

「マジか! 助かる! 最近壊れちゃってさ」

 結人は嬉しそうに時計を見つめる。
 その前に、待って欲しい。

「え、まってリリアナさん。……結人に欲しいもの聞いてたの?」

 これ、プレゼント勝負って話だったよね?
 ズルくない?
 リリアナさんは、ニヤリを笑う。

「別に、欲しいものリサーチがダメとはひと言も言ってませんが?」

「なっ」

 これはひどい。
 え、そんなの勝ち目ないじゃん……。

「……あ、ユート。紬さんは紬さんでプレゼント用意したんですよ」

「え、そうなのか?」

「え、ええ……」

 私は、鞄の中のプレゼントを強く握りしめる。
 二時間という時間は、あまりに短すぎた。
 あれもダメ、これもダメと色々考えすぎて、空回りした。
 ……本当に、これで良いのだろうか。

「あー、やっぱり今日じゃなくて」

「紬ちゃん」

 奈緒ちゃんが、私の背中に手を当てる。

「プレゼントは、気持ちが大事。でしょ?」

 奈緒ちゃんは、私の首のネックレスに触れる。

 それは、死ぬほどセンスのカケラも存在しない星型の飾りのネックレス。
 昔、結人がお小遣いをはたいてくれたもの。

 私は、毎回このネックレスは服と合わない……とか、恥ずかしいと思いながらも、なんだかんだ気に入っているのだ。

「そうだね。そうだよ、ただ幼馴染にあげるだけじゃん」

 気持ちのこもったプレゼントなら、良いんだよ。

「はい、結人。……誕生日、おめでとう」

 私は、決死の思いでプレゼントを渡した。
 そして結人は、プレゼントの中身を見て固まった。

「…………え」

「どれどれ……って紬ちゃん???」

「ワタシにも見せてくださ……うわぁ」

「「「気持ちが重い」」」

「え!?」

 三人になにか哀れな目で見られ、私は膝から崩れ落ちる。
 ……は、流石にダメだったかなぁ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

両隣の幼馴染が交代で家に来る

みらいつりびと
恋愛
両親がタイへ行く。 父親が3月上旬に上司から命じられた。4月1日からバンコクで勤務する。 うちの父と母はいわゆるおしどり夫婦というやつで、離れては生きていけない……。 ひとり暮らしの高校2年生森川冬樹の世話をするため、両隣の美しい幼馴染浅香空と天乃灯が1日交代で通ってくる。 冬樹は夢のような春休み期間を過ごし、空と灯は火花を散らす。 幼馴染三角関係ラブストーリー。全47回。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

繰り返す夜と嘘 〜【実録】既婚の僕と後輩の彼女、あの夜のキスから始まった13年の秘密〜

まさき
恋愛
結婚して半年の僕と、同じ職場の彼女。 出会った頃は、ただの先輩と新入社員だった。   互いに意識しながらも、 数年間、距離を保ち続けた。   ただ見つめるだけの関係。   けれど――   ある夏の夜。 納涼会の帰り道。   僕が彼女の手を握った瞬間、 すべてが変わった。   これは恋でも、友情でもない。   けれど理性では止められない、 名前のない関係。   13年続いた秘密。 誓約書。 そして、5年の沈黙。   これは――   実際にあった「夜」の記録。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について

沢田美
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。 クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。

処理中です...