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幼馴染は譲れない
デートしよっか
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誕生日騒動の次の日。
「ねえ結人。私とデートしよっか?」
「は?」
「拒否権はないから。はい、レッツゴー!」
紬に朝叩き起こされ、俺は家を出た。
紬と二人きりでのお出かけ。いったい、いつぶりだろうか。
「どこ行くんだよ」
「良いから、ついてきて」
俺は、紬に言われたまま後ろをついていく。
そのまま歩いて数十分。ついたのは駅。
紬に倣うまま切符を買い電車へ乗った。
「そんな遠いところ行くのか?」
「一時間くらいかな」
俺と紬は、電車に揺られる。
田舎の、1両編成の電車。乗客は俺たち以外にいなくて、水田と畑が続く景色が窓越しに見える。
ガタンガタン、ガタンゴトン。
いかにも電車な音を立てて、電車は進んでいく。
隣に座る紬は、軽く口角を上げたまま正面を見続けていた。
……こいつ、まつ毛意外と長いんだな。
じっと見つめる事はなかなかなかったので、新しい発見だった。
そんな俺の目線が気になったのか、眉を顰めて「なに?」と紬は聞いてくる。
「……いや、別に」
「本当に?」
「本当に」
「本当かなぁ……」
紬が、グイッと近づいてくる。
パッと、柑橘系の香りが舞う。家のシャンプーな匂い。
「なに、もしかしてドキドキしてるの?」
「…………いや、別に」
「本当に?」
紬はそういうと身体を寄せて密着してくる。
「おー、心臓の音聞こえるよ」
「近い近い。やめろ」
「なんでー?」
「……そういう、思わせぶりなのやめろよ。虚しくなる」
「今日は、デートなんだし良くない?」
「いや、だとしても俺と紬は幼馴染ってだけだろ」
「そっか。ごめんね」
紬は元の位置へと戻った。
あっさりと引き下がった紬。
なんか、すごく後悔した。
それから数十分。
俺と紬は電車から降りて目的地へと歩く。
「着いたよ」
そこは、スポッチャだった。
ゲーセンボーリング運動場他様々なものが複合された施設。
なるほど。ここで遊びたかったんだな。
「結人、勝負しよっか」
◇
「よっしゃスペア!」
「おー、すごい」
俺と紬は、ボーリングで対決することにした。
ここまで四回までの成績では、俺の方が少しだけリードしている状態。
別に二人ともそこまでボーリングやらないので、かなり点数は伸びてないが……。
「じゃあ、次は私だね」
紬は飲んでたジュースを置いて立ち上がると、ボールを持つ。
「おい紬、ボール間違ってるぞ」
紬が手にしたのは、俺の使っていたボール。紬の選んだものより重いやつ。
「いや、これでいいんだよ」
紬は勢いよくボールを投げる。そしてそのボールが綺麗にカーブして……。
ピンを全て倒した。
「ストライク! やったー!」
「おー、凄いな」
「でしょでしょ! ……結人のおかげかな?」
ニヒヒと笑う紬。
その笑顔は、すごく……。
「可愛い」
「へ?」
「ああ! 次は俺の番だ! よし、ストライク決めるぞー」
「結人、さっきのもう一回言ってみて!」
「何も言ってねぇ」
「嘘つき」
俺は慌ててボールを投げた。
そのボールは吸い込まれるように端へと転がり、1ピンも倒さず暗闇の中へ。
そこから、俺はほとんどのピンを倒せず、紬はストライク連発と、圧倒的な差で負けた。
◇
「……ああ! 惜しい! あとちょっとで取れたのに」
「惜しかったな、よしここら辺で」
「いや、あと一回やれば取れる気がする」
「マジで沼ってるからやめておけ!」
その後、俺たちはクレーンゲームのコーナーへ。
紬はあるぬいぐるみを取ろうとしてから10分。
一向に取れる気配のないまま、お金だけが溶けていった。すでに5000円は投入している。
「ここまで来たら引き下がれないじゃん!」
「それが戦略だ! やめろ、お金無くなるぞ」
「これ取ったら終わりにするから! 負けっぱなしじゃ終われないでしょ!」
こんな所で勝負師なところ出さないで欲しい。
「よし、ここ!」
ぬいぐるみをしっかり捉えたアーム。そのままぬいぐるみは上に上がると、移動する瞬間バンと落下した。
「ああ! 惜しい!」
「……うん、そうだな」
いやこれ明らかにアームのパワー落ちてただろ。これ、絶対取れないって。
「よし、もう一回だ!」
「いや、次は俺がやるよ」
これ以上、紬の財布からお金が減るのは見てられない。
俺は100円を投入し、ボタンを押す。
「ここだ!」
アームはぬいぐるみを真っ直ぐ捉える。さっきの紬と全く同じ状況。
が、さっきとは違いガッツリ掴んだままそのまま獲得ポイントへ移動した。
「……あ、取れた」
うっそだろ。マジで取れちゃった。
偶然にも、確定で取れるタイミングが来たんだろうなぁ。
俺はぬいぐるみを取り、紬に渡す。
「……どうも」
なんか紬がそっけない。
パッと顔を見ると、何か釈然としないの様子。
「自分で取りたかった……」
あ、はいそうでしたか。
すみませんでした。
「でも、結人ありがとうね。大切にするよ」
「それはどうも」
「結人に、何か取ってあげようか?」
「いや絶対沼るから遠慮しておく」
◇
午後6時。
「そろそろ良い時間だし、帰るか?」
「いや、もう一つ行きたい所がある。OK?」
「まあ良いけど」
俺は紬の後をついていく。
歩いて10分。
海に着いた。
夕暮れの海は、赤く染まっていた。
「ここに来たかったのか?」
「うん」
紬は、俺の方へくるりと向く。
そして……。
「ねえ、結人。……今まで、ごめんね」
「なにが?」
「私の身勝手に、付き合わせて。迷惑だったでしょ」
「別に、迷惑なんて思ってねえよ」
確かにたまに腹の立つことはあったが、迷惑なんて思ってない。
「だから、ここで」
紬は、ニコっと笑う。
「私の気持ちを聞いて欲しい」
「ねえ結人。私とデートしよっか?」
「は?」
「拒否権はないから。はい、レッツゴー!」
紬に朝叩き起こされ、俺は家を出た。
紬と二人きりでのお出かけ。いったい、いつぶりだろうか。
「どこ行くんだよ」
「良いから、ついてきて」
俺は、紬に言われたまま後ろをついていく。
そのまま歩いて数十分。ついたのは駅。
紬に倣うまま切符を買い電車へ乗った。
「そんな遠いところ行くのか?」
「一時間くらいかな」
俺と紬は、電車に揺られる。
田舎の、1両編成の電車。乗客は俺たち以外にいなくて、水田と畑が続く景色が窓越しに見える。
ガタンガタン、ガタンゴトン。
いかにも電車な音を立てて、電車は進んでいく。
隣に座る紬は、軽く口角を上げたまま正面を見続けていた。
……こいつ、まつ毛意外と長いんだな。
じっと見つめる事はなかなかなかったので、新しい発見だった。
そんな俺の目線が気になったのか、眉を顰めて「なに?」と紬は聞いてくる。
「……いや、別に」
「本当に?」
「本当に」
「本当かなぁ……」
紬が、グイッと近づいてくる。
パッと、柑橘系の香りが舞う。家のシャンプーな匂い。
「なに、もしかしてドキドキしてるの?」
「…………いや、別に」
「本当に?」
紬はそういうと身体を寄せて密着してくる。
「おー、心臓の音聞こえるよ」
「近い近い。やめろ」
「なんでー?」
「……そういう、思わせぶりなのやめろよ。虚しくなる」
「今日は、デートなんだし良くない?」
「いや、だとしても俺と紬は幼馴染ってだけだろ」
「そっか。ごめんね」
紬は元の位置へと戻った。
あっさりと引き下がった紬。
なんか、すごく後悔した。
それから数十分。
俺と紬は電車から降りて目的地へと歩く。
「着いたよ」
そこは、スポッチャだった。
ゲーセンボーリング運動場他様々なものが複合された施設。
なるほど。ここで遊びたかったんだな。
「結人、勝負しよっか」
◇
「よっしゃスペア!」
「おー、すごい」
俺と紬は、ボーリングで対決することにした。
ここまで四回までの成績では、俺の方が少しだけリードしている状態。
別に二人ともそこまでボーリングやらないので、かなり点数は伸びてないが……。
「じゃあ、次は私だね」
紬は飲んでたジュースを置いて立ち上がると、ボールを持つ。
「おい紬、ボール間違ってるぞ」
紬が手にしたのは、俺の使っていたボール。紬の選んだものより重いやつ。
「いや、これでいいんだよ」
紬は勢いよくボールを投げる。そしてそのボールが綺麗にカーブして……。
ピンを全て倒した。
「ストライク! やったー!」
「おー、凄いな」
「でしょでしょ! ……結人のおかげかな?」
ニヒヒと笑う紬。
その笑顔は、すごく……。
「可愛い」
「へ?」
「ああ! 次は俺の番だ! よし、ストライク決めるぞー」
「結人、さっきのもう一回言ってみて!」
「何も言ってねぇ」
「嘘つき」
俺は慌ててボールを投げた。
そのボールは吸い込まれるように端へと転がり、1ピンも倒さず暗闇の中へ。
そこから、俺はほとんどのピンを倒せず、紬はストライク連発と、圧倒的な差で負けた。
◇
「……ああ! 惜しい! あとちょっとで取れたのに」
「惜しかったな、よしここら辺で」
「いや、あと一回やれば取れる気がする」
「マジで沼ってるからやめておけ!」
その後、俺たちはクレーンゲームのコーナーへ。
紬はあるぬいぐるみを取ろうとしてから10分。
一向に取れる気配のないまま、お金だけが溶けていった。すでに5000円は投入している。
「ここまで来たら引き下がれないじゃん!」
「それが戦略だ! やめろ、お金無くなるぞ」
「これ取ったら終わりにするから! 負けっぱなしじゃ終われないでしょ!」
こんな所で勝負師なところ出さないで欲しい。
「よし、ここ!」
ぬいぐるみをしっかり捉えたアーム。そのままぬいぐるみは上に上がると、移動する瞬間バンと落下した。
「ああ! 惜しい!」
「……うん、そうだな」
いやこれ明らかにアームのパワー落ちてただろ。これ、絶対取れないって。
「よし、もう一回だ!」
「いや、次は俺がやるよ」
これ以上、紬の財布からお金が減るのは見てられない。
俺は100円を投入し、ボタンを押す。
「ここだ!」
アームはぬいぐるみを真っ直ぐ捉える。さっきの紬と全く同じ状況。
が、さっきとは違いガッツリ掴んだままそのまま獲得ポイントへ移動した。
「……あ、取れた」
うっそだろ。マジで取れちゃった。
偶然にも、確定で取れるタイミングが来たんだろうなぁ。
俺はぬいぐるみを取り、紬に渡す。
「……どうも」
なんか紬がそっけない。
パッと顔を見ると、何か釈然としないの様子。
「自分で取りたかった……」
あ、はいそうでしたか。
すみませんでした。
「でも、結人ありがとうね。大切にするよ」
「それはどうも」
「結人に、何か取ってあげようか?」
「いや絶対沼るから遠慮しておく」
◇
午後6時。
「そろそろ良い時間だし、帰るか?」
「いや、もう一つ行きたい所がある。OK?」
「まあ良いけど」
俺は紬の後をついていく。
歩いて10分。
海に着いた。
夕暮れの海は、赤く染まっていた。
「ここに来たかったのか?」
「うん」
紬は、俺の方へくるりと向く。
そして……。
「ねえ、結人。……今まで、ごめんね」
「なにが?」
「私の身勝手に、付き合わせて。迷惑だったでしょ」
「別に、迷惑なんて思ってねえよ」
確かにたまに腹の立つことはあったが、迷惑なんて思ってない。
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