才女な私の秘密が、ギャルにバレてしまった〜もうカラダで払うしかなくない!?〜

永戸望

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普通以下のワタシが才女になるまで①

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ここで一つ。私、影山空奈の過去の話をしよう。
 
 今では、学年で1番目立つ私だが。
 高校に入る前の私は、100人中100人が見下すようなザ・陰キャだった。
 中三の、夏。

「空奈ー! 起きなさい! 学校遅れるわよ」

「……起きたくない」

「そんなこと言ってないで早く起きなさい」

 朝からこんな調子。
 耳元でフライパンとベラでバンバン音を立てられたので仕方なくおき、だらしない顔をしながら洗面所へ向かう。

 もう数ヶ月床屋へ行ってないので、前髪が顔を覆い尽くし、完全に陰の空気をまとう私。

 ちゃっちゃと顔を洗いリビングへ向かうと、すでに食卓にご飯が並んでいて、私の分だけ残っている。

「あれ、パパと羽美は?」

「パパなら、もう仕事は行きましたよ。羽美もさっき家を出ました」

 私の妹、羽美。三つ下で今小学六年生の彼女は、私よりしっかりしている。

「ほら、早く食べちゃって。ママも仕事すぐ行かなきゃだから」

「ふぁ~い」

 覇気のない返事をして、私は黙々とご飯を口へと運ぶ。
 
 ご飯を食べながら、仕事へ行く準備をするママを横目で見る。
 私のママは、バリバリのキャリアウーマンだ。
 会社でリーダー的ポジションでバリバリ働きながら、家事も完璧にこなしてしまう超人。パパも頑張ってるけど、少し頼りない。

 いつも私に「あなたもやれば出来るのに」と言われるが、あの人が超人なだけで私には無理。

「それじゃあ空奈、家を出るときは鍵を閉めてね」

「ふぁ~い」

 私は、ママが家を出ていくのを見送った後、ゆっくりと学校へ行く準備を始めた。

    ◇

 学校に行くと、いつも私の机は陽キャの軍団に占拠されている。

「それでさぁ、マジでウザくて」

「ウケるw」

「それはヤバいってw」
 
 生産性のない会話は聞くに耐えない。
 あー、マジで滅んでくれねえかな。


 ということで、私は方向転換。
 教室を出て保健室へ向かった。

「先生、おはようございます」

 保健室の椅子で、白衣を着たメガネの女性が座っている。保健室の佐々木先生。
 なんで白衣なのかは、未だに謎。

「あら空奈さんおはよう。今日もこっちに来たの? やっぱり教室ダメだった?」

「いるだけで頭が悪くなりそうですね」

「空奈ちゃん、本当にいつも辛辣というか、刺々しいわね」

「ということで、今日もここで自習したいんですけどいいですか?」

「ええ。急な病人が来るまでなら、問題ないわよ」

「ありがとうございます」

 私は丸いテーブルの上に勉強道具を出し、勉強する準備を始める。
 いわゆる不登校ではないのだが、私はクラスに馴染めず保健室に良くきていた。別にいじめられている訳でもなく、私の問題ということで大事にはせず、こうやって自由に選択できるようになっている。

「空奈ちゃん、紅茶いる?」

「あ、欲しいです」

「ん。了解」

 私は先生から紅茶を貰うと、勉強を始める。幸い、私は教科書を読めば理解できる地頭は持っていたのでこんな登校の仕方でも成績は取れていた。

 私は黙々と勉強を進める。先生は椅子に腰掛けると、本を開いて静かに読み始めた。
 私はこの空間が好きだった。
 先生と二人。こうやって静かに時間を過ごす。
 学校で唯一の楽しみだった。

 1時間くらい経った時だろうか。
 先生が、本をしまうと私の方へ向き直した。

「そういえば空奈ちゃん。あなた進路はどうするの?」

 ドキッ。
 突然の言葉に、私は動きを止める。

「まだ決めてません」

「進路希望調査始まってるわよね?」

「うっ……」

 その通り、もう進路を決めないといけない時期なのだが、私は全く決まっていなかった。
 まあおそらく進学になるが、どこに行くかが問題だった。

「先生、心配なの。空奈ちゃんが、卒業した後どうするのか。……だって、ここにはもう来れなくなるでしょう?」

 中学を卒業してしまえば、先生の所へ来ることは出来なくなる。
 その後、私はどうするのか。

「ちゃんと、考えないとダメよ?」

「分かってますよ」

 ……進路、ね。
 どうしようかなぁ……。

    ◇

 学校が終わった後、私は1人寂しく帰路についていた。
 進路について考えていたら疲れてしまった。早く帰って寝たい。

 そんなことを考えながら、道を曲がった時、

「あっ!? 危ない!!」

「へ?」

 ゴツンッ!!
 勢いよく走ってきた人と激突し転んだ。

「いったぁ……」

 私はゆっくり顔を上げる。
 ふわりとした、白い髪が視界に移る。

「ああ!!! ごめんなさい!! 大丈夫でしたか!?」

 私とぶつかったのは、1人の少女。大慌てで私に謝り倒している。

「あ、はい。……だい、じょうぶです」

「本当に大丈夫ですか!? ああ! ごめんなさい」

「大丈夫です」

 涙目になりながら謝る少女。
 そんな姿を見ながら、私の脳裏には一つのことで頭が一杯だった。

「かわいい……」

「はい?」

「ああ、なんでもないです」

 つい出た言葉を慌てて隠す。

 ……その少女は、めちゃくちゃ可愛かった。普段美人を見ると嫉妬心でネガティブになりがちな私だが、彼女のことは純粋に可愛いと思った。
 というか、次元が違った。

 太陽が反射し輝く白い髪と肌。ぱちくりとしたその瞳。
 その全てに、私は心を奪われる。

「……あの、大丈夫ですか?」

 ジロジロ見ていて不審がられたのか、不思議そうな顔で少女は私を見てくる。

「あ、はい、ええ、もう、なにも問題ないです」

 普段の5割増しでキョドる私。

「ほんと、ごめんなさい。……あ、私急いでるので、それでは!」

 少女は、颯爽と走り去ってしまった。

「何あの子……めちゃめちゃ可愛かったな」

 ぶつかってしまって、頭がおかしくなったのかと思うほど、その感想しか出てこなかった。

 私は、地面に何かが落ちてるのを見つける。それは、とても綺麗なペンダントだった。
 いかにも高そうな見た目だ。

「もしかして、あの子の?」

 そう思って、慌てて振り返るがすでに彼女の姿はなかった。

    ◇

 こうして、私と少女……のちに私の親友となる有栖川咲良は出会ったのだ。

 先に言っておくが、別に私は女の子が好きであるというわけではない。絶対、うん。
 ただ、彼女はそんな私ですら好意を抱かざるおえない人物だった。

 ……と、私の過去の話を少ししたが、今はそれどころではなかった。

 ギャルである松木美流子に脅され、どこかへ連れていかれる予定。
 あー、怖い。

【咲良との出会いの続きはまたいつか】
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