才女な私の秘密が、ギャルにバレてしまった〜もうカラダで払うしかなくない!?〜

永戸望

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ギャルに猫被りがバレてるのはキツい

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 屋上では、膝をつき戦意喪失する私と、ボイスレコーダーを片手に立つ松木美流子の姿があった。

 クールな才女として築き上げた地位が、一人のギャルによって脅かされそうになっていた。
 
 松木は、ボイスレコーダーをさらに再生し、さっきの私の発言をリピートした。

『何あの可愛い生き物!? 天使!? 天使なのかな??? きっと天使なんだよ、うん。はぁーー永久保存したい~!! あんな澄んだ目で見られたら尊すぎて成仏するわ~。なんであの年まであの純粋さを保てるの? お姫様なのかな? 私なんかが関わった汚れちゃうよダメだ邪な考えしちゃ嫌われる……』
『咲良ちゃん大好き! あー、会えて良かった、きっと運命。これが宿命。きっと神のくれたプレゼント。 こんな天使をくれてありがとう神様! ……あ、でも咲良ちゃんはまだ私のものじゃないしな……。あれは人間国宝だよ、うん。絶対汚しては行けない。神聖なものなんだよ。……………………でも、私の手でめちゃくちゃにしてぇなぁ』

 改めて聞くと、私ってかなりヤバい人だなぁ……。
 自分の恥ずかしい発言を何度も聞かされるとか、拷問では?

「影山さん。教室のイメージと全然違うんだね笑」

 フッと嘲笑うギャル。
 やめろその笑い方は陰キャに効く。

「終わった…………」

 3ヶ月掛けて作り上げた私のイメージが……。
 私の、ドン引きセリフが屋上に流れる。
 改めて聞くと、これは酷い。もし、影でこんな事言われてたら普通に距離を置く。てかよくこれ3ヶ月も隠せてたな私。褒めてあげたい。

 これを私に聞かせた松木はケラケラと笑って何回も再生する。

「あははははははは! 口数少なくてクールな影山さんが、裏ではこんな感じなんだ」

「やめて……もうほんと死にたい」

 公開処刑である。
 あー、もう。これは挽回のしようがない。
 あー……どうしようか。転校するしかないか? いやでもそんなお金ないしな……。

 脳をフル回転させ、この状況を打開する方法を考える。
 目の前のギャルはこの学校の理事長の娘。そして私は親友への変態発言を録音された。
 ……あれ、詰んでね?

「…………よし、分かった。」

 覚悟はもう決めた。 

「あー! もう! そうだよ! それが私ですけど何か悪い!?」

 ……私は、開き直る事にした。
 もう、いっそのこと仮面を全て捨ててしまえ。


「あ、開き直った笑 ウケる」

「別に良いでしょ!? もう隠しても意味ないじゃん」

「ウケる」

「はぁ!? 誰のせいだと思ってんの!? お前のせいだからな!?」

「ウケる笑」

「ウケるしか言わねえなこのボキャブラ不足ギャル!」

 凄くみっともないなと思いながらも、叫ばずにはいられなかった。
 久々に、素を出した気がする。

 カーンコーンカーンコーン。

「あっ、やばいチャイム鳴ってる……」

 ギャルに気を取られ、時間を見ていなかった。まずい、遅刻だ。
 私は慌てて、屋上の扉を開けようとする。

「あれ影山さん、何勝手に行こうとしてるの?」

 ギャルは、私の手を掴む。
 長めのネイルが私の腕に軽く突き刺さってて痛いです。

「行きますけど何か!?」

「いやまずこの面白発言についてみっちり話を」

「それは放課後とかにして!」

 こいつより、まずは授業だ。

「んー、まあいいや。オッケー、放課後ね」

 ギャルはポケットからケータイを取り出すとポチポチとケータイに予定を書き込んでいく。
 ……今時ケータイ使ってるギャルとか珍しっ。
 って、それどころじゃない。
 私は急いで教室へと向かった。

    ◇

 私は、先生にそれっぽい理由を話して先に着く。

 隣の席の咲良が、心配して話しかけてくる。色々動揺しているが、ひとまず普段通りを心がける。
 才女モードON。

「空奈ちゃん、大丈夫ですか?」

「え? ……ええ、大丈夫よ」

「顔が青白いですよ? もしかして体調悪いとか」

「ほんと、大丈夫だから。うん、すこぶる元気よ」

「ふこぶる……?」

「あ、とっても元気って意味よ」

「そうなんですね! なら良かったです。もし何かあったら、いつでも相談してくださいね!」

「あ、ありがとう」

 咲良の優しさに、胸がチクリと痛む。
 結局、ノートが1ページも埋まらなかった。
 
 放課後。

「ぜんっぜん頭に入ってこなかった……」

 一日中、今朝の事を考えていて集中出来なかった。これは、復習時間を増やさないとなぁ……。
 教室を見渡すと、人は数人いるだけで、しんとしていた。ちなみに咲良は再テストである。
 机で項垂れていると、カツカツと、私に近づく足音が。

「影山~ちゃん♪」

「げっ」

 その声の主は、私の悩みの種。今朝現れた史上最悪の敵。
 松木美流子、その人だった。

「『げっ』はダメでしょ才女様。お口が悪うございまして?」

 ぷぷぷと、馬鹿にするギャル。「ほら、いつもみたいにクールに決めないと」と耳打ちをしてくる。
 やべえ殴りたくなってきた。
 ……だがここは教室。我慢するんだ私。偉いぞ私。
 派手な姿の松木は目立つようで、教室に残っていたクラスメイト達は私たちの動向を伺っている。

「……松木さん、何かようですか?」

「この後暇?」

「暇かと聞かれたら暇じゃないです」

「じゃあ、この後ちょっとついてきて」

「暇じゃないんですが」

「ボイスレコーダー」

「分かりました! 仕方ないですね! 行きましょう!」

 うう……完全に弱みを握られた。

「……じゃ、行こっか」

 そして、私はギャルに連れられ、ある場所へと向かった。
 
    
    ◇

 一方その頃、再テスト中の咲良は。

「えっと……? うーん…………あれれれ? 個数聞かれてるのに絶対マイナスになっちゃうよ?」

 テストに悪戦苦闘していた。

「空奈ちゃん…………助けて」

 絞り出した声はどこにも届かず、静かな教室に終了を合図するタイマーの音が鳴り響いた。
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