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第22話 お祭りを楽しもう!
しおりを挟む「アランくん! ボクは闇の組織と戦うために、もっと魔導書をたくさん読んで強くなりますっ!」
「……う、うん、頑張って」
「今日は各地の色んな魔法屋さんがお店を出しているみたいですから、早速見に行って来ますねっ! 必殺技も考えておきますっ! さようならっ!」
「バイバイ……」
闘技場を後にした俺は、使命に目覚めてしまったレスターに手を振って別れる。
「意外と暴走するタイプなんだな……そこら辺はドロシアちゃんと同じか……」
俺はそんなことを呟きながら、ひとまず外で待っている皆の所へ向かうのだった。
*
外へ出てすぐ、俺は先生やプリシラ達に発見されて取り囲まれた。
「よくやったなアラン君! もっとも、私は絶対に優勝すると思っていたがな! はっはっはっ!」
ダリア先生はそう言いながら俺の背中をばしばしと叩く。
「あ、ありがとうございます」
痛い。声が震える。
「うふふ、さすがはアランちゃんね。ご褒美に……先生が何でもしてあ・げ・る」
「えっ……!」
メリア先生は右腕をがっちりと掴み、胸を押し当ててくる。
「アラン様の家庭教師としての自覚をお持ちくださいね? メリア先生」
「ひぃっ!?」
しかし、背後でニナが目を光らせていたのですぐに離れた。
「節度を持ってアラン様に接してください」
「わ、分かってるわよぉ……。そんな怖い顔をしないでニナちゃん……!」
「怖い顔なんてしていませんよ」
実にざんねん――ではなく、ありがとうニナ。
「ねえねえ、優勝したってことは……お兄さまがさいきょーってことだよね~? いいな~! 私もさいきょーになりたい!」
「プリシラ……」
一応、来年はプリシラも出場できるが……正直、病弱な妹が野蛮な悪役貴族やら悪役令嬢やらと戦うところなんて見ていられないぞ! 何かあったらどうする!
「だめ! プリシラはこんな野蛮なことしない方がいいよ!」
「えーっ! けちー!」
プリシラは口をとがらせて言った。
「もう、そんなことを言ったらプリシラちゃんから嫌われてしまうわよ?」
「それでもダメです!」
「わからずやーっ!」
多少嫌われようが、こればかりは譲れない! この話は終わりだ!
「そんなことより……ニナも応援ありがとう!」
「ご無事で何よりです、アラン様。優勝……おめでとうございます」
俺は、先ほどからやや疲れ気味に見えるニナに対してお礼を言う。
「アラン様が攻撃を受けそうになるたびに……心臓がドキッとして……口から飛び出してしまいそうでした……」
「それは大変だね……あはは……」
どうやら無理をして応援してくれいたらしい。
確かに、俺もプリシラが試合をするとなったら直視できる気がしないし……それでも応援してくれたニナには感謝しないといけないな。
「優勝できたのはニナが応援してくれたおかげだよ」
「あ、アランしゃまぁ……っ!」
……えっと、それから――三人にもちゃんとお礼を言っておかないと。
「プリシラも応援ありがとう」
「いつもはかわいいけど、今日はかっこ良かったよ! お兄さま!」
「…………そ、そうなんだ」
そう言われると素直に喜べないような、複雑な気分になるぞ。いつもは威厳が足りないということか……。
「――メリア先生とダリア先生もありがとうございました。優秀な先生方が教えてくださったおかげで、それほど苦戦はしませんでした」
とりあえず痴女――じゃなくてステキな先生方には、それっぽいお世辞を言っておく。
「お二人が僕の先生で良かったです」
二人とも色々とヤバいけど優秀なのは事実だしな。媚びは売れるときに売っておこう!
「……結婚しましょう」
「えぇっ?!」
まずい、メリア先生がさっきより真剣な顔つきでやばいこと言ってる!
「ずっと一緒に暮らすのよっ!」
「あ、あの、メリア先生……?」
いや、住み込みで家庭教師やってるんだからもう一緒に住んでるだろ。
これ以上なにを求めてるっていうんだ……!
「た、助けてくださいダリア先生っ!」
追い詰められた俺は、もう一人の先生に助けを求める。
「……………………ッ!」
「いけませんアラン様。あまりの尊さにダリア先生が立ったまま気絶してしまいました」
そんなことある?
「――それと、メリア先生は目に余るので今後の処遇をアラン様のお父様に相談させていただきます」
「にっ、ニナちゃんっ?!」
「いい大人が十歳の子に求婚しないでください。人の道を外れています」
「…………! か、返す言葉もないわ……!」
……かくして、大会は無事に終了したのだった。
*
――力比べの儀が終わったからといって、精霊祭が終わるわけではない。
むしろこれからが本番である。
「よし、遊ぶぞ!」
様々な屋台が出店していて賑わう広場へとやってきた俺は、そんな独り言を呟いた。
プリシラは前日に話した通りニナや友達と一緒、メリア先生とダリア先生は痴女と間違われて衛兵に捕まってるし、お父さまは精霊祭を運営する側なので忙しい。
……従って、一緒に祭りをまわれるような相手はいないのである!
しかしソロプレイは俺の得意分野だ。
「遊ぶぞー……」
べっ、別に……寂しくなんかないんだからねっ! 勘違いしないでよバカっ!
「しかし……すごいなこれは」
マガルム帝国は広大な領土を有する多民族国家であるため、様々な文化が混在している。
首都であるエルヴァールの付近はごく普通の西洋風ファンタジーといった感じだが、その外側では地域ごとに和風やら中華風やら中東風やらの民族が暮らしていて、それぞれ土地を治めているのだ。
従って、こういった各地から人が集まるお祭りが首都で開かれると、色々な文化的背景を持つ人種が混ざってカオス状態になる。要するに何でもありだ。
具体的に言うとたこ焼きの横でケバブやらクレープやらが売られていたりする。
おまけに、道行く人々は猫耳のカチューシャやらキョンシーのお札やら狐の尻尾やらをくっ付けて仮装しており、俺のように普通の格好をしている人間の方が少数派だった。
極めつけに街路樹にはクリスマスツリーのような装飾が施されている。
夏祭りとハロウィンとクリスマスが同時に来たかのようなカオスさ……どうやらこれが「精霊祭」の真の姿のようである。
何でも詰め込めば良いってもんじゃないだろ! 風情のカケラもない!
「これは流石に……」
ちょっとやり過ぎ感があってドン引きしていたその時。
「あああっ!」
突然、背後で大きな叫び声が聞こえてきた。
「……うん?」
ふと気になって振り返ると、そこに立っていたのはドロシアである。
明らかに怒っている顔だ。
「見つけたあああッ!」
「ひぃっ……!」
まずい。一番面倒な相手と遭遇してしまった……!
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