23 / 43
第23話 ドロシアの告白
しおりを挟む
「ごきげんようっ!」
両手を大きく振って大股で歩きながら俺の近くまで寄ってきたドロシアは、口を尖らせてこちらを睨みつけながら丁寧な挨拶をしてくる。
「ご、ごきげんよう……」
それはどういう感情の元に発せられる挨拶なんだ。
「えっと……き、奇遇だねぇドロシアちゃん。僕はちょっと忙しいからこれで――」
「待ちなさいッ!」
俺は居た堪れなくなってその場から逃げ出そうとしたが、ドロシアに腕をがっしりと掴まれて引き止められてしまう。
「いっ、痛いよドロシアちゃん。手を離してくれないかな?」
「待ってよ……」
「へ……?」
すると今度はびっくりするくらい弱々しい声で引き止めてきたので、俺は思わず動きを止めてしまう。
怒ったりシュンとしたり、情緒が不安定すぎるぞ。怖いからもっと落ち着いてくれ。
「認めるわ……あなたの勝ちだって。――この私を負かしたヒトは……あなたが初めてよ」
それ、もはや悲しきモンスターのエピソードだぞ。
「ドロシアちゃん……」
そういえば原作だと悲しきモンスターだったわ。
「どうして……逃げようとするの?」
俺が困惑して何も返事をせずにいると、今度はそう問いかけてくる。
「私のこと……そんなに嫌いかしら?」
「…………」
思わせぶりな目でこちらを見つめてくるドロシアの顔は、まるで恥じらう乙女のように赤かった。
「話すのもいや……?」
これに対しては満面の笑みで「うんっ!」と答えるのが通常のアラン・ディンロードではあるが、流石にそれをしたらまずいことは理解できている。
闘技場で喧嘩になった時の経験が生きたな。
「そういうわけじゃないよ。……ただ、僕の方が嫌われてるんじゃないかと思ってね」
「だったら話しかけたりしないわよっ!」
「えぇ……?」
急に怒鳴られたんだが……。
「ばか、どんかん、わからずや……っ!」
「結局のところ僕を罵倒しに来たってことでいいかい?」
毎日コレの相手をさせられるレスターも大変だな。
「……ちっ、違う……っ!」
怒っているのかは不明だが、いよいよドロシアの顔が赤くなりすぎて茹で上がってしまいそうである。
「じゃあなに? 引きとめたってことは、僕に何か用事があるんだろう?」
「ある……」
「それを教えて欲しいな」
俺が言うと、ドロシアは俯いたまま黙り込んでしまった。
やれやれ、聞き出すのも一苦労である。もしかして、人が多いと言いづらいことなのだろうか?
「……ここに立ち止まってても他の人の邪魔になっちゃうし、場所を移そうか」
「うん……」
やけに素直に頷いてくれたので、俺は掴んだままになっているドロシアの手を引っ張って広場から離れるのだった。
*
「さてと、ここならいいでしょ?」
良さそうな場所を探して歩き回った末に、街を一望できる見晴らしの良い高台へと辿り着いた俺は、再びドロシアの方へ向き直る。
「すっ、すてきな場所だと……思うわ」
「ん、そう……?」
なんだか言葉選びがらしくないな。文句の一つでも言ってくると思ったんだが。
「ここなら、話してもいい…………」
「じゃあ教えて」
ドロシアは一度俺から顔をそらし、街の景色を眺めながら深く深呼吸する。
「……すーっ……はぁ」
そして、何やら決心した様子で向き直りこう前置きした。
「一回しか言わないからっ、ちゃんと聞きなさいよっ!」
「うん、分かった」
とことん勿体ぶるな。試合の疲れも溜まってるし、ちょっと眠くなってきたぞ。
「………………」
俺が口を閉じて必死にあくびを堪えていると、ドロシアは大きな声で言った。
「わ、私をっ! あなたのお嫁さんにしなさいっ!」
「……ん?」
それはつまり……どういうことだ?
「あ、あのねっ! 私……結婚するなら自分より強い男の子が良いって……前から思ってたの……」
「はい?」
「私は……その、家柄も悪くないし……振る舞いだってもっとお淑やかになれるよう頑張るから……許嫁としては申し分のない相手だと思うわっ!」
「うん?」
もしかしてこれ、告白されてる?!
「せっ、責任……取ってよ……」
「えーーーーーーーっ!?」
あまりの衝撃に俺は絶叫した。
「……嫌なら……そう言って」
上目遣いで俺のことを見ながら、小さな声で不安げに呟くドロシア。
……少なくとも、前世の俺は好きだの何だのといったやり取りが非常に苦手だった。とても硬派な男だったからな! 嘘じゃないぞ!
――しかし、今はアラン・ディンロード。
「……嫌じゃないよ、ドロシアちゃん。僕は情熱的な女の子が大好きなんだ」
「ふぇえっ?!」
それまで微塵も思っていなかった台詞が、スラスラと出てきた。
「むしろ一目惚れさ。初めて会った時からずっと可愛いと思ってたよ! だから嬉しいなぁ」
さっきまで心の中でドロシアのことをあんなに貶していたのに! 野蛮な猿だとか悲しきモンスターだとか思ってたのに!
今の俺、すげぇクズだ……!
「そ、それじゃあ……!」
「うん。大きくなったら結婚しようかドロシアちゃん――約束だよ」
「…………っ! ーーーーーーッ!」
目を大きく見開き、声にならない声で叫んで喜ぶドロシア。
「今日のお祭り、どこを見て回りたい? 初めてのデートなんだからドロシアちゃんの好きな所にしなよ」
「う、うん……っ!」
――勝手に出てくる言葉をそのまま喋っていると、俺はいつの間にかドロシアとデートすることになっていた。
アラン・ディンロード……なんて恐ろしいヤツなんだ!
両手を大きく振って大股で歩きながら俺の近くまで寄ってきたドロシアは、口を尖らせてこちらを睨みつけながら丁寧な挨拶をしてくる。
「ご、ごきげんよう……」
それはどういう感情の元に発せられる挨拶なんだ。
「えっと……き、奇遇だねぇドロシアちゃん。僕はちょっと忙しいからこれで――」
「待ちなさいッ!」
俺は居た堪れなくなってその場から逃げ出そうとしたが、ドロシアに腕をがっしりと掴まれて引き止められてしまう。
「いっ、痛いよドロシアちゃん。手を離してくれないかな?」
「待ってよ……」
「へ……?」
すると今度はびっくりするくらい弱々しい声で引き止めてきたので、俺は思わず動きを止めてしまう。
怒ったりシュンとしたり、情緒が不安定すぎるぞ。怖いからもっと落ち着いてくれ。
「認めるわ……あなたの勝ちだって。――この私を負かしたヒトは……あなたが初めてよ」
それ、もはや悲しきモンスターのエピソードだぞ。
「ドロシアちゃん……」
そういえば原作だと悲しきモンスターだったわ。
「どうして……逃げようとするの?」
俺が困惑して何も返事をせずにいると、今度はそう問いかけてくる。
「私のこと……そんなに嫌いかしら?」
「…………」
思わせぶりな目でこちらを見つめてくるドロシアの顔は、まるで恥じらう乙女のように赤かった。
「話すのもいや……?」
これに対しては満面の笑みで「うんっ!」と答えるのが通常のアラン・ディンロードではあるが、流石にそれをしたらまずいことは理解できている。
闘技場で喧嘩になった時の経験が生きたな。
「そういうわけじゃないよ。……ただ、僕の方が嫌われてるんじゃないかと思ってね」
「だったら話しかけたりしないわよっ!」
「えぇ……?」
急に怒鳴られたんだが……。
「ばか、どんかん、わからずや……っ!」
「結局のところ僕を罵倒しに来たってことでいいかい?」
毎日コレの相手をさせられるレスターも大変だな。
「……ちっ、違う……っ!」
怒っているのかは不明だが、いよいよドロシアの顔が赤くなりすぎて茹で上がってしまいそうである。
「じゃあなに? 引きとめたってことは、僕に何か用事があるんだろう?」
「ある……」
「それを教えて欲しいな」
俺が言うと、ドロシアは俯いたまま黙り込んでしまった。
やれやれ、聞き出すのも一苦労である。もしかして、人が多いと言いづらいことなのだろうか?
「……ここに立ち止まってても他の人の邪魔になっちゃうし、場所を移そうか」
「うん……」
やけに素直に頷いてくれたので、俺は掴んだままになっているドロシアの手を引っ張って広場から離れるのだった。
*
「さてと、ここならいいでしょ?」
良さそうな場所を探して歩き回った末に、街を一望できる見晴らしの良い高台へと辿り着いた俺は、再びドロシアの方へ向き直る。
「すっ、すてきな場所だと……思うわ」
「ん、そう……?」
なんだか言葉選びがらしくないな。文句の一つでも言ってくると思ったんだが。
「ここなら、話してもいい…………」
「じゃあ教えて」
ドロシアは一度俺から顔をそらし、街の景色を眺めながら深く深呼吸する。
「……すーっ……はぁ」
そして、何やら決心した様子で向き直りこう前置きした。
「一回しか言わないからっ、ちゃんと聞きなさいよっ!」
「うん、分かった」
とことん勿体ぶるな。試合の疲れも溜まってるし、ちょっと眠くなってきたぞ。
「………………」
俺が口を閉じて必死にあくびを堪えていると、ドロシアは大きな声で言った。
「わ、私をっ! あなたのお嫁さんにしなさいっ!」
「……ん?」
それはつまり……どういうことだ?
「あ、あのねっ! 私……結婚するなら自分より強い男の子が良いって……前から思ってたの……」
「はい?」
「私は……その、家柄も悪くないし……振る舞いだってもっとお淑やかになれるよう頑張るから……許嫁としては申し分のない相手だと思うわっ!」
「うん?」
もしかしてこれ、告白されてる?!
「せっ、責任……取ってよ……」
「えーーーーーーーっ!?」
あまりの衝撃に俺は絶叫した。
「……嫌なら……そう言って」
上目遣いで俺のことを見ながら、小さな声で不安げに呟くドロシア。
……少なくとも、前世の俺は好きだの何だのといったやり取りが非常に苦手だった。とても硬派な男だったからな! 嘘じゃないぞ!
――しかし、今はアラン・ディンロード。
「……嫌じゃないよ、ドロシアちゃん。僕は情熱的な女の子が大好きなんだ」
「ふぇえっ?!」
それまで微塵も思っていなかった台詞が、スラスラと出てきた。
「むしろ一目惚れさ。初めて会った時からずっと可愛いと思ってたよ! だから嬉しいなぁ」
さっきまで心の中でドロシアのことをあんなに貶していたのに! 野蛮な猿だとか悲しきモンスターだとか思ってたのに!
今の俺、すげぇクズだ……!
「そ、それじゃあ……!」
「うん。大きくなったら結婚しようかドロシアちゃん――約束だよ」
「…………っ! ーーーーーーッ!」
目を大きく見開き、声にならない声で叫んで喜ぶドロシア。
「今日のお祭り、どこを見て回りたい? 初めてのデートなんだからドロシアちゃんの好きな所にしなよ」
「う、うん……っ!」
――勝手に出てくる言葉をそのまま喋っていると、俺はいつの間にかドロシアとデートすることになっていた。
アラン・ディンロード……なんて恐ろしいヤツなんだ!
136
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる