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第30話 覚醒アラン
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「……なによ」
俺に呼び止められたドロシアは、目元を拭う素振りをしながら振り返る。
「僕……ドロシアちゃんのこと絶対幸せにする!」
「……はぁ?」
刹那、周囲の空気が凍り付いたのが分かった。おかしいな、氷魔法使いのレスターはこの場に居ないはずだが。
「僕のことを好きだって言ってくれた女の子はみんな幸せにするから……行かないでよっ!」
「はっ? はぁあああああああああああッ?!」
先ほどまで泣いていたはずなのに、いつの間にか顔を真っ赤にして怒っている様子のドロシア。
「いや、それは違うじゃろ……?!」
対するフウコは、青ざめた顔をして俺からさっと距離を取った。どうやら選択肢を間違えたらしい。
おかしいな。味方をも欺き続けたアランの卓越した話術は何処へ?
「やっぱり素敵……! でもアタシ以外の女の子のことは幸せにしなくていいけど……」
……しかしナビーラの好感度は少しだけ上がったみたいなので、フウコの分と合わせて差し引きゼロだな!
「いっ、今更なに言ってるのよッ! しかも『みんな』って……!」
「僕を信じてドロシアちゃん!」
「火弾ッ!」
突如としてドロシアが放った魔法が、俺の腹部に直撃して爆ぜる。
「ふぐッ!」
気が付くと、俺は派手に吹き飛ばされていた。
「あ、アランーっ!」
視界がぐるぐると回転し、フウコの叫ぶ声が聞こえる。
「こ……殺しに来てる威力だ……!」
ふらつきながら起き上がると、ドロシアは既に目の前まで接近していた。
「ふざけないでよ……! 嘘つきのくせにッ!」
全力で頬をはたかれ、パチンという音が鳴り響く。
「…………もう、ドロシアちゃんには嘘つかないよ」
「それも嘘っ!」
今度は胸倉を掴まれて押し倒され、上に乗られた状態で往復ビンタされた。
「嘘つきぃっ!」
そろそろ走馬灯が見えてくる頃だ。
まさか本来の破滅ルートよりも早く死ぬことになるなんてな。
「………………」
「ばかぁっ! さいてーっ!」
ドロシアにべちんべちんと頬を叩かれながら、命の危機を感じていたその時。
「――――――っ!」
毎日鍛錬を続けていた俺は、ドロシアの連続攻撃に一瞬の隙が生じているのを見切ってしまった。
同時に、天才的(?)な頭脳が逆転の一手を閃く。
――すると身体は反射的に動いた。
「きゃあっ?!」
振り下ろされる直前のドロシアの手を掴み、動きを封じた状態で上体を起こす。
「な、なによ――いやぁっ!」
向こうが動揺している間に両手を掴んで押し倒し、形勢はいつの間にか逆転していた。
「騙すようなことして……泣かせちゃってごめんね、ドロシアちゃん」
「離してっ!」
手足を必死そうにじたばたと動かしてもがくドロシア。
「責任は……とるから……僕のこと……気が済むまで好きにしていいから……」
「……だから……なんだっていうのよぉっ!」
「だから泣かないで」
俺はそう言って、ドロシアに無理やり口づけをした。
「んむっ?! んーーーーーーーーっ!」
ドロシアは目を大きく見開き、顔を真っ赤にして暴れる。
「なんと!?」
驚いた様子で声を上げるフウコ。
「い、いやあああああああっ!」
あまりにもショッキングな光景を目の当たりにして悲鳴を上げるナビーラ。
「んっ……んんっ……!」
少ししてドロシアが抵抗をやめたところで俺は顔を離し、こう言った。
「好きだよ! ドロシアちゃん!」
別に追い詰められて自棄を起こしたわけではない……とも言い切れないが、俺がこんな蛮行に及んだのには理由がある。
「あっ、あぁあっ……!」
「これからも泣かせちゃうかもしれないけど! 絶対に幸せにするから! 最低な僕を許して!」
よく考えなくともアランは中々の美少年なのだ。
すでに詰んでいる状況で無理に言葉を重ねるよりも、唐突な色仕掛けで思考力を奪った方が効果的だと踏んだのである。
だが失敗すれば今度こそ確実に殺されるだろう。実に分の悪い賭けだ。
やっぱり俺は自棄を起こしているらしい!
――さて、ドロシアの返事は?
「さいていすぎ……だいっきらい……しんじゃえぇっ!」
終わった。
「……で、でもっ……やっぱりだいしゅきぃ……っ!」
どっちだよ。
「もうだめ……」
「ドロシアちゃんっ?!」
結局のところ、ドロシアは矛盾する言葉を残して気絶した。あまりの負荷に脳が耐えきれなかったのだろう。
……この勝負は引き分けといったところか?
「わらわは……一体何を見せられておるのじゃ……?」
一連の出来事に対し、ごもっともな意見を発するフウコ。
「アタシは認めていないわ……!」
事態はひとまず一件落着かと思ったのだが、まだナビーラが居た。
「アランはアタシだけのもの……! 全員……呪ってやるっ!」
「……ナビーラちゃん」
俺は意識を失ってしまったドロシアをその場に寝かせ、今度はナビーラの方に近づいていく。
「とっ、止めても無駄……! 他の女とあんなことするなんて……絶対に――んんんんっ?!」
そして、ごちゃごちゃ言っているナビーラにも口づけをした。
「……最低のクズになるのは、僕一人だけでいい。ナビーラちゃんはずっと優しい女の子でいて」
「ひ、ひんっ……!」
「分かってくれるよね……?」
「……アタシのこと……そんなに愛してくれるなら……しゅっ、しゅきにして良いわ……っ!」
ナビーラはそう言い残し、初めて見るくらい顔を真っ赤にして倒れた。
「あ、あわわわ……!」
惨劇の目撃者となってしまったフウコは、両手を口元へやりながら後ずさる。
そこにいつもの余裕ぶった感じはない。
「えっと……フウコちゃんにもしないと平等じゃないよね?」
俺はそう問いかけながら、ゆっくりとフウコとの距離を詰めていく。
「ま、待てっ! わらわは元から容認しておったじゃろ!?」
「うん。好きだよフウコちゃん」
「こんなところで――んむうううううううっ?!」
そして、嫌がるフウコを押さえつけて熱烈な口づけをした。
「ばっ、ばかものぉ……!」
ふらふらとよろめき、その場で腰を抜かすフウコ。
「すけべっ! はれんちっ! へんたいっ! うぅ……」
彼女も散々俺を罵倒した後、勝手に茹で上がって意識を失う。
「生き残ったぞ……! この地獄を!」
――かくして、俺は修羅場を潜り抜けたのだった。
まさか命の危機に瀕して覚醒するとは……実に王道的な展開だな!
俺に呼び止められたドロシアは、目元を拭う素振りをしながら振り返る。
「僕……ドロシアちゃんのこと絶対幸せにする!」
「……はぁ?」
刹那、周囲の空気が凍り付いたのが分かった。おかしいな、氷魔法使いのレスターはこの場に居ないはずだが。
「僕のことを好きだって言ってくれた女の子はみんな幸せにするから……行かないでよっ!」
「はっ? はぁあああああああああああッ?!」
先ほどまで泣いていたはずなのに、いつの間にか顔を真っ赤にして怒っている様子のドロシア。
「いや、それは違うじゃろ……?!」
対するフウコは、青ざめた顔をして俺からさっと距離を取った。どうやら選択肢を間違えたらしい。
おかしいな。味方をも欺き続けたアランの卓越した話術は何処へ?
「やっぱり素敵……! でもアタシ以外の女の子のことは幸せにしなくていいけど……」
……しかしナビーラの好感度は少しだけ上がったみたいなので、フウコの分と合わせて差し引きゼロだな!
「いっ、今更なに言ってるのよッ! しかも『みんな』って……!」
「僕を信じてドロシアちゃん!」
「火弾ッ!」
突如としてドロシアが放った魔法が、俺の腹部に直撃して爆ぜる。
「ふぐッ!」
気が付くと、俺は派手に吹き飛ばされていた。
「あ、アランーっ!」
視界がぐるぐると回転し、フウコの叫ぶ声が聞こえる。
「こ……殺しに来てる威力だ……!」
ふらつきながら起き上がると、ドロシアは既に目の前まで接近していた。
「ふざけないでよ……! 嘘つきのくせにッ!」
全力で頬をはたかれ、パチンという音が鳴り響く。
「…………もう、ドロシアちゃんには嘘つかないよ」
「それも嘘っ!」
今度は胸倉を掴まれて押し倒され、上に乗られた状態で往復ビンタされた。
「嘘つきぃっ!」
そろそろ走馬灯が見えてくる頃だ。
まさか本来の破滅ルートよりも早く死ぬことになるなんてな。
「………………」
「ばかぁっ! さいてーっ!」
ドロシアにべちんべちんと頬を叩かれながら、命の危機を感じていたその時。
「――――――っ!」
毎日鍛錬を続けていた俺は、ドロシアの連続攻撃に一瞬の隙が生じているのを見切ってしまった。
同時に、天才的(?)な頭脳が逆転の一手を閃く。
――すると身体は反射的に動いた。
「きゃあっ?!」
振り下ろされる直前のドロシアの手を掴み、動きを封じた状態で上体を起こす。
「な、なによ――いやぁっ!」
向こうが動揺している間に両手を掴んで押し倒し、形勢はいつの間にか逆転していた。
「騙すようなことして……泣かせちゃってごめんね、ドロシアちゃん」
「離してっ!」
手足を必死そうにじたばたと動かしてもがくドロシア。
「責任は……とるから……僕のこと……気が済むまで好きにしていいから……」
「……だから……なんだっていうのよぉっ!」
「だから泣かないで」
俺はそう言って、ドロシアに無理やり口づけをした。
「んむっ?! んーーーーーーーーっ!」
ドロシアは目を大きく見開き、顔を真っ赤にして暴れる。
「なんと!?」
驚いた様子で声を上げるフウコ。
「い、いやあああああああっ!」
あまりにもショッキングな光景を目の当たりにして悲鳴を上げるナビーラ。
「んっ……んんっ……!」
少ししてドロシアが抵抗をやめたところで俺は顔を離し、こう言った。
「好きだよ! ドロシアちゃん!」
別に追い詰められて自棄を起こしたわけではない……とも言い切れないが、俺がこんな蛮行に及んだのには理由がある。
「あっ、あぁあっ……!」
「これからも泣かせちゃうかもしれないけど! 絶対に幸せにするから! 最低な僕を許して!」
よく考えなくともアランは中々の美少年なのだ。
すでに詰んでいる状況で無理に言葉を重ねるよりも、唐突な色仕掛けで思考力を奪った方が効果的だと踏んだのである。
だが失敗すれば今度こそ確実に殺されるだろう。実に分の悪い賭けだ。
やっぱり俺は自棄を起こしているらしい!
――さて、ドロシアの返事は?
「さいていすぎ……だいっきらい……しんじゃえぇっ!」
終わった。
「……で、でもっ……やっぱりだいしゅきぃ……っ!」
どっちだよ。
「もうだめ……」
「ドロシアちゃんっ?!」
結局のところ、ドロシアは矛盾する言葉を残して気絶した。あまりの負荷に脳が耐えきれなかったのだろう。
……この勝負は引き分けといったところか?
「わらわは……一体何を見せられておるのじゃ……?」
一連の出来事に対し、ごもっともな意見を発するフウコ。
「アタシは認めていないわ……!」
事態はひとまず一件落着かと思ったのだが、まだナビーラが居た。
「アランはアタシだけのもの……! 全員……呪ってやるっ!」
「……ナビーラちゃん」
俺は意識を失ってしまったドロシアをその場に寝かせ、今度はナビーラの方に近づいていく。
「とっ、止めても無駄……! 他の女とあんなことするなんて……絶対に――んんんんっ?!」
そして、ごちゃごちゃ言っているナビーラにも口づけをした。
「……最低のクズになるのは、僕一人だけでいい。ナビーラちゃんはずっと優しい女の子でいて」
「ひ、ひんっ……!」
「分かってくれるよね……?」
「……アタシのこと……そんなに愛してくれるなら……しゅっ、しゅきにして良いわ……っ!」
ナビーラはそう言い残し、初めて見るくらい顔を真っ赤にして倒れた。
「あ、あわわわ……!」
惨劇の目撃者となってしまったフウコは、両手を口元へやりながら後ずさる。
そこにいつもの余裕ぶった感じはない。
「えっと……フウコちゃんにもしないと平等じゃないよね?」
俺はそう問いかけながら、ゆっくりとフウコとの距離を詰めていく。
「ま、待てっ! わらわは元から容認しておったじゃろ!?」
「うん。好きだよフウコちゃん」
「こんなところで――んむうううううううっ?!」
そして、嫌がるフウコを押さえつけて熱烈な口づけをした。
「ばっ、ばかものぉ……!」
ふらふらとよろめき、その場で腰を抜かすフウコ。
「すけべっ! はれんちっ! へんたいっ! うぅ……」
彼女も散々俺を罵倒した後、勝手に茹で上がって意識を失う。
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――かくして、俺は修羅場を潜り抜けたのだった。
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