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第31話 新しい先生
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波瀾万丈の精霊祭が終了し、いつも通りの平和な日々が帰ってきた。
変化したところといえば、許嫁が三人になってしまったことと、妹のプリシラと一緒に暮らすようになったことくらいだろうか。
俺が前世の記憶を取り戻して一応は改心した以上、プリシラを遠ざける必要はないとお父さまが判断したのだろう。
ちなみに、三人の許嫁に関してはプリシラも知っている。
「お兄さまはカッコイイから女の子にモテモテなのは分かるけど……あんまりそーゆーことしてると、そのうち後ろから刺されちゃうよ!」
と、笑顔で忠告された。全くもってその通りだと思ったので、何も言い返すことが出来なかったぞ。
……それから、取り込んだ魔石に関しては今のところあまり大きな変化を感じていない。強いて言えば魔力がさらに増えた気がするが、それも微々たるものだ。
俺の『願い』が叶っていた場合、それがどのように実現するのか分からない。自身の体調の変化に注意しておく必要があるだろう。
というわけで、日常に戻った俺はメリア先生とダリア先生の授業――というより戦闘訓練を受けていたのだが……。
「はぁ…………」
その日はやけにメリア先生の元気がなかった。
「どうしたんだメリア。お前がため息なんかついて珍しい」
隣にいたダリア先生が、不思議そうな顔をしながら問いかける。
「来るのよ……」
げっそりとした顔で答えるメリア先生。
「来るとは?」
「アランちゃんに治癒魔法を教えるために……あいつが……!」
そういえば、精霊祭の後すぐに思うところあって「治癒魔法を教えて欲しい」とメリア先生に相談していたな。しかしメリア先生は専門外だったので、代わりに新しい先生を呼ぶことになっていたんだっけ。
果たしてどんな人が来るのだろうか。
「あいつとは誰のことだ? 勿体ぶらずに言え」
「だから……! あいつよ……っ!
「なっ…………!? あ、あいつなのかっ?!」
ダリア先生も誰が来るのか理解したらしく、冷や汗を垂らして固まっている。
「どっ、どうしてわざわざ……!? 他にも居ただろ!」
「だ、だって…………ごにょごにょ……」
メリア先生は、俺に聞こえないよう耳打ちした。
「おい! あいつは自分の息子をどうしたいんだ!」
「私は反対したのよ!」
二人揃ってそこまで深刻に話し込まれると、段々と怖くなってくるぞ。
「で、でも! プリシラちゃんの病気を今まで診てくれた信用があるとか……一番優秀な人に教わった方が良いとか……ふざけたことばかり言って……っ!」
「くっ……! 奴は息子の貞操に対しても鈍感なのか……っ! 父親がそんな風だからいきなり三人も許嫁ができてしまうんだッ!」
「や、やめなさい! アランちゃんの前よ」
なんかお父さまの話してる? しかし、許嫁の話まで持ち出されて俺にまでダメージが……!
「あの、どんな人が来るんですか……?」
流石に心配になってきた俺は、微妙そうな顔をしている二人に問いかけた。
「……サリア」
すると、メリア先生がゆっくりと口を開く。
「………………!」
それは聞き覚えのある名前だな。
確か、ゲーム中盤で戦うボスに『堕落の聖女サリア』という魔人がいたはずだ。
魔人でありながら普段は心優しい聖女として振る舞い、裏では攫ってきた町の子供や孤児達を悪魔に捧げる悍ましい儀式を行なっていた、気色悪さと胸糞悪さが合わさったボスである。
魔法の適性はフウコと同じ木属性で、ボスとして戦う際は状態異常攻撃やHP吸収など、多彩な魔法で攻撃してきた記憶がある。
――しかし、サリアは魔人になる前は本当に優しい聖女だったと原作で語られていた気がするぞ? この二人がやたら毛嫌いしているだけで、普通に良い人だったのでは?
俺のそんな予想は、メリア先生が発した次の一言によって覆されることとなる。
「……フォルテル」
「え……?」
「サリア・フォルテル。つまり私たちの……姉よ」
絶対に痴女だ……! 聖女の皮を被った変態だ……!
まさか、堕落の聖女サリアが二人の姉だという裏設定があっただなんて……! 名前が似ている時点でもっと怪しんでおくべきだった。
「あの変態にアランちゃんを見てもらうなんて、恐ろしいわ……!」
真剣な表情で呟くメリア先生。……人のことは言えないと思いますよ。
「い、いざとなったら私が守ってやるからなっ! アランくんを変態には近づけさせないっ!」
「では離れてください、ダリア先生」
「なぜ?!」
おいおい、許嫁の次は痴女が三人に増えるのか……? もう安心して眠れなくなってしまうぞ!
「アラン様。サリア先生が到着しました」
――衝撃の事実を知ってしまったその時、ニナが俺達の元へやって来てそう告げるのだった。
*
それから、俺はニナに連れられて応接室の前まで来た。
「失礼します……」
扉を開けると、そこには純白のローブに身を包んだ金髪の女性が座っている。
「アラン様をお連れしました……サリア先生」
「どうもありがとう、ニナ」
サリア先生はそう言ってソファーから立ち上がり、俺の方へ近づいてきた。
「あなたが……アランさんですね。もう聞いているかもしれませんが、私の名前はサリア・フォルテル。あなたに授業をしているメリアとダリアの姉です。よろしくお願いしますね」
「よ、よろしくお願いします」
「うふふ。……とは言っても、あの二人とはもうしばらく会えていないのですが。――ここに居ると聞いてびっくりしてしまいました!」
「そうなんですね」
すごいまともだ。ベタベタしてこない! 普通に会話できる!
……しかし、原作でも初登場の時はこんな感じだったな。裏の顔があるかもしれないので警戒は解けない。
「実は、今までプリシラの病気を治療する為に、よく別荘へ通っていましたから……ニナやあなたのお父さまとは、それなりに気心の知れた仲なのです」
それは初耳だ。
「プリシラの病気も、時間をかけてじっくりと治療していけばきっと治ります。ですから、心配しないでくださいね!」
「は、はい……」
その言葉を聞いて少し思うところがあったのだが、ただ返事をすることしか出来なかった。
「……さてと。あまり長々と話し込んでしまうと、アランさんが飽きてしまいますよね。――早速ですが、治癒魔法の授業を始めましょうか」
「お、お願いします」
やっぱりこの人、一番まともなのでは……? 優しいし、ニナも信用してるっぽいし。
「ふふ、いきなり難しいことを教えたりはしませんから、そんなに緊張しないでください!」
「はい、分かりました……」
「優秀なアランさんなら、きっとすぐに使いこなせるようになります! 一緒に頑張りましょう!」
すごく良い人だ。ぼく、このお姉さんがいちばんすき。
――痴女だと思ってすみませんでした。
変化したところといえば、許嫁が三人になってしまったことと、妹のプリシラと一緒に暮らすようになったことくらいだろうか。
俺が前世の記憶を取り戻して一応は改心した以上、プリシラを遠ざける必要はないとお父さまが判断したのだろう。
ちなみに、三人の許嫁に関してはプリシラも知っている。
「お兄さまはカッコイイから女の子にモテモテなのは分かるけど……あんまりそーゆーことしてると、そのうち後ろから刺されちゃうよ!」
と、笑顔で忠告された。全くもってその通りだと思ったので、何も言い返すことが出来なかったぞ。
……それから、取り込んだ魔石に関しては今のところあまり大きな変化を感じていない。強いて言えば魔力がさらに増えた気がするが、それも微々たるものだ。
俺の『願い』が叶っていた場合、それがどのように実現するのか分からない。自身の体調の変化に注意しておく必要があるだろう。
というわけで、日常に戻った俺はメリア先生とダリア先生の授業――というより戦闘訓練を受けていたのだが……。
「はぁ…………」
その日はやけにメリア先生の元気がなかった。
「どうしたんだメリア。お前がため息なんかついて珍しい」
隣にいたダリア先生が、不思議そうな顔をしながら問いかける。
「来るのよ……」
げっそりとした顔で答えるメリア先生。
「来るとは?」
「アランちゃんに治癒魔法を教えるために……あいつが……!」
そういえば、精霊祭の後すぐに思うところあって「治癒魔法を教えて欲しい」とメリア先生に相談していたな。しかしメリア先生は専門外だったので、代わりに新しい先生を呼ぶことになっていたんだっけ。
果たしてどんな人が来るのだろうか。
「あいつとは誰のことだ? 勿体ぶらずに言え」
「だから……! あいつよ……っ!
「なっ…………!? あ、あいつなのかっ?!」
ダリア先生も誰が来るのか理解したらしく、冷や汗を垂らして固まっている。
「どっ、どうしてわざわざ……!? 他にも居ただろ!」
「だ、だって…………ごにょごにょ……」
メリア先生は、俺に聞こえないよう耳打ちした。
「おい! あいつは自分の息子をどうしたいんだ!」
「私は反対したのよ!」
二人揃ってそこまで深刻に話し込まれると、段々と怖くなってくるぞ。
「で、でも! プリシラちゃんの病気を今まで診てくれた信用があるとか……一番優秀な人に教わった方が良いとか……ふざけたことばかり言って……っ!」
「くっ……! 奴は息子の貞操に対しても鈍感なのか……っ! 父親がそんな風だからいきなり三人も許嫁ができてしまうんだッ!」
「や、やめなさい! アランちゃんの前よ」
なんかお父さまの話してる? しかし、許嫁の話まで持ち出されて俺にまでダメージが……!
「あの、どんな人が来るんですか……?」
流石に心配になってきた俺は、微妙そうな顔をしている二人に問いかけた。
「……サリア」
すると、メリア先生がゆっくりと口を開く。
「………………!」
それは聞き覚えのある名前だな。
確か、ゲーム中盤で戦うボスに『堕落の聖女サリア』という魔人がいたはずだ。
魔人でありながら普段は心優しい聖女として振る舞い、裏では攫ってきた町の子供や孤児達を悪魔に捧げる悍ましい儀式を行なっていた、気色悪さと胸糞悪さが合わさったボスである。
魔法の適性はフウコと同じ木属性で、ボスとして戦う際は状態異常攻撃やHP吸収など、多彩な魔法で攻撃してきた記憶がある。
――しかし、サリアは魔人になる前は本当に優しい聖女だったと原作で語られていた気がするぞ? この二人がやたら毛嫌いしているだけで、普通に良い人だったのでは?
俺のそんな予想は、メリア先生が発した次の一言によって覆されることとなる。
「……フォルテル」
「え……?」
「サリア・フォルテル。つまり私たちの……姉よ」
絶対に痴女だ……! 聖女の皮を被った変態だ……!
まさか、堕落の聖女サリアが二人の姉だという裏設定があっただなんて……! 名前が似ている時点でもっと怪しんでおくべきだった。
「あの変態にアランちゃんを見てもらうなんて、恐ろしいわ……!」
真剣な表情で呟くメリア先生。……人のことは言えないと思いますよ。
「い、いざとなったら私が守ってやるからなっ! アランくんを変態には近づけさせないっ!」
「では離れてください、ダリア先生」
「なぜ?!」
おいおい、許嫁の次は痴女が三人に増えるのか……? もう安心して眠れなくなってしまうぞ!
「アラン様。サリア先生が到着しました」
――衝撃の事実を知ってしまったその時、ニナが俺達の元へやって来てそう告げるのだった。
*
それから、俺はニナに連れられて応接室の前まで来た。
「失礼します……」
扉を開けると、そこには純白のローブに身を包んだ金髪の女性が座っている。
「アラン様をお連れしました……サリア先生」
「どうもありがとう、ニナ」
サリア先生はそう言ってソファーから立ち上がり、俺の方へ近づいてきた。
「あなたが……アランさんですね。もう聞いているかもしれませんが、私の名前はサリア・フォルテル。あなたに授業をしているメリアとダリアの姉です。よろしくお願いしますね」
「よ、よろしくお願いします」
「うふふ。……とは言っても、あの二人とはもうしばらく会えていないのですが。――ここに居ると聞いてびっくりしてしまいました!」
「そうなんですね」
すごいまともだ。ベタベタしてこない! 普通に会話できる!
……しかし、原作でも初登場の時はこんな感じだったな。裏の顔があるかもしれないので警戒は解けない。
「実は、今までプリシラの病気を治療する為に、よく別荘へ通っていましたから……ニナやあなたのお父さまとは、それなりに気心の知れた仲なのです」
それは初耳だ。
「プリシラの病気も、時間をかけてじっくりと治療していけばきっと治ります。ですから、心配しないでくださいね!」
「は、はい……」
その言葉を聞いて少し思うところがあったのだが、ただ返事をすることしか出来なかった。
「……さてと。あまり長々と話し込んでしまうと、アランさんが飽きてしまいますよね。――早速ですが、治癒魔法の授業を始めましょうか」
「お、お願いします」
やっぱりこの人、一番まともなのでは……? 優しいし、ニナも信用してるっぽいし。
「ふふ、いきなり難しいことを教えたりはしませんから、そんなに緊張しないでください!」
「はい、分かりました……」
「優秀なアランさんなら、きっとすぐに使いこなせるようになります! 一緒に頑張りましょう!」
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――痴女だと思ってすみませんでした。
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