パーティを庇って死んだ少年、10年後に蘇生され溺愛される~男の子だと思ってた仲間は過保護なお姉さんになっていました~

おさない

文字の大きさ
13 / 44

第13話 ドキドキお料理対決(盤外戦術あり)!?

しおりを挟む

 書庫から師匠のディアナを引きずり出すことに成功した後、メノはどうしても片付けなくてはいけない錬金術師の仕事があるらしく、簡単な朝食を食べてパーティハウスを出て行った。

「お兄ぢゃんっ! すぐに終わらせて帰ってくるから……っ! 待っででねぇっ!」

 フィルと一瞬だけ離れ離れになることを物凄く嫌がり、大粒の涙を流しながら。

「行ってらっしゃいメノ。待ってるよ!」
「いやだいやだいやだぁっ! おちごといきたくないよぉっ! うええええんっ!」
「がんばって!」
「おっ、おんぎゃーーっ!」

 一方、フィルは病弱で何もできなかった妹が、仕事で人から頼られるくらい元気になったことが嬉しかった。

「さてと……僕も早く元の生活に戻れるよう頑張らないと!」

 立派に育ったメノを見送った後、目元の涙をぬぐいながら改めてそう決心するフィル。

 皆のSランクパーティに未熟な自分が混ざるわけにはいかないが、だからといって一人で冒険者をすることは皆が許してくれないだろう。

 苦労して生き返らせてくれたのだから、再び命を危険にさらすようなことは避けるべきだ。

「当分は師匠と魔法の研究かな……」

 冒険者に戻ることを完全に諦めては居ないが、ひとまず師匠の弟子として頑張ることを決意するフィル。

「よろしくお願いしますね、師匠」
「……へ? あ、うん! そうだねぇ……えへ、えへへ……!」

 隣にぼーっと立っていた師匠に声をかけると、そんな反応が返ってくる。

 おそらく、自分の世界に入り込んでいて今までのやり取りは何も聞こえていなかったのだろう。

「これからは、ちゃんと師匠の弟子として頑張ります」
「ま、まずはさっき使った浄化《クリーン》の魔法を教えてあげるよ……! あれさえ覚えれば、お風呂に入らなくてよくなるからねぇ……!」

 ディアナはここへ来る途中に浄化《クリーン》という魔法を使って服と体を綺麗にしている。

 フィルからかび臭いと言われたことがそれなりにショックだったのだろう。

 だが、浄化《クリーン》は本来汚れた水を清めるために存在する魔法であり、用途から外れた使い方をすると魔力を大きく消耗し体に負担をかけることとなる。

 基本的には大人しく入浴しておいた方が良いだろう。

「横着しないでちゃんとお風呂に入ってください」
「わ、わかったよぉ……」
「だいたい、師匠はだらしなさすぎるんです。少しはメノを見習ってくださいね!」
「つ、ついさっき赤ちゃんみたいに泣き喚いてなかった……?」

 ディアナが困惑した様子で言ったその時――

「あー、ディアナがいるー! おはよー!」
「……そういえば、フィルのことを伝え忘れてたな」

 背後でライカとベルーダの声がした。

「お、おはよう……いや、お久しぶりです……?」
「おはようライカ」

 控えめな声で挨拶するディアナと、それに続くフィル。

 ――かくして、現時点でパーティハウスに居る全員が一階に集合したのだった。

「今日も訓練がんばったから、ボクお腹すいちゃったー」
「わっ!?」

 ライカはさも当然かのようにフィルの後ろへ回って抱きつき、その大きな胸を背中に押し当てる。

「お前の腹が減ってるのはいつものことだろ」
「何それどういう意味ー? ベルーダひどーい!」

 どうやら二人は今までトレーニングを行っていたらしく、ライカからシャワーで身体の汗を流した後のいい匂いがした。

「フィルもお腹すいてるよねー?」
「ぼ、僕は……、うん……すいてる……」

 完全に主導権を握られ、顔を真っ赤にしながらライカに同意することしかできなくなってしまうフィル。

「私が抱きしめてあげた時となんか違くない……?」

 そこには胸の大きさによる明確な序列が存在していた。

「……師匠、助けてください」
「うーん……ごめんね、無理」
「………………」

 このようにしてディアナは少しずつ信用を失っていくのである。

「待ってろフィル。アタシが美味しい朝メシを作ってやる」
「ベルーダ、一人で料理とかできたっけ?」
「メノに教えてもらったんだ。十年の歳月を舐めるな」

 自信満々にそう言い放つベルーダ。

 Sランク冒険者ともなれば、迷宮で仕留めた魔物を調理することなど日常茶飯事なので、何ら不思議ではない。

「ベルーダとメノの料理は美味しいんだよー! ――ボクの次くらいにねー!」
「それは好みの問題だろ。メノから教えてもらったアタシの方がフィルの好きな料理を作れるに決まってる」
「ふーん。 ボクに勝つ自信があるんだー?」
「当然だろ。アタシの方が長くフィルと一緒にいたんだからな」

 フィルの質問をきっかけに何故かライカとベルーダが張り合いを始め、穏やかだった空気が一変する。

「じゃあ、そろそろ決めよっか。――どっちが上なのか」
「望むところだ……!」
「二人とも喧嘩はやめてね? もしもーし……?」

 かくして、ライカとベルーダの仁義なきお料理対決が始まってしまったのである。

「お腹をいっぱいにしたいなら、満腹《スタッフ》の魔法があるけど……?」

 ちなみに、ディアナは料理の類が一切できない。お腹が空いたら魔法を使って解決する異常エルフである。もちろん、この魔法も本人が思っている以上に体に悪い。

 *

 唐突に始まってしまった料理対決のルールは至ってシンプルなものだ。

 朝食をベルーダ、昼食をライカが担当し、どちらがより美味しいかをフィルに判定してもらうのである。

「あの、僕も何か手伝うよ……」
「フィル、それじゃあ対決の意味がないだろ? アタシに任せて座ってな」
「………………う、うん」

 フィルの提案はあっさりと却下されてしまう。

「自分から手伝おうとするなんて……フィルはいい子だねー。よしよし」

 朝食ができるのを待つ間、ずっとフィルのことを膝の上に乗せているライカは、優しく彼の頭をなでた。

「昔は食べる専門だったボクとは大違いだよー」
「あ、あはは……」

 三人の中ではライカが一番柔らかくて肉付きが良い。理由はもちろん、異常なほどよく食べるからだろう。

 フィルは向かい側に座る師匠の平らな胸板を見ることで、どうにか心の平穏を保っていた。

「ナニか困ったことがあったら、いつでもボクに相談してね」 
「へ……?」

 悶々とするフィルの耳元で、そんなことを囁くライカ。

「男の子はフィルだけなんだから……大変、でしょ?」
「ど、どういう意味……?」
「いつでも良いんだからね、フィル! ボク、大きくなるまでなんて待てないよ……!」
「だっ、だからどういう意味っ?」

 波乱のお料理対決(盤外戦術あり)は、まだ始まったばかりである。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?

宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。 栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。 その彼女に脅された。 「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」 今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。 でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる! しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ?? 訳が分からない……。それ、俺困るの?

処理中です...