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第21話 デルフォスの想い3
しおりを挟む「ぐすっ、うぐ、うええええんっ!」
屋敷の外で、あのゴミが泣いていた。
「おいおい、泣くなよアニ。こんな所に居たら風邪ひくぞ? 早く屋敷に戻ろう」
俺は殴りかかりたい衝動を抑えて、ゴミを励ます。
「でもっ……エリーが僕のこと大嫌いって……っ」
「覚悟の上でしたことだろ? 父さんはお前がすべての責任を負うことを条件に、あの女とエリーを引き離したんだからな」
「分かってるけどっ……うぅっ、うええええええええんっ!」
泣き虫でどこまでも甘ったれた奴だ。虫酸が走る。
第一、なぜ追放されたはずのこいつが目の前にいる?
「お兄ちゃんっ、うえええんっ!」
泣きながら俺にまとわりついてくるゴミ。
「おいおい、だから泣くなって。お前も一応男だろ? ――それに、俺のことはせめて『兄さん』と呼べと言ったはずだぜ? 『お兄ちゃん』って呼ばれるのは不愉快だからな!」
なるほど、だんだんと分かってきたぞ。
――俺は昔の夢を見ているのか。
それなら、わざわざ昔のコイツにつき合ってやる必要はない。
「うんっ……ご、ごめんなさい、兄さん……」
「違う、デルフォス様だろ?」
俺はそう言って、ゴミの髪を掴んで引きずり倒す。
「どうした? 何とか言ってみろよ? 無能は夢の中ですら俺に勝てないのか?」
そう言って、動かなくなったゴミの頭を踏みつけようとしたその時。
「やめなさいっ!」
俺の前に、メイベルが飛び出してきた。
「おいおい、どういうつもりだ? いいからそこをどけ。お兄ちゃんの命令が聞こえないのか?」
「あんたなんかお兄ちゃんでも何でもないっ!」
そう言って、メイベルはゴミのことをかばう。
「私のおにーさまをいじめないで……!」
「あたしが本当に大っ嫌いなのは、おにーちゃんじゃなくてあなただもんっ!」
おまけに、いつのまにかソフィアやエリーまで俺の前に立ちはだかり、ゴミのことを守っていた。
「揃いも揃って、何をふざけたことを言っている? 貴様らがいくら泣こうが喚こうが、兄はこの俺だ! 俺の言うことに従えこのクズどもがッ!」
俺はそう言って、ゴミを庇うクズどもを何度も何度も蹴りつける。
「あんたなんかに……これ以上お兄ちゃんを傷つけさせないっ!」
「もう……ぜったいに……おにーさまから離れないわっ……!」
「ひどいこと言ってごめんねおにーちゃん……あたしが守ってあげるからね……」
クソどもの言葉が、俺を余計に苛つかせた。
「兄は俺だと言ってるだろッ! 妹の分際で生意気だぞ貴様らぁッ! ゴミクズが仲良くしやがってえええええええッ!」
*
不愉快な夢から目を覚ますと、既に日が暮れていた。
しかし、妹達はまだ戻って来ていない。………にも関わらず、馬車は出発している。
一体、どういうことだ?
「止まれ!」
俺は窓から顔を出し、馭者に声をかけて馬車を止めさせる。
「へえ、どうしたんでゲスかいデルフォス様」
「なぜ妹達が戻っていないのに馬車を出発させている?」
そして、間抜け面の馭者《ぎょしゃ》に問いかけた。
「はあ、あのガ――メイベル様たちだったら、さっき戻ってきましたでゲスよ?」
「それなら何故ここに乗っていない!」
「別の馬車で帰るんじゃねぇんでゲスかい? そう言ってましたでゲスが」
「あいつらが貴様に言ったのか?!」
「へ、へえ、そうでゲス」
――どういうつもりだ? 父さんに報告もせずに外をほっつき歩いて良いと思っているのか?
俺は奴等の馬鹿さ加減に呆れ、頭を抱える。
「そこら辺に書き置きがねぇでゲスかい? 置いてってた気がするんでゲスが」
「書き置きだと……?」
俺は馭者にそう言われ、自分の周囲を探す。
すると、足元に一枚の紙切れが落ちていた。
すかさずそれを拾い、そこに書いてある俺あての文章を読む。
「デルフォスさんへ――」
「私達は大好きなおにーさまに会い行くので家出します。お世話になったあなたとお別れするのがとても寂しくて、涙が止まりません。嘘です。さようなら。二度と私の前に姿を見せないで。消えなさい。ソフィアより」
「もう家に帰るつもりはありません。お兄ちゃんを見つけて幸せに暮らします。ついでにいうと、あんたのことはとっても大嫌いです。別にお兄ちゃんだとも思ってません。この手紙もエリーの提案で仕方なく書いてます。本当に嫌いです。勘違いしないでよね。メイベルより」
「お別れする前に手紙くらいは書いておこうって言ったのはあたしだけど、とくに言いたいこととかは思いつかなかったです。お別れするのが寂しいとかも、ぜんぜん思ってないので書けませんでした。ごめんなさい。あと、それと、えっと、どちらかといえば嫌いです。本当にごめんね。一人になってもお元気でいてください。エリーより」
「………………」
俺は何も言わずに紙切れを握りつぶす。
「ぷぷっ」
「何がおかしい!」
「す、すいやせんでゲスぅッ!」
なるほど、従順なふりをしていても、所詮は出来損ないのクズどもだ。
「ククク……なるほどなぁ」
どうやら、今までの俺に対する態度は、全て偽りだったらしい。
「ふ、ふざけるなあのクソガキどもがああああああああッ! ぶッ殺すッ! ブッ殺してやるううううううッ!」
「ぷぷぷっ、いくらなんでも怒りすぎでゲスよ。ちゃんと朝ご飯食べて来たでゲスか?」
「黙れええええええええ! ああああああああああッ!!!!」
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