超名門貴族の次男、魔法を授かれず追放される~辺境の地でスローライフを送ろうとしたら、可愛い妹達が追いかけて来た件~

おさない

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幕間4 オリヴィアの見る夢

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「母さん見てよ! オリヴィアが俺の靴に紅茶をこぼしたんだ!」

 デルフォス様が、わざと紅茶をこぼしてお母様を呼ぶ。

「まあ、なんてことでしょう! こんな何もできないメイドをデルフォスちゃんの世話係にするだなんて……あの人は一体何を考えているのかしら!」

 デルフォス様のお母様は私のことを叱責する。

「あの……今のはデルフォス様が勝手に――」
「お黙りなさい! ……世話係の分際で、お世話されないとろくに仕事もこなせないのですかっ?!」
「申し訳ありません……」

 私は深々と頭を下げて謝罪する。

「まあまあ……落ち着いてよ母さん。不注意だった俺も悪いんだ」
「ああ、こんなメイドを庇うだなんてデルフォスちゃんはなんて優しい子なんでしょう!」
「…………それほどでもないさ」
「オリヴィア、お前は早く掃除をなさい!」

 いつも怒られてばかり。
 
 それが私の日常でした。ヴァレイユ家のお屋敷に来てからは、辛い記憶の方が多いです。

 ですが、そんな風に辛いことがあった時には、決まって不思議な夢を見ました。

 *

 心地よい風。広大な草原に綺麗な川。私は、家族全員でピクニックをしています。

「さっきからぼーっとして、どうかしたの姉さん?」
「え…………?」
「も、もしかして僕の顔に何かついてる?」
「いえ、違いますよ。ただ……」
「ただ?」
「もう『お姉ちゃん』とは呼んでくれないんだなって……ちょっとだけ寂しい気持ちになっただけです」

 私がそう言うと、アニは恥ずかしそうにそっぽを向いて「だってもう子供じゃないし」と答えます。

 たぶん、背伸びをしたいお年ごろ……というやつなんでしょう。お姉ちゃんは不満です。異議ありです。

「そんなに呼んで欲しいなら、■■■に呼んでもらいなよ。いいでしょ■■■?」

 アニは、隣にいる女の子に呼びかけます。

 アニとそっくりな、とても可愛らしい女の子です。

 でも私は、その子の名前を思い出すことができません。

 アニと同じくらい大切な家族だったはずなのに。

「やだよ……だって『お姉ちゃん』より『お姉様』の方がかっこいいもん!」
「もう。アニ、■■■、二人揃ってそういうお年ごろなんですかっ?!」

 だけど、夢の中の私はちゃんとその子の名前を覚えています。それくらい当たり前に呼んでいた名前だから、忘れるはずがないのでしょう。

「「そういうお年ごろってなに?」」
「お姉ちゃんに甘えてくれなくなるお年ごろのことです!」
「「だって僕《私》たちもう大人だよ?」」
「まだぜんっぜん子供ですー! まだまだお姉ちゃんに甘えてもいいんですー!」
「「そんなこと言われても困っちゃうよ」」
「揃いも揃って……そんなにお姉ちゃんに甘えるのが嫌なんですね! もう知りません! ふん!」

 私はそんな風にわがままを言って、二人のことを困らせます。

 これでは、どっちが子供だか分かりません。

「拗ねないでよ姉さ――じゃなくてお姉ちゃん!」
「そうだよお姉さ―― じゃなくてお姉ちゃん!」
「今さらそんな風に呼んだって、もう遅いですよっ! これからは私も、ビシバシ厳しくいきます!」

 挙句の果てに、へそを曲げてそんなことまで言い出す私。

 本当に、まるでダメダメなお姉ちゃんです。

「だ、だめだよ! 僕優しいお姉ちゃんがいい!」
「お願い……大好きなお姉ちゃんに戻って!」

 優しい二人は、子供っぽい私に付き合ってそう言ってくれます。

「ふふふ……やっぱり二人とも、まだまだ甘えんぼさんですね……」
「「…………………………」」

 いとも簡単にいい気になった私は、得意げな様子で二人を抱き寄せて言いました。

「これからも、お姉ちゃんがいっぱい甘やかしてあげます」
「「……や、やったー」」

 ふと顔を上げると、私達を見て微笑んでいるお父様とお母様の姿が見えます。

 ――あるはずのない幸せな記憶。

 お姉ちゃんとして過ごす、穏やかなひととき。

 ……一体、これは何の夢なのでしょうか?

 一つだけ確かなことは、この夢から目覚めた時は必ず涙を流している……ということくらいです。
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