超名門貴族の次男、魔法を授かれず追放される~辺境の地でスローライフを送ろうとしたら、可愛い妹達が追いかけて来た件~

おさない

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第45話 荒ぶるデルフォス2

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「こ、怖いでゲスなぁ。いきなり叫んだりして、大丈夫でゲスかぁ? イライラする時はミルクを飲むのがオススメでゲス」
「黙れカスがああああああぁッ」
「ガスでゲス」
「ああああああああああああああああッ!」

 一体何なんだこいつは!? まともな会話が成立しないじゃないか! なぜこんな人間が俺と同じ空気を吸って生きている? 理解できない! ふざけるな!

「だから怒らないで欲しいでゲス。悪いのは家出した嬢ちゃん達で、旦那は悪くないんでゲスから」
「大体なんだその呼び方は! 俺のことはデルフォス様と呼べッ!」
「そんな……あっしと旦那の仲じゃねぇでゲスかい。そんな他人行儀な呼び方、今さら出来ねえでゲスよ!」
「今日会ったばかりだろうがあああああッ!」
「知らねえんでゲスかい旦那。友情に過ごした時間は関係ないんでゲスよ……フッ」

 俺の方へ振り向いて親指を立てるカス。

「――――――ッ!」

 だめだ、このままではコイツを殺してしまう。

「フンッ!」

 俺は自分が座っていた座席に頭を打ちつけて精神を統一する。

 流石に、こんなカスを殺してヴァレイユの家名を穢《けが》すわけにはいかない。

「気づかなくてすいやせん……旦那……」
「あ?」
「……友達……いなかったんでゲスよね……。――でも、今日からあっしが友達でゲス!」

 カスは俺の方へ振り向いて笑った。

 *

「ゲ……ス…………っ……」

 ――ドサッ。

 気がつくと、俺の目の前でカスが頭から血を流して倒れていた。

「…………え?」

 そして、俺の右手には血痕の付着した石が握られている。

「は……?」

 俺は慌てて周囲を見回した。

 乗っていた馬車は粉々に破壊され、二頭の馬が怯えた目でこちらを見ている。

 ――この状況に至るまでの記憶がない。

 なぜこんな事になった? 俺がやったのか……?!

「フーッ、フーッ……」

 俺は深呼吸して天を仰ぐ。

 そして、右手に魔力を込めて持っていた石を破壊した。

 ……馬以外には誰にも見られていないな。

 そう確認した後、俺はこう呟いた。

「厳しい戦いだった。……正体不明の巨大な魔物に襲われ咄嗟に応戦したが、馬車は大破し、御者は食われ、尊い命が犠牲となってしまった」

 馬の方を睨んで続ける。

「……そうだったよな?」
「「ひ、ひひーん!」」
「よろしい。貴様らは優秀だ」

 どうやら、主人《カス》よりはわきまえているようだ。

「死体を片付ける。貴様らは人が来ないか見張っていろ」
「「ひひん!」」

 俺は馬どもに命令した後、近くの茂みに分け入る。

「……ここで良いか」

 そして、詠唱によって上級光属性魔法『地を穿つパランクス・光輝の矢ランプスィ•ヴェロス』を発動し、人間を埋められるくらいの穴を作った。

 神から授かった魔法は、基本的に無詠唱で放つことができる。

 だが、そこに詠唱を重ねることでより精密な魔法操作が可能となるのだ。

 一握りの選ばれた者しかなれない魔術師。

 その中でも、詠唱によって魔法を意のままに使用することができる者はごく少数しか存在しない。

 おまけに、この国で光属性の魔法を操ることができる魔術師は俺だけだ。

 稀代の天才魔術師、デルフォス・ヴァレイユ。

『俺』という才能が恐ろしいとつくづく思う。

 カスを殺した罪程度で失われていい存在ではないのだ。

「……さて、急いであいつを埋めなければ」

 俺は茂みから出て、カスの死体へ駆け寄る。

 そしてその体を持ち上げようとしたその時――

「うぐっ……いてて……でゲス……」
「なん……だと……!」

 カスが蘇生した。

「あれ……旦那、一体何があったんでゲスかい? どうも記憶が飛んでるみたいで……思い出せないんでゲス……」

 頭から血を流しながら、呑気に話すカス。

「……こほん。貴様が事故を起こして馬車が大破したんだ。どうしてくれる」
「いや……待って欲しいでゲス。段々と記憶が戻ってきたでゲス! そうそう、確かいきなりデルフォスの旦那が暴れ出して馬車を壊しちまったから、仕方なくこの場所で降りて、それで……」
「――見ろ、そこに高値で売れそうな珍獣が居る」
「へ?! ど、どこでゲスかっ?!」
「貴様のことだ」

 俺は、カスの後頭部に再び大きめの石を振り下ろした。
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