超名門貴族の次男、魔法を授かれず追放される~辺境の地でスローライフを送ろうとしたら、可愛い妹達が追いかけて来た件~

おさない

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第50話 デルフォスの望み3

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「……まさかキミが家族からの愛を求めていただなんてね。意外だよ」

 スールは気持ちの悪い笑みを浮かべながら言った。

 俺があんな足手まといの役立たずどもに愛されたいと思っているだと……?

 ふざけるな……! 人の心を勝手に決めつけやがって……!

「おそらくだけど……キミはアニとの関係をそれほど悪くは思っていなかったんだよ」
「違う! あれはただの演技だ!」
「自分を偽ることが必ずしも不快なことであるとは限らないだろう? ほんの少しだけだったかもしれないけど、キミは良い兄を演じるうちに、本当にアニのことが好きになってしまったんだよ」
「俺があのゴミを好いていただと……? あり得ない……! 寝言は寝て言え!」

 俺は怒鳴ったが、スールはそれでもなお話し続ける。

「だけど、同時に嫉妬もしていた。無能であることが許されないヴァレイユ家にいながら、魔法を使えない彼が無条件に愛されていたからね。……妹達からも、そして何よりキミ自身からも」
「黙れ……!」

 まるで的外れだ。圧倒的な才能を持つこの俺が誰かに嫉妬することなど、あるはずがないというのに。

「必死になって実力を示し続けていた自分が妹達から疎まれて、何もできないアニが妹達から好かれてたんじゃ、嫉妬するに決まってるよね」
「貴様……いい加減にしろよ……!」
「本当はアニのことが羨ましかったんだろう? 素直になりなよ」

 スールは俺の耳元で囁く。

 どこまでも不愉快な奴だ。はらわたが煮えくりかえる。

「――でも、キミだって無条件に愛されてたじゃないか」

 俺がどうにか怒りを抑えていると、スールが言った。

 こいつは人の神経を逆撫でするようなことしか話せないらしい。

「嘘をつくな! もういい、俺の前から消え失せろ!」
「あれ、本当に分からないのかい?」
「…………何を言ってる? どいつもこいつも、俺の才能にしかすり寄って来ないウジ虫どもばかりだ。父さんや母さんだってそうさ。あいつらだって、俺を都合良く利用することしか考えてないクズどもだからな!」

 だからこそ、俺も利用できるものは何でも利用すると決めた。

「アニも?」

 そうだ。アニにわざわざ構ってやってたのも、手懐けて利用してやる為だ。

 あいつだって――

「…………は?」

 待て、どうしてそこであいつの名前が出てくる? 

「アニはキミのことを利用しようとしていたのかい?」
「あんなゴミ……俺に関係ないだろ……!」
「関係あるだろう。彼が一番キミのことを慕っていたんだから」
「ふざけるな……! あんな奴に慕われたところで何も嬉しくはない!」
「だったらキミがこんな理想を思い描くはずないだろう? どうやらキミは、無駄に高いプライドが邪魔をして自分の本心すら見えなくなってしまっているようだ」

 スールはそう言って、にやりと笑った。あまりにも。ふざけている。

「貴様と話していても時間の無駄だ。今すぐ失せろ」
「そ、そんなこと言わないでよ! 僕は兄さんのことが大好きなんだ!」
「黙れっ! あいつの真似をするなッ!」
「僕はどんなことをされたって兄さんのことを信じるよ!」
「黙れと言っているんだッ!」

 俺はスールの頭をテーブルに叩きつけた。

 ――刹那、止まっていた時間が動き出す。

「なんだと……!」

 そして、妹達の悲鳴が聞こえてきた。

「おにー……ちゃん……? どうして……?」
「何が……気に入らなかったの……? おにーさま……!」

 怯えた目で後ずさるエリーとソフィア。

「ひっぐ……っ! ごめんなさい……ごめんなさい……っ!」

 その場に力なく座り込み、泣きながら謝り続けるメイベル。

「ち、違う! これは――」
「ごめんね……兄さん。忙しいのに呼び出しちゃったりして……嫌だったよね……?」

 俺がテーブルに押さえつけていたスールは、いつの間にかアニと入れ替わっていた。

「待て……そうじゃない!」
「……僕は大丈夫。みんな行こう? 兄さんは……忙しいから一人になりたいみたい……」

 それからアニは、妹達に支えられながら食堂を出て行く。

「ひっぐ……わたしはっ……お兄ちゃんに喜んでもらいたかっただけなのに……っ!」
「大丈夫だよメイベル。……きっと……兄さんは分かってくれてるから……ぐすっ」
「私が……いけないの……っ。おにーさまに……気に入ってもらえるようなケーキを作れなかったから……っ!」
「こんなの……あんまりだよぉ……! うええええええええええええんっ!」

 四人が食堂を出てすぐ、廊下から咽び泣く声が聞こえてきた。

「クソッ……ふざけるな……ッ!」

 こうして、俺とケーキだけが食堂に残されたのだった。

「――まあ要するに、全部キミが悪いってこと。今キミがこんな目に遭ってるのも、みんなから見放されてしまったのも、全て自分で招いた結果なんだよ。どんな理想もキミ自身が壊してしまうんだからね」

 俺の脳内にスールが語りかけてくる。

「黙れ……っ! 黙れ黙れ黙れ黙れッ! 貴様がいきなり消えたせいだろうがッ!」

 俺はテーブルに拳を叩きつけた。

「……じゃあもう一度チャンスをあげるよ。次こそは上手くやってね」
「あ?」
は得意だろう?」

 その時突然視界が眩み、俺は再び意識を失った。
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